2017年3月26日日曜日

3/24 勉強会:災害損失の繰戻還付 経過措置 他

1.マイナス金利の実務対応報告が決定へ

ASBJ、マイナス金利に関する実務対応報告を3月中にも正式決定
・退職給付債務計算の割引率
⇒「ゼロ」または「マイナスの利回り」のいずれの方法も可能
⇒適用は平成29331日に終了する事業年度~平成30330日に終了する事業年度まで
 その後は金利動向等を踏まえて、恒久的な取り扱いを検討


2.相続人との間で明確な合意なし、相続税申告業務に係る相当な報酬は幾らか

■前提
1.相続人ら(被告)は税理士(原告)に、「相続時精算課税制度」について相談
2.この際、税理士に5万円を支払った
3.税理士は、税務代行権限証書による授権を得て、相続税の申告書を税務署に提出
4.申告業務に係る報酬200万円(税抜)を請求したが、相続人らはこれを拒否

■判決
1.相続税の申告業務の契約は成立していた
(理由)上記前提の「1」「3
2.報酬200万円の合意があったとは認められない
(理由)当事者間で金額について明確に定めた形跡がないため
⇒裁判所は、当事者間での報酬に関する合意内容は「合理的に考えられる相当額」を支払うものであったと解釈
⇒報酬は約156万円(税抜)※が妥当とされた
※税理士報酬基準(既に廃止)により出された金額で、他の会計事務所と比較しても高額とは言えない金額


3.神鋼商事敗訴で有利発行課税再活発化も

株式の有利発行に伴う受贈益課税を巡る裁判において会社側が敗訴。
当該判決を受け、有利発行を行った会社への課税処分が活発化する可能性もある。

■事例
・海外子会社の資金需要のため、内国法人の親会社が増資をした場合、子会社と100%の資本関係がない場合は、有利発行による受贈益課税リスクあり

・当該企業は外資規制により現地株主が保有していた株式に関しては「買取価格=取得価格」となるよう現地株主と契約締結していた

⇒実質的に現地株主が保有している株式は種類株式に該当し、国内法人である親会社に、時価よりも低額で株式発行されたとしても、100%子会社の増資と同様に考え有利発行にならないと主張

■ポイント
・今回の判例では、「種類株式」を発行する手続きが取られていなかったという法形式に基づき、種類株式に該当しないと判定をされた

・法人税通達上は種類が異なるかどうかを「実質」で判断すると規定されている。
 だが、今回の最高裁判決により、法人税法の「実質基準」で有利発行判定をしていた企業が、本件同様に実質基準以外で課税処分リスクが出てくることになった


4.IFRS適用の国内子会社も連結手続可

■実務対応報告第18号※が公開草案通り、3月中に正式決定する予定
※「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」

■改正内容
「親会社:日本基準+国内子会社等:IFRS等」に準拠して、「連結F/Sを作成+金商法に基づく有報により開示」している場合にも適用可
※改正前は、「親会社:日本基準+在外子会社:IFRS等」のみ対象

■適用時期 ※3月決算法人の場合
・平成303月期から適用
・平成293月期から早期適用可

■適用初年度の取り扱い
適用初年度の前より、「親会社:日本基準+国内子会社等:IFRS等」に準拠して、「連結F/Sを作成+金商法に基づく有報により開示」している場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当 ※経過措置はない
⇒過去の全ての期間に遡及適用
※遡及適用による累積的影響額は、表示する最も古い期間(通常、前期)の期首の資産、負債及び純資産の額に反映


5.マイナンバーのない法定調書、経過等の記録はどこまで必要

■マイナンバーについて
法令上:マイナンバーを記載して提出する必要あり。
罰則:現時点でなし。
⇒マイナンバーを記載せず提出した場合、罰則は受けないが法令上の義務違反に該当する。

なおコンプライアンスが重要視されている企業は、提供を求めた経過等を記録保存して、義務違反でないことを明確にした方が望ましい。

■経過等の記録はどこまで必要?
国税庁のよると、
・形式や依頼の回数など決まっていない。
・どこまで記録しておくべきというのもない。
⇒トラブルを避けるため、
提供を受けたか否か、拒否されたかなどメモ書き程度の記載でOK

■税務署の対応は?
・未記載であっても税務署は提出を受け付けている。
・税務書類にマイナンバーの記載がないことをもって、税務調査を行うことはないと見解を示している。


6.法人税等会計基準、追徴税額は損益計上

■法人税等会計基準案が正式決定
・法人税、住民税及び事業税に関する「会計処理」と「開示」を定めるもの
⇒表現の見直しや考え方を整理したもので、実質的な内容の変更はないため、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しない
⇒平成293月期決算会社から適用

■主な内容
【会計処理】
・各事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等は、損益に計上する
・更正による追徴税額(延滞税等を含む)、還付税額が高確率で見込まれる場合も損益に計上する
⇒「損益に計上する」という会計処理方法は、これまで規定されていなかった

【開示(表示)】
・法人税、住民税及び事業税等はP/Lの税引前当期純損益の次に表示
・更生による追徴及び還付税額は法人税、住民税及び事業税等の次に表示
・事業税(追徴、還付税額を含む)はP/Lの販管費として表示
⇒表示方法は従来より示されていたが、内容に一部追加あり


7.災害損失の繰戻還付 経過措置

■災害損失の繰戻還付
災害によって欠損金が生じた場合に、過去事業年度に納付した法人税の一部還付を受けることができる制度

■対象期間
(原則)
災害発生日から1年経過日までに終了する事業年度
(経過措置)
2841日~29331日までに終了した事業年度については、29430日までに還付請求すれば申告書提出済であっても還付請求が認められる。

(イメージ)
・過年度は経常的にプラス決算
・災害発生期以後はすべて赤字
・原則的な対象期間で繰戻還付をしなかった、場合に経過措置で繰戻還付を受けることができる


8.税理士損害賠償事故例と予防対策ケース・スタディ《保証債務の履行による譲渡申告失念ケース》

■事案
・依頼者より不動産譲渡の相談受ける
⇒「隣地所有者より買取りの申出があったため売却を検討している」とのこと
・依頼主の申告書を一般長期譲渡として作成
・依頼者の配偶者が事業資金として銀行借入をしていることは承知していた

■問題点
・当該譲渡が配偶者の借入の保証債務履行であった場合には、要件を充たせば、保証債務の履行による譲渡申告の特例が使えた。
⇒特例が使えたのに使わなかったのは税理士のミス、と提訴
※特例を使えば所得が発生しない

■結論
・不動産譲渡の理由・経緯、依頼者が配偶者の銀行借入金を返済するに至った経緯から特例は使えなかったので、依頼主の主張は認められなかった。

■予防策
・登記簿謄本,契約書等による確認
⇒不動産譲渡所得は特例が多い
・譲渡目的の聞き取り
⇒きっかけや目的によっては適用する特例が異なる場合がある
・納得して選択できる十分な説明


9.修正後発事象

・決算期後に発生した財政状態、経営成績に影響を及ぼす事象

修正後発事象:発生の原因が決算日以前⇒決算修正
開示後発事象:発生の原因が決算日後⇒注記

⇒修正後発事象が会社法の監査報告書日から金商法の監査報告書日までに生じた場合は財務諸表を修正せず注記とする。
⇒当該、“修正されない”修正後発事象が、日本固有の問題として指摘されている。


10.平成27年度税制改正のチェックポイント

1.タックスヘイブン税制の見直し
・タックスヘイブン税制が適用される特定外国子会社等の判定の際の税率が変更
⇒適用される国の実効税率が20%以下から、20%未満へ
・タックスヘイブン税制適用除外の特例がある統括会社についての改正
⇒日本企業が買収した外国企業グループで、特定外国子会社等に保有される内国法人にも適用除外の特例が受けられるように改正

2.外国子会社配当益金不算入制度
⇒支払側の国で損金算入される場合には、益金不算入制度は適用されない。

3.所得拡大促進税制
⇒雇用者給与等支給増加額の基準雇用支給額に対する割合が変更
(1)H28.4.1H29.3.31までに開始
4%(中小企業は3%
(2)H29.4.1H30.3.31までに開始
5%(中小企業は3%

※改正前は、いずれも5%
※雇用者給与等支給額 = 国内雇用者に対して支給する給与
※基準雇用支給 = H25.4.1以後に開始する各事業年度のうち
最も古い事業年度の前事業年度の雇用者給与(通常は平成24年度)


11.ネット広告収入の会計処理ポイント

■会計処理
・期間按分or回数等指標に応じて売上計上

■ネット広告の課金形態と売上計上のタイミング
(1) 期間保証型
・広告掲載期間に応じて料金が決まる形態
⇒広告掲載期間にわたって売上計上。
⇒掲載期間が非常に短期であれば、掲載初日に計上することもあり。

(2) インプレッション課金型
・広告の表示回数に応じて課金する形態
⇒広告の効果測定レポートに基づいて売上計上

(3) クリック課金型
・クリックされた数に応じて料金が決まる形態
⇒広告の効果測定レポートに基づいて売上計上

(4) 再生課金型
・動画広告の再生回数に応じて料金が決まる形態
⇒再生回数に基づいて売上を計上することが多い
⇒契約形態によって様々(100%視聴しないと回数にカウントされない、25%でカウントする、など)

(5) 配信課金型
・メール広告
⇒メール1通当たりの単価を設定、配信した数に応じて料金が決まる

(6) 成果報酬型
・アフィリエイト広告のほとんど。あらかじめ設定した成果に応じて料金が決まる形態。
⇒会員登録や商品購入など、成果の種類は多岐にわたる


12.加算税制度の見直し

平成28年度税制改正により「税務調査の事前通知後~更正等又は告知の予知前」の加算税が強化された。
・趣旨:税務調査の事前通知を行った直後に修正申告又は期限後申告を行い、加算税の賦課の回避や軽減を図ろうとする行為を防止する
・適用時期:平成2911日以後に法定申告期限が到来する国税・地方税

■改正後の加算税の税率
・過少申告加算税:事前通知前0%、事前通知後更正等又は告知の予知前5%、更正等又は告知の予知後10
⇒改正前は事前通知後更正等又は告知の予知前が0%だった
・無申告加算税:事前通知前5%、事前通知後更正等又は告知の予知前10%、更正等又は告知の予知後15
⇒改正前は事前通知後更正等又は告知の予知前が5%だった
・不納付加算税:事前通知前5%、事前通知後更正等又は告知の予知前5%、更正等又は告知の予知後10
⇒変更なし


13.決算短信等の開示の自由度向上

(1)「サマリー情報」の様式の使用強制取りやめ
→今後は参考様式に
(2)速報性に着目した記載事項の整理
→要請する事項を可能な限り減らし、会社の状況に応じた開示を可能とする=原則;速報性が求められる事項に限定
・決算短信;①サマリー情報、②経営成績等の概況、③連結FSおよび主な注記 に限定
・四半期決算短信;④サマリー情報、⑤四半期連結FSおよび主な注記 に限定
※③(⑤)の開示時期は①(④)と同時期を要請するが、①④を早期開示も出来る
→「経営方針」の記載の取りやめ
→「投資判断に有用な情報の追加」の要請の取りやめ


14.H29.3期税務申告の要点

■法人実効税率の引下げ
H29.3期の法人税率23.4(実効税率29.97)に引下げ
H32.3期の法人税率23.2(実効税率29.74)に引下げ予定のためDTA/DTL注意

■法人事業税の外形標準課税の拡大
・法人事業税(所得割)の引下げ
・付加価値割1.2%、資本割0.5%に引上げ、中堅企業の負担軽減策も見直し有

■欠損金の繰越控除限度額の引下げ
・欠損金控除前所得金額の60%に引下げ

■減価償却方法の見尾し
H28.4.1以降取得の建附、構築物、鉱業用建物について定率法廃止

■企業版ふるさと納税
・特定の事業に寄付した場合、その額の30%を税額控除可
H28.4.20以後終了事業年度から

■役員給与損金不算入の見直し
・リストリクテッドストック制度導入
⇒譲渡制限解除時に損金算入OK
⇒一定のRS付与による給与について事前届出不要
・利益連動給与の指標が明確化

■雇用促進税制の改正
・増加雇用者数は無期かつフルタイムの新規雇用者に限定
・所得拡大促進税制との併用可能に


15.借入実行前に金利スワップ契約を締結し、借入実行が早まった場合の有効性評価

当社は、将来実行される可能性が高い変動利付借入金(予定取引)に対して
あらかじめ金利スワップ取引(固定支払・変動受取)をヘッジ手段として締結しています。
このとき、借入実行が当初想定よりも早まった場合に望ましいと考えられるヘッジ会計の有効性評価の方法について教えてください。

結論:未経過の期間も含めてヘッジ期間全体の変動額の累計を比較する方法でヘッジ会計の有効性評価を行う。

変動金利固定化のヘッジ有効性評価の判定方法は、ヘッジ対象とヘッジ手段についてそれぞれのキャッシュ・フローの総額の変動額を比較することになる。

比較方法として
①すでに経過した期間の変動額の累計を比較する方法
(ヘッジ取引開始時から有効性判定時点までの変動額を比較)
②未経過の期間も含めてヘッジ期間全体の変動額の累計を比較する方法
(ヘッジ期間全体の変動額を比較)

①の方法の場合、ヘッジ対象とヘッジ手段の期間が不一致であるため、比較方法として適切ではない。
②の方法の場合、ヘッジの実態に合わせて方法と考えられる。

②の方法で有効性が認められる場合には、ヘッジ会計を適用することができると考えられる。


16.今3月期決算の実務ポイント 有価証券報告書の開示内容に係る見直し

・金融庁の諮問機関が、企業の情報開示のあり方について検討・審議。
・主な提案内容は下記の通り。
⇒短信を簡略化する(経営方針は速報性が求められないので有報に移す、会社法の開示書類と一部共通の記載にする)
⇒有報を一部充実させる(「業績等の概要」「生産、受注及び販売の状況」等について、雛形的な文章ではなく、経営実態が分かる文章にする)

・上記を受けて東証は下記のコメントを発表。
⇒東証の定める様式の使用義務を撤廃。


17.オーバーアロットメント

募集または売出しにおいて、需要動向を踏まえた販売、およびその後の流通市場における需給の悪化を防止することを目的として導入された制度

⇒当初の募集・売出予定株数を超える需要があった場合、主幹事証券会社が発行会社の大株主等から一時的に株式を借り、当初の売出予定株数を超過して、募集・売出しと同じ条件で追加的に投資家に販売すること。

■グリーンシューオプション
上記の追加的な販売株数(募集・売出し株数の15%を上限)を調達するべく、借りた株式を返還するために、主幹事証券会社は、発行会社または株式を借りた大株主等から、引受価額と同一の条件で追加的に株式を取得する権利が付与される

(例)
A株主が115万株売出しを希望
この場合、100万株を買取引受による売出し+15万株についてオーバーアロットメントによる追加売出しとする。
15万株については、引受証券会社が、A株主より株式を取得できる権利(グリーンシューオプション)の付与を受ける。

・売出し(株主⇒引受証券会社)
引受証券会社は、オーバーアロットメントによる追加売出し分15万株については、他の株主(B株主)から一旦借入れ、買取引受による売出し分と同じ日程、価格で売出しを行う。

・追加分の調達(引受証券会社⇒株主)
引受証券会社は、追加売出し分について、B株主より借入れを行っているため、返還する必要があり、グリーンシューオプションを行使する。

A株主より売出価格で株式取得し、B株主に返還する。









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