2017年3月31日金曜日

3/31 勉強会:スクイーズアウト関連税制の整備など 他

1.非公開会社の新株発行、総会の特別決議なく無効と判断

■被告会社(非公開会社)が行った新株発行は、
株主総会の特別決議を欠くことなどにより無効であると主張した裁判
・原告株主は少なくとも発行済株式総数の50%を保有
・原告株主に対して臨時総会の招集通知がされていなかった
⇒東京地裁は・・・
非公開会社において、特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合、その発行手続きには重大な法令違反があり、この瑕疵は当該新株発行の無効原因になると判決


2.確定申告期限、1ヶ月延長なら手続不要

・平成29年度改正で、確定申告期限の延長可能期間が拡大に
(従前)延長可能期間1ヶ月⇒事業年度終了後3ヶ月以内に提出必要
(改正後)延長可能期間4ヶ月⇒6ヶ月以内までに提出すればOK
※定款に「会計監査人監査の定め」があることが条件(=実質、中小企業は改正対象外)
※延長には、定款の「総会開催期間の定め」&税務署への届出が必要

・実務手続き:定款に「3ヶ月以内の総会開催」の定めがあり、税務署に1ヶ月延長申請を提出済みの会社
⇒今まで通り3ヶ月以内に提出する場合:手続き不要
⇒今後、4ヶ月以内の提出とする場合:定款を4ヶ月以内に変更することが必要


3.裁決事例から読む価格調整金等の取扱い

■価格調整金等とは
企業が既に行った国外関連取引に係る対価の額を、後々に移転価格上適正な価格である独立企業間価格に変更するため支払う金額

⇒当該支払が合理的と認められない場合は寄附金課税がされる

(裁決事例)
・寄附金課税されない
…原材料の価格高騰が原因で遡及して取引価格を改定
 ※他社も同様の改定が必須かつ事前の取り決め必須

・寄附金課税される
…国外関連者の財務支援目的や支払額の根拠がないケース


4.粉飾でも匿名組合契約に基づく利益分配

・所得税法210条等
匿名組合契約に基づく利益の分配に関しては、当該分配を行った者が源泉徴収義務を負う

・本件
匿名組合に運用益が生じたとして、組合員に分配金を支払っていたが、実際には利益が生じておらず、運用益が生じていたかのように仮装経理していただけ

・納税者の主張
出資の払戻しにすぎず、利益の分配に該当しない
→支払った者は源泉徴収義務を負わない

・判決
匿名組合・匿名組合員それぞれにおいて、利益の分配として金銭を交付・受領しているのであれば、その後、損益計算書等の誤り(ex.仮装経理)が確認されても、特段の事情※がなければ、利益の分配に該当する
→支払った者は源泉徴収義務を負う

※匿名組合契約の当事者間において利益の分配ではなく、出資の払戻しとして取り扱うべき旨の性質改定が行われ、それに沿った清算処理等が行われた等の事情


5.大規模法人における税務上の要注意項目

■売上関係
・売上の計上基準に照らし、当事業年度に計上しているか。
・計上基準を変更した場合の理由は、合理的かつ適切であるか。
■売上原価
・翌事業年度以降の売上に対応する原価を損金経理していないか
■役員給与
・株主総会等の決議に基づき、適切に支給されているか。超過していないか。
・役員の個人的な費用を負担し場合、役員給与としていないか。
■給与・賞与
・決算賞与等の臨時の賞与につき、損金経理のみならず、すべての従業員に通知する等の要件を満たしているか。
■減価償却費
・稼働を休止し事業の用に供していない資産に係る減価償却費を損金算入していないか。
■交際費
・福利厚生費等に役員や従業員の接待等の支出が含まれていないか。
■寄付金
・支払った事業年度に損金算入しているか。未払金計上していないか。
・寄付金の中に、役員が個人で負担すべきものが含まれていないか。
■使途秘匿金
・相手方を明らかにできない金銭の支出以外に資産の贈与等がないか。
■費用全般
・事業年度末までに債務が未確定な費用が損金経理されていないか。
■棚卸資産
・期末時点で、預け在庫や未着品を棚卸対象としているか。
・未使用の消耗品を取得事業年度の損金としていないか。
■繰延資産
・支出の効果が1年以上に及ぶ費用全額を損金としていないか。
■貸付金
・役員、従業員への金銭の貸付につき、低い利率で貸し付けしていないか。
■消費税関係
・取引により資産の所在地か又は役務提供地かといった判定場所の確認を行っているか。
・個人に対する支出につき、雇用契約か請負契約か確認しているか。
・出向者への給与負担金を課税仕入れとしていないか。
・贈答用の商品券、クレジット手数料、役務提供がない会費、キャンセル料など課税仕入れとしていないか。
・車両の買換の場合、課税売上と課税仕入れが同時に行われているか。

※国税庁HPより一部抜粋


6.株主総会の開催時期

会社法上、株主総会は「事業年度終了後の一定の時期に開催すること」とされている

■一定の時期とは
・基本的には、基準日から3か月以内(=議決権の行使期限)
3月決算法人で決算日を基準日としている企業が多いので、6月に集中
⇒定款を変更して基準日を4月末にすれば、7月開催も可能

■実務上の問題
・決算日と基準日の2回、株主を確定しなければならない
⇒決算日には、株主名簿を有価証券報告書などの「大株主の状況」に記載する必要があるため
⇒基準日には、議決権を行使できる株主を確定する必要があるため


7.税務動向 スクイーズアウト関連税制の整備など

■スクイーズアウトとは
少数株主から強制的に株式を取得して完全子会社化する行為のこと
組織再編税制の対象として、
(1)合併
(2)株式交換
税制の対象外として
(3)全部取得条項付種類株式
(4)株式併合
(5)株式売渡請求
の方法がある

■改正案
・対価要件の見直し
⇒合併、株式交換については、対象会社の発行済株式の2/3以上を有する場合、1/3未満の少数株主に金銭を交付しても「適格」とする
・組織再編税制の整備
⇒全部取得条項付種類株式等によるスクイーズアウトを組織再編税制に組み込み、「株式交換等」として整備する

また、「非適格」となった場合には資産の時価評価制度の対象となるが、従前の含み益1,000万未満の場合に加え、帳簿価額1,000万未満の場合も時価評価不要に改正される


8.<税務相談>法人税《過年度にソフトウエアの取得費を費用計上していた場合の処理》

■事案
・前期に費用処理したシステム開発費が、本来は固定資産に計上すべきことが当期に判明

■会計上の措置
・過年度誤謬基準を適用し、当期首にソフトウエア計上し、繰越利益剰余金を増やす。

■税務上の措置
・前期の所得が過少だったため修正申告が必要

■税務上の論点
・減価償却はとれるか?(基本通達751752に当てはめ)
⇒ソフトウエアの取得価額に算入すべき金額を研究開発費として損金経理をした場合は損金としてとれる。
⇒上記に該当しなくても、別表16を添付し申告調整により償却費は損金算入可能 (ソフトウェアを加算し、減価償却を減算と申告調整する)
※そもそも損金経理をしていない場合には、×


9.所在不明の株主について

・所在不明株主=株主名簿記載の住所に通知しても5年以上継続して到達せず、かつ、継続して5年以上配当を受領していない株主
⇒会社は所在不明株主の株式を競売し、売却代金を所在不明株主に交付することができる
「売却代金は当社が10年間預かり株主様からのご請求に基づきお支払い」という開示事例あり。10年は民法の時効期限。

・発行会社は市場等において該当株式を売却できる
・自己株式として買い取ることもできる
 ⇒買い取る株式の数と金額を取締役会で決議する


10.今3月期決算の実務ポイント 平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更

・平成2841日以後に取得した建物付属設備、構築物の法人税法上の減価償却方法が定率法から定額法へ
・上記に伴って会計上の減価償却方法を変更するのは、「正当な理由」と認められた。
・なお、適用初年度では、定額法に変更した旨、及び変更による決算への影響額を注記が必要。


11.規程の種類

4つに大別
・基本規程
⇒定款、取締役会規程など
・組織規程
⇒業務分掌規程、稟議規程など
・人事労務規程
⇒就業規程、給与規程など
・総務庶務規程
⇒印章管理規程など
・業務規程
⇒経理規程、与信管理規程など

規程類の改廃は取締役会の決議事項
事務手続きの変動制が高いものはマニュアル等で規定しておくべき
・勘定科目細則
・決算処理マニュアル
・棚卸実施要領
・営業マニュアル
・営業所業務マニュアルなど


SOXとの関係では、財務報告に係る全社的な内部統制において、慣行や規程の遵守状況等を踏まえ、整備・運用状況を評価する。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿