2017年3月11日土曜日

3/10 勉強会:取引先の倒産、災害、不祥事…。トラブル別にみる具体的な対応ポイント 他

1.譲渡日の調整による欠損金活用不可に

29年税制改正で適格合併等に係る欠損金引継制限が適用されない"空白期間"が塞がれる。
・「特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額」は、「支配発生日」において有する資産に係る損失
⇒「支配関係事業年度の開始日」から「支配関係発生日の前日まで」の期間に特定資産を譲渡すれば損金算入できた
29年税制改正で損金算入不可に
※合併法人等に係る「特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額」についても同様


2.私道共用宅地の減額要否の判断基準示す

納税者が相続により取得した歩道が私道共用宅地に該当しないとした高裁の裁判決を破棄し、差戻しが行われた事案

■参考(評価通達24)
私道供用宅地の相続税評価は、路線価などの30%で評価
私道が不特定多数の通行に使用されている時は、ゼロ評価

■最高裁の判断
・私道供用宅地は、第三者の通行に使用され、所有所の意思により自由に処分等をする事に制約があることにより、時価が低下する場合に相続税評価を減額されるべきもの
・相続税評価における減額の要否及び程度については、建築基準法等の法令上の制約の有無だけでなく位置関係・形状等や道路としての利用状況、道路以外への転用の難易度等に照らし、減額の要否及び程度を検討すべき


3.個人所得課税改革で給与所得控除の見直しは?

平成29年度税制改正による配偶者控除の見直しを改革の第1弾とし、今後数年かけ個人所得課税の改革を進めていく予定。
給与所得控除が、平成30年税制改正の焦点となる可能性。

(復習)
■所得税の控除限度額は段階的に引下げ(確定事項)
・平成25年 控除限度額245万円
・平成28年 控除限度額230万円
・平成29年 控除限度額220万円

■配偶者控除額の見直し
・平成30年 収入限度額103万円⇒150万円

(今後の検討課題)
・給与所得控除等をはじめとしたあるべき控除額の設定
・人的控除の見直し(配偶者等)
・公的年金等控除の見直し(年金受給者拡大による)


4.JMIS(修正国際会計基準)第三弾、修正等はなしで決定へ

■前提
・国際会計基準
IASB(国際的な会計基準設定機構)が作成した、国際的な会計基準

・修正国際会計基準
ASBJ(日本の会計基準設定機構)が、日本に適合しているかという観点から、上記原基準の内容を検討し、必要に応じて、一部の内容を削除・修正した、日本版国際会計基準

JMIS(修正国際会計基準)第三弾
・公開草案通り、「修正・削除」すべき項目はなしで決定される方向

・今回の対象は、1411日~16930日にIASBから公表された、会計基準等のうち、171231日までに発効するもの
Ex.個別FSにおける持分法、連結の例外の適用、繰延税金資産の認識、等


5.エフオーアイ社の粉飾決算事件

■概要
・マザーズ上場。
・上場後に粉飾決算の事実が発覚。
・有価証券届出書及び上場申請時に虚偽の決算情報を記載したことを認める。
・破産手続開始の申立て。
・上場後7カ月で上場廃止。
旧経営陣のみならず、上場時の主幹事証券に対しても損害賠償責任が認められた裁判。

■旧経営陣・・・損害賠償責任判決
・有価証券届出書等へ記載について、粉飾決算を主導及び容認していたことから、虚偽記載していたことは明らかであると判断
・監査役も本来の業務監査で是正すべきであるにも関わらず、「相当な注意」をもって監査を行ったと認められないと判断

■主幹事証券・・・損害賠償責任判決(主幹事として初の賠償責任)
上場申請時より、粉飾を示唆する投書(内部通報)があったにも関わらず、売上の実態確認のために追加調査行わなかったことから、審査不十分かつ注意義務を尽くしていたとは認め難い判断
※上場前に2度上場申請を取り下げていた

■自主規制法人・・・投資家に対する注意義務違反なし
・会計監査人より売上の実在性の監査手法を確認済。
・帳票類や預金通帳の確認も行っていた。
以上より、漠然と追加調査を怠ったとは評価できないため。
※抽象的には注意義務違反ありと判示。

■東京証券取引所・・・不法行為の責任なし
自主規制法人が独立した立場で上場審査の全部を行っていたため、自主規制法人が行った審査の過程における過失は責任を負う必要はない。


6.国税庁、類似業種比準方式を見直しへ

国税庁が、類似業種比準方式の見直しについて、意見公募を開始(3/30まで)

■類似業種比準方式
類似業種の上場企業の株価を基にして、評価会社の配当、利益、純資産の3要素を比較することで株価を算定する方法

■改正理由
より実態に即した株価評価を行うことで、中小企業が円滑に事業承継できるようにするため
⇒現行の評価方法では、上場企業の株価の上昇に比例して想定外に高い株価評価になる恐れがある

■主な改正内容
1.類似業種の株価として「前2年間平均」が選択可能に
現行 :前月、前々月、前々月の前月、前年平均の株価のうち、最も低い金額を選択
改正案:現行+前2年間平均の株価のうち、最も低い金額を選択
【効果】上場企業の株価の急激な変動が、株価評価に与える影響を小さくする

2.配当、利益、純資産の比重の変更と連結決算数値の使用
現行 :配当、利益、純資産の比重は、1:3:1で計算
改正案:配当、利益、純資産の比重は、1:1:1で計算 ※連結会計上の数値を使用
【効果】利益が株価に与える影響を小さくして、好業績企業の株価の高騰を防ぐ

■適用時期
平成2911日以後に相続等で取得した財産の評価から適用


7.上場株式等の配当等 所得・住民税で課税方式の選択可

■上場株式等の配当等の課税方式
下記3パターンより選択が可能
(1)申告不要⇒源泉徴収税額をもって課税関係完了
(2)総合課税⇒給与所得等と総合して超過累進課税。配当控除の適用あり
(3)申告分離⇒15%の分離課税。上場株式の譲渡損失と通算が可能

H29年度分より所得税・住民税でそれぞれ(1)(3)の選択可(=所得税と住民税で異なる課税方式を取ってOK)となることが明確化される。H28年度以前については明確化されていないが選択可能

■具体例
所得税⇒総合課税(配当控除により還付となるケースあり)
住民税⇒申告不要(総合課税だと最低税率7.2%、申告不要だと税率5%)とすると有利になる場合がある。


8.消費税《譲渡した土地の地中にある不法投棄物の撤去をする場合の仕入税額控除》

■事案
・毎期課税売上高5億円以下
・土地を売却⇒課税売上割合95%未満⇒個別対応適用
・翌期、譲渡した土地にごみが大量に埋まっていることが判明⇒除去費用を負担
⇒当該除去費用は、税額控除の対象か?

■結論
・課税売上高5億円以下、課税売上割合95%以上である場合は全額控除対象
⇒前期は、個別対応であったため、非課税売上対応課税仕入れなど関係なく控除可


9.報告セグメントの変更

・セグメント情報とは、
売上高、利益、資産その他の財務情報を、事業の構成単位に分別した情報である。
・経営者が意思決定や業績評価のために、事業活動を区分した方法に基づいてセグメント情報を開示する。
・報告セグメントの決定後に区分の見直しが行われることもある
 見直しのパターンは以下の2種類。
 ⇒経営者の交代や会社の組織変更によって見直す場合
 ⇒量的基準による見直し。急激な売上増加があったセグメントの扱い等。


10.【租税条約】投資所得

1.投資所得
⇒配当、利子、使用料(ロイヤルティ)など
⇒源泉地国、居住国の両方で課税
⇒しかし、源泉地国の税率は制限、居住国が最終的な課税権を持つ

2.源泉地国の課税制限(原則)
(1)配当所得
⇒資本の25%以上を保有の場合は5%、それ以外は15%の税率まで制限
(2)利子所得
10%の税率まで制限
(3)使用料所得
⇒源泉地国では課税が免除
※ただし、実際の租税条約では一定税率まで課税されるケースもあり


11.(万が一の事態に慌てないために)決算作業中のトラブルにはこう対応する

■決算作業中に起こる事象とその対処を想定
・会社による意思決定(自己株式取得、増資減資等)
・災害や第三者によってもたらされる損害、訴訟 等
⇒これら事象の想定と、起こった時のフローを想定、整理しておく

■決算作業中にトラブルが生じた場合に検討しなければならないこと
・会計上の後発事象の検討
・取引所の適時開示への対応
・臨時報告書の提出
・決算発表が予定通りに行えるか

■情報収集体制の構築
・経理部だけでなく、他部門、子会社も巻き込む必要あり
・報告すべき情報の定義づけ⇒各部門に周知
・連絡体制、フロー等、経理部による情報収集のしくみの整備


12.内部統制の不備が顕在化した際の対応

■期末までの内部統制の是正措置の実施
・対象となる業務プロセスの再整備
・当該整備状況についてのテスト及び運用状況テストの実施と再評価

■期末までに是正されなかった場合は不備に対する評価の実施
・内部統制監査報告書にて「開示すべき重要な不備」とするか否かの検討
⇒不備の影響が及ぶ範囲
⇒影響の発生可能性の検討
⇒内部統制の不備の質的・金額的重要性の判断


13.内部監査部門の実態

■内部監査部門の有無・構成
・内部監査専任設置:約83
・内部監査とその他部署兼任:約13%
→合計で約96%の会社が設置
・兼務は経理系部署が大半
・年齢は50歳代が半数
・人事ローテーションあるが、異動しない職員は約6割いる
■組織上の位置づけ
・社長直下:約81
・大半の会社で複線(社長・取締役・監査役)の報告
■監査役との連携
・大半が監査の実施の都度または定期的に交換
・四半期以上が約8
・一方で監査役から内部監査への伝達は少数


14.これからの連結会計見直しプロジェクトにおける検討ポイント

■連結会計フローの変遷
従来:グループ各社でexcelの連結パッケージを作成⇒収集後、親会社担当者がそれぞれ取込
最近:各社クラウドにて個別に管理⇒親会社担当者は各社情報を一括自動取込
⇒データの精度・透明性upPKG作成+受領後チェックの省略化

■ポイント1:各社情報の収集方針の決定 (親会社)
①各社のシステムを共通した一元化システムに取込んでしまう方法
○:一度構築してしまえば、後が楽
×:各社のシステムを変更する時間・コストがかなり大きい

②各社決算情報をもとに、コード変換+自動連携する方法(実務上多い)
○:効率的
×:各社に、連結会計に必要な項目を抽出するシステムを用意してもらう必要

■ポイント2:他部門との連携(親会社タスク、以後上記②を前提)
ITの観点⇒システム部門との密な連携(グループ間のネットワーク整備等)
・業務の観点⇒親会社部門間での協力体制確保+各社への説明・連絡フロー確立

■ポイント3:データの検証とトレーニング(親会社)
ITの観点⇒自動連携されるデータの信頼性確保(特に科目マッピングの適時メンテが大事)
・業務の観点⇒各社主要ユーザに対するコーチング

■ポイント4:変化への対応(グループ各社)
・プロジェクトチームの創設
ITの観点⇒システムのベンダーに対する機能開発依頼
・業務の観点⇒親会社への提出期日に間に合うか事前テスト


15.取引先の倒産、災害、不祥事…。トラブル別にみる具体的な対応ポイント

どのようなトラブルが発生した場合でも、以下2点の対応が必要となる。
① 影響額を把握する
② 修正後発/開示後発に該当するか、適時開示/臨時報告書での開示が必要か判断する

トラブル例として下記があげられ、個々のトラブルに応じた対応が求められる。
(個々のトラブル特有の対応は⇒以降に記載)

・売掛金が回収できていない取引先が倒産してしまった(回収懸念先になってしまった場合)
⇒倒産を予知できていなかった場合は、管理体制を見直す。
・災害が発生して財務的な損害が出てしまう場合
⇒人命救済・安全確保が最優先
・不祥事が生じた場合
・業務上のトラブルが発生した場合
⇒会社の業務に関連するものか個人に関連するものか把握する。
・訴訟が生じた場合
・役員が逝去した場合
・税務調査の影響
⇒「見解の相違」であれば過去の誤謬には該当しない
・監査法人の審査対応
⇒監査法人からの指摘事項や見解の相違事項があれば、監査法人等と協議し、根気強く説明する
・システム障害が生じた場合
・財務報告に係る内部統制上の重要な不備が検出された場合


16.今3月期決算の実務ポイント 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針

・分類2 スケジューリング不能な一時差異
(従来)繰延税金資産の回収可能性なし
(改正後)将来のいずれかの時点で損金算入されることを合理的に説明できれば回収可能性あり

・分類3 5年を超える期間にスケジューリングされた一時差異
(従来)回収可能性を認められない
(改正後)合理的な根拠があれば回収可能性が認められる

・分類4 
(従来)特別な原因の損失を除けば毎期所得を計上できると認められれば分類3と出来る
(改正後)分類3または分類2と出来る


17.会計監査を受ける前に整備しておきたいポイント

1.会計処理の根拠資料は、検証可能な状態で整理されているか?
⇒伝票番号等を根拠資料に付すなど、会計処理と根拠資料の関連を明確にする。
2.会計処理の根拠資料は、すべて網羅的に保管されているか?
3.内容不明の残高、勘定科目内訳に残っていないか?
4.発生主義で会計処理を行うために必要となる情報は収集できているか?
⇒販売管理システムなどとの連携が必要。
5.実地棚卸はきちんとやっているか?
6.在庫の受払記録は作成しているか?
7.固定資産台帳に記載されている資産は実在しているか?
8.原価計算を行うための体制は整っているか?
⇒時間がかかるため、早めに着手した方が良い。
9.連結範囲の確定前に整理すべき関係会社はあるか?
⇒当社が実質的に支配しているかどうかの判断が必要。
10.子会社において、連結決算に対応できるだけの体制が整っているか?

⇒連結するにあたって、必要情報が親会社に集められる体制が必要。









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