2017年9月3日日曜日

9/1 勉強会:安愚楽牧場事件 監査役の責任 他

1.自社株対価TOB、譲渡益課税繰延べ要望

・現在、自社株対価TOBはデメリットがネックとなり普及していない
■自社株対価TOBのメリット
・買収資金が不要
・本来、会社法上の有利発行規制と現物出資規制を受けるが産業競争力強化法により対象外となる優遇も

■自社株対価TOBのデメリット
・被TOB会社の株主に対する課税が生じるケースあり
⇒現物出資する株式より高い金額でTOB会社の株式を得た場合に譲渡益発生
 現金収入がない中で税負担発生

2.平成29年6月総会における現物株式報酬の導入事例分析

■現物株式報酬の類型
(1)譲渡制限付株式
対象期間の始点で譲渡制限が付された株式を付与され、対象期間の終了・勤務条件の充足をもって譲渡制限が解除される仕組み

(2)パフォーマンス・シェア
対象期間の始点で譲渡制限が付された株式を付与され、対象期間の終了・勤務条件の充足のみならず、業績条件の達成度に応じて、譲渡制限の解除割合が変動する仕組み

(3)パフォーマンス・シェア・ユニット
評価期間の終点で、業績目標の達成度合いに応じて、株式が付与される仕組み

■現物株式報酬の導入事例
(1)譲渡制限付株式:㈱SUBARU
・取締役(社外除く)に譲渡制限付株式を付与する為の報酬枠(年額2億円以内)を決議
・上記報酬は取締役に対する報酬等の総額(年額12億円以内)の範囲で支給
・譲渡制限期間は3

(2)パフォーマンス・シェア:㈱ユナイテッド・アローズ
・取締役(監査等委員除く)に対して、従来の報酬枠(年額5億円)とは別に譲渡制限付株式付与の為の報酬枠(年額3億円以内)を決議
・上記に伴い、従来の報酬枠も改定(年額5億円⇒年額4億円)
・譲渡制限期間(3年以内、かつ、取締役会において予め定めた期間)における連結経常利益額及び連結ROEの達成度等に応じて、譲渡制限が解除。
加え、一定割合については、業績達成度に関わらず譲渡制限が解除

(3)パフォーマンス・シェア・ユニット:富士通㈱
・業務執行取締役(代表取締役及び執行役員を兼任する取締役)に対して、予め定めた3年間の中長期業績目標の対象期間開始時に、下記事項等を提示
a.役位に応じた基準株式数、b.業績判定期間(3年間)c.中長期業績目標
・付与株式数は、下記算式により年度毎に計算し、業績判定期間の終了時に対象者毎に合計株式数を付与基準株式数×一定係数(業績達成水準に応じた)
・従来の報酬枠とは別に本制度に係る報酬枠(年額3億円以内)を決議

3.超富裕層に対する管理体制を強化

東京国税局は、今事務年度に国際化及び富裕層に対し優先的に調査事務量を確保し、従来以上に積極的に対応する方針を示した。

主に
・超富裕層の管理・調査企画を専任に担う部署を設置
・超富裕層でも特に多額の資産を保有している納税者を重点管理富裕層として指定
・関係者等より情報収集等を行い組織的な調査チームで対応
・租税条約等に基づく情報交換制度を効果的に活用(海外当局と連携)
・金融機関等との連携強化

上記を基に国際的な租税回避事案や脱税事件を未然に防ぐよう対応する

4.元代表取締役会長が相談役に就任した場合も開示が必要か?

■コーポレートガバナンス報告書(東証)
・相談役や顧問等による現経営陣への影響力を考慮し、報告書の様式を改訂
・上場会社の経営トップが退任して相談役や顧問に就任する場合、その役職での業務内容、報酬などを記載できる欄を新設
H3011日以後提出する報告書から記載可能
⇒強制適用ではないため罰則なし
・元代表取締役会長が相談役に就任した場合も開示が必要か?
⇒退任した人が実質的な経営トップであれば記載対象

5.外形 付加価値割の所得拡大税制改正の影響

■法人税
平成29年度改正
(適用要件)
①増加促進割合基準(改正なし)
②雇用者給与等支給額基準(改正なし)
③平均給与等支給額基準
⇒改正により前年平均給与等支給額より2%以上の増加が必要となった
(改正前は前年平均を1円でも超えていればOKだった)

(インセンティブ)
従来の雇用者給与等支給増加額の10%に前期から増加した額の2%を加算した額の税額控除が認められることとなった

■外形
適用要件⇒法人税法と同様に前年平均の2%以上の増加が必要
控除額⇒インセンティブ分の加算なし

⇒外形では適用要件のハードルがあがっただけとなる


6.大改正の組織再編税制 押えておきたい実務ポイント〈1〉

スピンオフの場合の適格要件の導入(単独新設分割型分割のケース)
■改正前
適格要件を充たすためには、単独新設分割型分割では、完全支配関係又は支配関係が継続することが見込まれていることが必要
⇒分割前後で独立した資本関係となるスピンオフは非適格となってしまう

■改正点
分割型分割の適格要件にスピンオフを行う場合(独立して事業を行う場合)という新しい類型が追加し、上記を解消。
以下の要件が特徴的
・非支配要件
⇒分割法人は分割前において誰にも支配されない独立した法人であり分割型分割後に分割承継法人は誰にも支配されない独立した法人であること
・役員引継要件
⇒役員等に加えて分割法人の重要な使用人(分割法人の分割事業に係る業務に従事している者に限る)を含む

■改正の適用時期
平成2941日以後に行われる分割について適用

7.分類1の回収可能性判断

DTAの回収可能性判断では業績等に応じて企業を5つに分類し判断する
・分類1=過去3期&当期のすべてで将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じており、近い将来に経営環境に著しい変化が見込まれないこと
・分類1はDTAの全額OKとなる
ASBJが分類1の取り扱いを1部見直している。
・「原則として」全額回収可能とする方向
・「完全支配関係にある国内の子会社株式の評価損」
 ⇒子会社を清算するまで保有する方針なら回収可能性は無いと判断することもありえるため
201841日以後開始事業年度に適用予定
 ※会計方針の変更⇒過去遡及して適用が必要

8.安愚楽牧場事件 監査役の責任

(1)事件の概要
・運営会社は、投資家から黒毛和牛の飼育委託を受け、投資家は牛の購入及び委託代金を支払い。
・牛が育った段階で、購入代金と同額で運営会社に牛を売却。
・投資家は上記の売却額とは別に年34%の配当を得ていた。
・運営会社の経営が行き詰まり、長年に亘って、実際の飼育頭数が、投資家との契約頭数の57割の状態が続いていた。
・運営会社が破産。投資家が取締役及び監査役を提訴。監査役に責任があったかが争われた。

(2)問題点
(事業面)
・そもそも出資法違反。
(会計面)
・投資家から牛を買い戻すことが必然であったにもかかわらず(ただし契約書に明記はなかった)、負債計上がされていなかった。

(3)監査役の責任 控訴審の判断
・監査役の監査権限は会計監査に限定されていた。
・契約にない以上、買い戻しについて負債に計上しなかったことは不正な会計処理とまでは言えない。
・計算関係書類から、実際の飼育頭数の不足が常態化しながら長年に亘って違法なオーナー契約の勧誘が継続されていた事実を察知することは容易ではなかった。
 ⇒ 監査役への請求は不可との結論。

(4)監査役の責任 著者の見解
・投資家にとって、牛を自分で保有したいはずがない。買い戻しは当然の前提。
・運営会社は少なくとも引当金の計上が必要。
・さらに、貸借対照上の資産(牛)の実在性を確かめるなどは会計監査の一環として当然行われるべきで、その点を怠ったのは重大な過失といえる。
・投資家らは会計監査とは何をすべきか、裁判所に理解してもらうことに失敗している。

9.UUUM上場

・設立20136
・大物Youtuber HIKAKIN等のクリエイターが所属をマネジメントする会社
・同社に所属するクリエーターは 2017 6 月末で 178
・チャンネル数は 4,526
・有価証券届出書の株主の状況にて、Youtuberの本名、住所が明らかになってしまった。
20185月期は売上高897900万円(前期比28.6%増)、営業利益4億円(同11.6%増)を見込む。









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