2017年9月8日金曜日

9/8 勉強会:離婚に伴う財産分与に対する第二次納税義務の適用 他

1.税効果会計の一部改正案、内容面での変更はない方向

■「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(案)
・「分類1」に該当する企業について
現在:原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする
案:一定の要件を満たした場合には繰延税金資産を認識しないことを原則とする表現へ

・表示の変更
案:繰延税金資産および繰延税金負債のすべてについて非流動項目に表示(※IFRSと同様)

・注記事項の追加
(1)評価性引当金の内訳に関する数値情報
(2)評価性引当金の内訳に関する定性的な情報
(3)税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報
(4)税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報

2.金融商品のエンドースメントは修正なし

・企業会計基準委員会は147月に改正されたIFRS9号「金融商品」のエンドースメント手続※を開始しているが、「削除又は修正」はしない方向
※国際会計基準審議会が作成したIFRSが日本企業に適合するように、個別基準の内容を詳細に検討し、必要に応じて一部の内容を削除又は修正すること

・今年6月までに国際会計基準審議会から公表された、その他のIFRS等※についても、エンドースメント手続を実施しているが、いずれも「削除又は修正」はしない方向

※「株式に基づく報酬取引の分類及び測定」(IFRS2号の修正)

3.離婚に伴う財産分与に対する第二次納税義務の適用

■事例
・納税者が夫協議のうえ離婚。
・納税者は離婚に伴い、夫が相続により取得した宅地を財産分与により取得(3,000万円相当)
・夫は相続税等を約2億円滞納中。
・国税局が滞納者()に対する徴収手続を進める中で、納税者が第二次納税義務者に該当するか否か検討
・財産分与が無償譲渡に該当すると判断し、納付告知処分を行う
・納税者は審査請求を受けるも棄却されたため、裁判所に納税告知処分の取り消し訴訟を提起

■争点
財産分与で取得した宅地が、不相当に過大な無償譲渡に該当するか否か

■裁判所判断
・離婚に伴う財産分与であっても「譲渡」に該当する。
・財産分与時の宅地の評価額が約1.9億円であるため、財産分与相当額の6倍を超える譲渡であること
3,000万円を超える部分は不相当に過大な財産分与と認めざる負えないことから、この財産分与(譲渡)は「著しく低い対価による譲渡」と判断し、納税者に対する第二次納税義務は適用と判決が下された

4.30年度改正で"事業の買換え特例"を検討

・企業の事業ポートフォリオの見直しを推進するための施策として導入を検討

■事業の買換え特例とは(検討段階)
・事業の買換えをした場合に課税の繰り延べを可能にする
・既存事業を譲渡した場合に生じる譲渡益に対応する圧縮損を計上し、新たに購入した事業の取得価額を圧縮する仕組み
⇒現行の買換え特例(土地や建物等の事業用資産が対象)に「事業そのもの」の買換えを追加する内容

■適用要件(検討段階)
・産業競争力強化法による事業再編計画等の認定を受けること
・事業の売却と購入をセットで行うこと
・事業の譲渡と購入が一定の期間内に行われること
・譲渡する事業と購入する事業の関連性があること

5.グループ子法人の法人税留意点

■中小法人等の優遇税制
(1)軽減税率 所得800万以下について税率15
(2)留保金課税の不適用
(3)貸倒引当金の損金算入可
(4)800万円以下の交際費損金算入可
(5)繰越欠損金を所得限度で使用可
(6)欠損金の繰戻還付適用可

■中小法人等とは
期末資本金1億円以下でかつ大法人(資本金5億円以上)による完全支配関係がない法人をいう

(参考)
■親会社が外国法人の場合
資本金が5億円以上かどうかは子法人の期末日における売買相場の仲値で換算した金額により判
⇒為替相場により5億円を前後するケースがあるので注意

6.返品権付き商品の販売

・出版業や医薬品製造業などを中心に翌期以降に返品される可能性がある商品を販売した場合、返品が予想される商品の利益部分を見積もって「返品調整引当金」を計上している。
・収益認識の新基準では返品が見込まれる商品については「返品負債」を計上し、返品商品を回収する権利として資産を計上する。
(数値例)
100円の商品を100個販売(仕入単価60円)
5個の返品が予想される

(現行基準)
 現預金 10,000円 / 売上高10,000
 売上原価 6,000円/ 商品 6,000
 引当金繰入 200円/ 返品調整引当金 200

(新基準案)
 現預金 10,000円 / 売上高 9,500円 
          / 返金負債 500
 売上原価 5,700円/ 商品 6,000
 見積返品資産 300

7.M&Aにおける米国F-4登録をめぐる対応ポイント

■F-4とは
・Form F-4
・米国内で証券の募集又は売出をするに先立ちSECに証券を登録するが、その際に用いる様式
・日本国内でのM&Aであっても米国株主が一定割合以上存在する場合には提出が必要

■主な記載要項⇒総じて負担が激増
・M&Aの内容に関する平易なQ&A、M&Aのサマリー
・リスク要因
・両当事者の監査済FSその他財務情報(原則として過去2事業年度分)
・M&Aの背景事情、交渉の過程
・M&A契約における合意内容の説明
・財務アドバイザーのフェアネスオピニオン
・両当事会社の事業の状況
・両当事会社の経営者による財務・経営状況の検討と分析
⇒財務諸表に関する開示の負担が大きい。IFRS又はUSGAAPで作成。JGAAPで作成されている場合は、USGAAPに対する適切な調整を加える必要あり
⇒SEC登録後も年次報告書や臨時及び期中報告書等の作成・開示が必要

■回避するために
・除外規定の利用(下記すべて満たす必要あり)
(1) 対象会社が海外民間発行体であること(米国からみて海外)
(2) 対象会社における米国株主の持株比率が10%以下であること(以下、10%ルール)
⇒分母が「発行済株式総数-自己株式-買収会社及び関連会社が保有する株式数」となる点注意
(3) 米国株主が他の株主と同等以上の取引条件を与えられていること
(4) 一定の情報開示等がなされること
⇒M&A公表のプレスリリースや総会招集通知等の英訳等(いずれも簡潔で負担は軽微)

・取引スキームの変更
(1) 株式を対価とするM&A取引が×なので、現金対価とすれば回避可能
(2) 共同株式移転等の共同新設型のスキームでも回避できる余地あり(上記10%ルールは当事会社全体に対して適用される)

8.「連結・企業結合」に係る論点・問題点

■支配獲得・喪失に係る会計処理
①段階取得に係る損益
処理
・支配獲得時において過去に取得した子会社株式をすべて時価評価&差額を当期の損益として処理

問題
・売却せず投資が継続している株式の評価損益が計上される
・過去の期間に係る含み損益が一度に表面化され損益額が多額になる

②支配喪失時の会計処理の整合性
処理
・売却後に残った株式は個別財務諸表上の簿価に修正する
・修正差額は「連結除外に伴う利益剰余金減少高又は増加高」してS/Sに表示

問題
・支配獲得時(時価評価)の処理と不整合
・IFRSの取扱いと差異が生じている(公正価値評価&差額は損益)

■共通支配下等グループ内取引の処理
①のれんの処理
処理
・子会社同士の合併で、合併対価が現金とされるような場合に、移転資産及び負債と支払った現金の差額としてのれんが計上される

問題
・グループ内の取引によってグループ全体の持分は変動しない為、 このような取引で計上されるのれんは必ずしも超過収益力を示さない(個別F/S上の話)

■連結範囲
①関係基準の再整備の必要性
問題
・実態が類似する取引であっても、事業体の法的形態の違いによって会計処理が異なるケースが生じる懸念がある。
・関連する会計基準や適用指針等が多岐に渡ることで、実務上検討すべき事項を網羅的に把握することが困難

②国際的な基準との整合性
問題
・日本基準では一定の投資企業が有する投資は子会社としない旨が定められているが、
 IFRSにおける投資企業の概念ではさらに投資を公正価値評価することが求められている
・日本基準では本人、代理人の検討ルールがなく、他社の為に代理人として意思決定を行い、当該事業体から生じる利益はほとんど得ていないような事業体も連結対象となる可能性がある
・特別目的会社の定義が連結基準と金融商品会計基準とで異なっている為、連結の範囲や開示の取扱いに漏れが生じる可能性がある


9.有価証券届出書における第三者割当の場合の特記事項

①平成22年4月より開示が義務化
・企業の判断で株主の権利が希釈化
・支配権の所在が経営陣自信によって恣意的に選択
・コーポレート・ガンバナンスの観点から、看過できない重大な問題をはらんでいる
②昨年、税法上の特定譲渡制限株式を発行者である提出会社(関係会社)の役員に割り当てる場合は免除
・割当先や目的が明確であるため
・ほかに、パフォーマンスシェアや株式報酬等として割当する場合も含む


10.期末をまたぐ有価証券の売買処理の実務

■上場株式:約定日基準(以下、売買目的有価証券を前提)
・売手:契約日に有証をオフバラ、売却損益を計上
・買手:契約日に有証をオンバラ
※継続適用を条件に、修正受渡日基準可
・売手:契約日に売却損益のみ計上、受渡日に有証をオフバラ
・買手:契約日は処理なし、受渡日までの時価評価差額を計上、受渡日に有証をオンバラ

※契約から受渡までの期間が長期の場合、先渡契約とみなしてデリバ処理
・売手:受渡日までは、通常の有証の時価評価に加え、先渡契約の時価評価
受渡日には、有証をオフバラ、時価評価差額は売却損益、約定価格との差額はデリバティブ損益

・買手:受渡日まで、先渡契約の時価評価(売手と損益方向は逆)
受渡日には、有証を時価でオンバラ、約定価格との差額はデリバティブ損益

■非上場株式:受渡日基準
・売手:契約日は処理なし、受渡日に有証をオフバラ、売却損益を計上
・買手:契約日は処理なし、受渡日に有証をオンバラ


11.デリバティブ取引の税務上の留意点

■税法におけるデリバティブ取引の定義
⇒税法と会計のデリバティブ取引の範囲は同じ
(デリバティブ取引について税法独自の定義はなし)

■税法における原則的な取り扱い
⇒期末時点の未決済のデリバティブは時価評価し、事業年度の損金又は益金算入し、翌期に洗替

■税務上のヘッジ処理
⇒会計上のヘッジ会計と同様の処理

■税務上のヘッジ処理の適用要件
・帳簿記載要件
①デリバティブ取引等がヘッジ対象資産等に係る損失額を減少させるために行ったものである旨
②ヘッジ対象である資産、負債及び金銭
③ヘッジ手段であるデリバティブ取引の種類、名称、金額、ヘッジ期間
④その他参考となるべき事項
⇒会計上のヘッジ会計の文書と税務上の帳簿記載要件は必ずしも一致しないので留意が必要。

・有効性の判定
会計上は省略できる場合があるが、税務上は省略不可。

■為替予約の振当処理、金利スワップの特例処理
⇒税法と会計で大きな違いなし。



12.同業者団体が役員に払う日当の税務上の扱い

・同業者団体が役員に払う交通費の実費及び日当は旅費交通費として扱って良いか。
・交通費の実費は旅費交通費としてOK。
・日当は給与所得として源泉徴収の対象となる。
・そもそも「日当」は「業務上の旅行に際して通常必要とされる少額の雑費等に当てるための資金として供給されるもの」。
・本ケースの日当は「毎月開かれる理事会等への出席に対して支払われるもの」で、いわゆる日当に該当せず。


13.三様監査

1.「監査役監査」、「会計監査人監査」「内部監査」の3つの監査のこと
⇒それぞれの目的、主体は異なるが、監査対象や手続きに重複する部分がある。
そのため、監査人が連携することが重要である。

2.三様監査の比較
・監査役監査
法律:会社法第381条、第436条
主体:監査役
目的:株主及び債権者保護の目的で、取締役の職務の執行を監査
種類:会計監査、業務監査

・会計監査人監査
法律:会社法第436条、第444条、金商法第193条の2
主体:公認会計士(監査法人)
目的:株主及び債権者保護の目的で、(連結)計算書類、(連結)財務諸表、内部統制を監査
種類:会計監査

・内部監査
法律:なし
主体:会社の従業員等
目的:企業の経営活動に資する目的で、経営者の指揮の下に、業務部門の体制・活動全般を監査
種類:会計監査、業務監査

3.上場審査における取扱い
申請書類において、各監査人の連携について以下の記載が求められる。
・市場:共通
・申請書類:Ⅰの部
・記載内容:コーポレート・ガバナンスの状況
⇒内部監査、監査役監査及び会計監査の相互連携、これらの監査と内部統制部門との関係について記載

・市場:マザーズ
・申請書類:各種説明資料
・記載内容:内部監査について
⇒三様監査(監査役監査、内部監査、監査法人による監査)の連携状況について記載

・市場: JASDAQ
・申請書類:JQレポート
・記載内容:監査役(監査委員会)監査
⇒内部監査との連携について記載









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