2018年3月23日金曜日

3/23 勉強会:資本政策のスケジューリング 他

1.IFRSを適用して新規上場した企業の減損テスト

減損テストの回収可能価額をどのように算定しているか?
■すかいらーく
・のれんのみ
・回収可能価額は使用価値にて算定
・使用価値=原則5年の事業計画の割引後CF

■コメダホールディングス
・のれんのみ
・回収可能価額は処分コスト控除後の公正価値にて算定
・公正価値=3年以内の事業計画の割引後CFに事業の継続価値を加味

■スシローホールディングス
・のれんと、耐用年数を確定できない無形資産(企業結合により認識されたブランド)
・回収可能価額は使用価値にて算定
・使用価値=翌連結会計年度の事業計画を基礎+割引後将来CF

■プレミアグループ
・のれんと、耐用年数を確定できない無形資産(事業運営ノウハウ等の顧客関連資産)
・回収可能価額は処分コスト控除後の公正価値にて算定
・公正価値=マルチプル法で算定




2.役員退職給与適正額の算定に平均功績支給倍率1.5倍を適用

■争点(死亡退職慰労金の支給額…4.2億円は妥当)
・会社側:内規に基づく算定額4.2億円を支給(功績倍率6.50)
・国税側:類似法人の平均功績倍率による2.1億円が妥当(功績倍率:3.26)

■判決(東京地裁)
・平均功績倍率からのかい離を考慮して、平均倍率の1.5倍までを退職給与の相当額とする

■「1.5倍」の根拠
・従来もっとも多く支持されてきた平均功績倍率法を機械的に適用することへの疑問
・裁判所の肌感覚にすぎない(理論的根拠なし)

■問題点
・限度額のバーを平均倍率の1.5倍としたことに明確な根拠なし
・類似法人の選定が売上金額の倍半基準で国が選定した5件の類似法人をそのまま認めている




3.仕入税額控除で地裁が裁決と異なる解釈

■消費税の課税仕入れの区分
(事例)
・販売用の目的で建物を取得
・取得時点では住宅の貸付け等の用に供している

■裁決(H24.1/19 大阪国税不服審判所)
・課税仕入れ等を行った日の状況で判定
・課税仕入れの目的、課税仕入れ等に対応する資産の譲渡等の内容を勘案
⇒取得時点で賃貸の用に供しているから共通仕入と判定

■判決(H25.6/26 さいたま地裁)
・課税仕入れ等を行った日の状況で判定
・最終的に課税資産の譲渡等のコストになるものは課のみ仕入
⇒本件は、取得時点で賃貸契約を結んでいたため共通仕入と判定
⇒最終的に販売するのであれば課のみ仕入と判定される可能性も…

■業界の動向
積水ハウス:27年1月期から29年1月期までの3事業年度分を修正申告
ムゲンエステート:不服申し立てを行う予定





4.疑似ストックオプションを巡る税賠訴訟で税理士側が敗訴

■疑似ストックオプションとは?
本来のストックオプション:自社の株式を予め決めた値段で購入できる権利
疑似ストックオプション:ワラント(新株引受権付社債)を発行しワラント部分をストックオプションとして付与

■本件の概要
1、A社がB社に対して分離型新株引受権付きの社債を発行
2、A社がB社から新株引受権の部分だけを買い戻す
3、2の新株引受権をA社の代表取締役である納税者へ付与、平成15、16年にその権利を行使
4、納税者は税理士に行使した年分の確定申告を依頼、給与所得として申告書を提出
5-1納税者は平成26年に破産し手続き開始
5-2破産管財人(本件の原告)は平成15、16年に行った確定申告は課税関係が発生しないにもかかわらず給与所得として申告したことは善管注意義務違反であるとして訴訟提起

■権利行使時に課税関係が発生するか否か?
所得税法施行令84条第4項にある「有利な発行価格により新株を取得する権利」が疑似ストックオプションの課税関係を生じるのかどうか?(同法施行令84条は平成18年に改正)
⇒ストックオプションは譲渡性がない=付与時に経済的利益を観念する事が困難である為、行使時にしている。⇒一方、本件は第三者から買い戻したものを付与している=譲渡性があり市場価値があった。
⇒所得税法施行令84条の適用を認める合理性がないと判断された。

■税理士の善管注意義務違反があったかどうか?
1、16年分の確定申告資料に「新株引受権付社債」と記載された調書を添付している
2、所得の内訳に「ワラント行使」「新株引受権等行使」と記載していた
3、疑似ストックオプションという言葉は知らずとも本件の概要はわかっていた、文献もあったと述べていた
⇒適正な申告を行うべき義務に違反した・・と判断された。

■結果
原告側の主張を認め、3600万円の損害賠償を命じる判決を下した。現在、被告は控訴中





5.収益認識注記は重要な会計方針に含めず

■収益認識会計基準の適用時期
→2018年1月1日以後に開始する事業年度から早期適用が認められている。
→2021年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用。

■早期適用段階では、注記事項は必要最低限とし、強制適用時まで注記事項は定めない。
→具体的には、「顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点」を注記。
→有用性とコストの評価を十分に行うことができないため、早期適用段階では重要な会計方針の注記には含めず、個別の注記として開示することとした。


【収益認識の代替的な取扱い、金額に関係なく適用可】
■収益認識会計基準では、期間がごく短い工事契約及び受注製作のソフトウェア、出荷基準などの取扱いなどで代替的な取り扱いが認められている。
→代替的な取扱いを適用する際には、個々の項目の要件に照らして適用の可否を判定する必要であるが、金額的な影響を集計して重要性の有無を判定する要件は設けないこととした。





6.法人税:業績連動給与_中途退任者等の取り扱い

■業績連動給与の主な損金算入要件
・「利益の状況を示す指標」等を基礎に算定されていること
・有価証券報告書等で「客観的な算定方法の内容」等が開示されていること
・指標の数値が確定してから金銭や株式を一定の時期までに交付等していること

■「中長期」の指標を基礎に算定する場合に中途の退任や死亡退任があった場合
⇒有価証券報告書等において開示等しておけばよい

(記載例)
評価期間中において役員が退任した場合
⇒○年○月期の業績確定を待って、通常の算定方法に基づき算定した個別支給株式数及び
個別支給金額を評価期間中の在任月数を48で除した数を乗じて調整のうえ、○年○月に
支給します。

などと記載する

■交付期日要件
金銭については指標の確定日(=退任日)の翌日から1か月以内、株式であれば退任日の
翌日から2か月以内に交付等しなければ損金算入が認められないことに注意




7.固定資産税特例 認定支援機関による計画の事前確認を義務化

H30年度改正で創設される、
中小事業者等が取得した機械装置等の固定資産税を、
3年間、最大ゼロまで軽減できる固定資産税の特例

年率3%以上の労働生産性の向上が見込まれるかが論点になるが、
その事前確認として、「認定経営革新等支援機関」である税理士等に事前確認が義務付けられる。
⇒本当に向上が見込まれるか、外部機関の確認が必要であるため。




8.会社補償とD&O保険

・2月に公表された会社法制の中間試案に、「会社補償」と「D&O保険」の整備が記載されている
 ⇒会社がD&O保険に加入するための手続などが明記された
・会社補償:役員が職務執行のために過失なく損害を受けたときは、会社に対して賠償請求できる
・D&O保険:賠償額の填補を目的とした保険
・現行ではいずれも利益相反取引に該当し、会社による厳格な規制が適用される
 ⇒会社法で適切な規程を設けて運用する必要ありとされた
・D&O保険は免責事由や免責金額による制約があるので、外国から役員を招く会社等、
 D&O保険と会社補償の両方の制度を用意している会社もある




9.税効果会計及びマイナス金利の実務ポイント

・税効果会計基準一部改正案(現在、案を公表し、パブリックコメントを募集中)
 ⇒ 国際会計基準表示区分をすべて非流動区分に表示(繰延税金資産は投資その他の資産、繰延税金負債は固定負債)
  ⇒ 評価性引当額を、「税務上の繰越欠損金に係るもの」「その他」に区分しで注記する
 ⇒ 繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した理由を注記する

・マイナス金利の扱いについて、当面の取り扱いとして「マイナスをそのまま利用」「ゼロを利用」いずれも選べる、を延長。





10.資本政策のスケジューリング

大きく以下の4つの時期に分けて考えることができる。
(1)オーナー一族の持株調整期
⇒資本政策の開始時点で、もっとも安価に増資あるいは株式を移動できる期間
⇒主目的は、オーナー一族の持株を増加させることであり、
 以降のステップで外部株主が参入してくるのに備えることである。

(2)役員・従業員の持株調整期
⇒ある程度上場の目処がついてきた段階
⇒株式保有の方法として、従業員持株会やストック・オプションなどの インセンティブ・プランを導入

(3)安定株主の持株調整期
⇒金融機関・取引先等の外部株主を参入させ、上場後の安定株主作りを行う期間
⇒割当先および株数は、将来を見据えて、取引関係、営業上の支援等を考慮して決定

(4)発行済株式数の調整期
⇒株式上場が近づいてきた時点で最終的に申請時の発行済株式数を調整するための期間
⇒株式分割などにより発行済株式数を調整













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