2018年3月19日月曜日

3/16 勉強会:資本及び利益剰余金の双方が配当原資、税務上の取扱いは 他

1.資本及び利益剰余金の双方が配当原資、税務上の取扱いは

・原告法人が完全支配外国子会社から資本剰余金と利益剰余金をそれぞれ原資とする
 剰余金の配当を受けた
・原告法人は利益配当を益金不算入、資本配当を損金(関係会社株式評価損)に算入した
・国側は資本配当と利益配当は効力発生日が同日であることから全額が資本の払戻しに該当するとした

⇒裁判所は、資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当は資本の払戻しとした国側の主張を認めた
⇒一方、資本積立金がマイナスで配当をした本件において法令(資本部分の払戻しに係る株式に対応する部分の金額の
計算方法の規定)は無効とし国側が全面敗訴した



2.企業結合で識別されたのれん以外の無形資産

■企業結合
×「多額ののれんが発生する」=時価評価BSと取得対価との差額がのれん
○「識別可能な資産負債・のれん以外の無形資産へ配分したあとの残りがのれん」
⇒国際的には後者が主流、日本ではまだのれんにスポットライトが当たる状況

■事例研究
(1) IFRS任意適用会社に多い「のれん以外の無形資産」
・顧客関連(カスタマー・リレーションシップ、顧客基盤等を含む)
・商標権(販売権、ブランドを含む)
・技術関連資産(テクノロジーを含む)
・仕掛研究開発
・その他(契約関連資産、ライセンス、フランチャイズ権等)

(2) 償却年数(ソフトバンクの事例)
・無線設備にかかるソフトウェア:5~10年
・その他のソフトウェア:3~5年
・テクノロジー:8~20年
・顧客基盤:4~24年
・有利なリース契約:7~23年
・商標権(耐用年数を確定できるもの):8~34年
・周波数移行費用:18年
※その他、耐用年数を確定できない無形資産も多数計上



3.有償支給取引、買い戻し義務の有無で判断

■収益認識会計基準案
・有償支給取引に関する取扱いを草案から変更
⇒買い戻し義務の有無により、支給品の消滅の認識に違いあり
⇒買い戻し義務の有無に関わらず、支給品の譲渡に係る収益は認識しない

■買い戻し義務あり(加工された製品の全量を買い戻すことを支給時に約束している場合等)
・支給品の消滅を認識しない
・支給品の譲渡に係る収益を認識しない
⇒支給先は支給品の支配を獲得していない
⇒ただし、支給元での在庫管理は実務上困難なので、個別財務諸表で消滅の認識をすることを認める

■買い戻し義務なし(実態判断)
・支給品の消滅を認識
・支給品の譲渡に係る収益を認識しない
⇒譲渡収益と最終製品販売による収益の2重計上を回避するため

■仕訳例(買い戻し義務ありの場合)
・支給品(簿価800円)を1000円で有償支給し、1200円で買い戻す場合
<支給時>
(未収入金)1000 (有償支給取引に係る負債)1000
<買戻時>
(有償支給取引に係る負債)1000 (買掛金)1200
(棚卸資産)200




4.所得税・消費税の審理事例Q&A

■生保会社の誤りにより増加した税負担等を補填する為に生保年金受給者に支払われる補てん金の課税関係
⇒不法行為等の突発的な事故により受けた損害賠償は非課税
■司法修習生に対する経済的支援は何所得?
⇒雑所得、支払者である最高裁と司法修習生には雇用関係等はない。また、どの所得にも当てはまらないため

■産後ケアセンターへの入所費用は医療費控除の対象となるか?
⇒対象にならない。医師や助産医の診療、分娩介助を受けるための施設ではないため。

■市区町村長が交付した「障碍者控除対象認定書」に遡及して認定を受けた場合
⇒更正の請求期限は5年の為注意。5年以上前に遡って請求する事は出来ない

■非居住者になる者の確定申告期限
⇒国内に住所を有しなくなった後に、納税管理人を通じて「納税管理人の届出書」を税務署へ提出。
この場合の納税期限は、「国内に住所を有しなくなった」=「出国」の時までに納税しなければならない

■土地および建物を一括譲渡した場合の対価の額の区分
・土地建物の内訳が明らかになっていない場合の取扱い(合理的な区分と認められるかどうか)
⇒相続税評価額又は固定資産税評価額にて区分
⇒通常の取引価格、取得価格の比により区分する方法
⇒不動産鑑定業者の鑑定評価額(鑑定評価額が合理的であると認められた場合のみ)




5.所得税・消費税の審理事例Q&A

<所得税法>
出国する場合の準確定申告と納税管理人の届出
Q:確定申告義務を有する居住者が、国内に住所及び居住有しなくなった後に、納税管理人を通じて税務署長に「納税管理人の届出書」を提出した。この場合、当該居住者の確定申告書の提出期限はいつとなるか。

A:「出国」の時までに確定申告書を提出しなければならない。 
 →所得税法上の「出国」とは、納税管理人の届出をせずに、国内に住所及び居住を有しないこととなることをいう。
 →Qでは、居住者が国内に住所及び居住有しなくなった後に「納税管理人の届出書」を提出しているため、「出国」                               
  後に納税管理人の届出を行っていることとなる。
 →「出国」の時までに確定申告をしないといけないため、期限後申告として取り扱われ、無申告加算税が賦課されることとなる。
 →なお「出国」前に納税管理人の届出を行っていた場合には、申告及び納付ともその年の翌年の2月16日~3月15日の間にすればよいとされている。

<消費税法>
土地および建物を一括譲渡した場合の対価の額の区分
Q:土地建物を一括で譲渡し、売買契約書には、譲渡の対価の総額のみが記載され、内訳は
明らかにされていない。
確定申告にあたり、土地の固定資産評価額を本件土地に係る譲渡の対価の額とし、譲渡対価との差額を建物に係る譲渡対価の額とした場合、当該譲渡対価の額の区分の方法は、合理的なものとして認められるか。
なお建物の対価の額は、固定資産評価額に比して著しく低額となった。

A:合理的とは、認められない。
→課税資産と非課税資産の譲渡対価が合理的に区分されていない場合、資産の譲渡時における課税資産の価額と非課税資産の価額の比により区分することとされている。(消令45③)
 例えば以下の方法により区分されている場合には、合理的に区分されているといえる。
・相続税評価額または固定資産評価額の比により区分
・通常の取引価額または取得価額の比により区分
・不動産鑑定業者の鑑定評価額の比により区分




6.法人税:返品調整引当金経過措置

■平成30年度改正
収益認識会計基準の導入に伴い、返品調整引当金制度が廃止となる

⇒出版業、医薬品関連業界に大きな影響が出る

■経過措置
(1)平成33年3月31日までに開始する各事業年度
⇒現行どおりの損金算入限度額まで適用可
(2)平成33年4月1日から42年3月31日までに開始する各事業年度
⇒現行法による損金算入限度額に対して1年ごとに1/10ずつ縮小した額で適用可

■損金経理要件について
現行法ではいわゆる「損金経理要件」が付されているが、収益認識会計基準では
「返品調整引当金繰入」という仕訳がされないため損金経理要件を満たさないこと
となる。これについては「返金負債の計上」等の処理を「損金経理」をみなして
返品調整引当金の損金算入が認められる予定



7.外国法人に支払うクルーズツアー客のあっせん手数料に係る消費税の内外判定

■事例
・国内旅行業務を行う旅行業者が、訪日客の国内旅行の引受を行っている。
・外国のあっせん業者と契約。
・あっせん業者から訪日客の国内旅行参加者が送られていくる。
・あっせん業者に支払う金額は、「仕入れ税額控除」の対象となるか

■判定
あっせんされて行われる旅行は日本国内での旅行であるが、
あっせんに係る役務提供地は明らかでない。
⇒役務提供地が明らかでない場合、あっせん業者の事務所等の所在地で判断する。
従って、国外取引に該当し仕入税額控除の対象とはならない



8.権利確定付き有償SOの処理

・従来はストックオプション基準の適用範囲か、複合金融商品適用指針の適用範囲か明確では無かった
⇒報酬としての性格を併せ持つのでストックオプション基準の適用範囲とする

権利確定日以前の会計処理
・有償SO付与に伴う従業員等からの払込金額を純資産の部に新株予約権として計上する
・有償SOの「公正な評価額」から払込金額を差し引いた金額を対象勤務期間等に按分して費用計上する
・「公正な評価単価」は付与日で算定し、条件変更の場合を除き見直さない
※権利不確定による失効の見積数を控除して算定する
 失効の見積数が変動すると損益発生
 ⇒新株予約権として計上した払込金額は権利不確定による失効に対応する部分を利益計上する




9.権利確定条件付き有償新株予約権の処理

■前提
・1名あたり20千個で10名に付与=200千個
・付与を決議した日の株価@700円
・権利確定日:4年3月期
・行使期間:4年3月期~6年3月期
・付与日の公正な評価単価は100/個
・払込金額は1,000,000(=100/個×(200千個―190千個))
※この時点では190千個が失効と見積もり

■付与日(1年11月1日)
現預金 1,000,000/新株予約権 1,000,000

■2年3月期、3年3月期
仕訳なし

・株式報酬費用=0=(公正な評価単価100/個×10千個-本新株予約権の払込金額1,000,000)×(5ヶ月÷29か月)
・株式報酬費用=0=(公正な評価単価100/個×10千個-本新株予約権の払込金額1,000,000)×(17ヶ月÷29か月)-2年3月期までの費用計上額0
※執行の見積もりに変化が無ければ変動なし

■4年3月期
株式報酬費用 19,000,000/新株予約権 19,000,000

・業績条件が高くなり、執行の見積を見直し。これに伴い権利確定条件付き有償SOを見直す。
・株式報酬費用=19,000,000=[(公正な評価単価100/個×権利確定すると見込まれる数量200千個)-本新株予約権の払込金額1,000,000)]-3年3月期までの費用計上額0

■5年3月期
仕訳なし(行使無し)

■6年3月期(権利行使)
現預金 140,000,000/資本金 160,000,000
新株予約権 20,000,000




10.決算時に留意すべき評価の実務ポイント

■固定資産に係る減損の兆候に係る留意点
・減損会計基準では、減損の兆候が例示されているが、それだけに限られるわけではない
・画一的に数値化できるものではなく、状況に応じ個々の企業において資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る可能性を示す事象の有無を検討する

■営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合における留意点
(営業活動から生ずる損益)
・当該資産または資産グループの減価償却費や本社費等の間接的に生ずる費用を含める
・営業損益ではないが営業上の取引に関連して生じた損益(例:たな卸資産の評価損)を含める
・大規模な経営改善計画等により生じた一時的な損益は含まれない

(「継続してマイナス」および「継続してマイナスとなる見込み」)
・一定の判断基準はあるものの画一的に数値化できるものではないため、状況に応じ個々の企業において判断が必要
・例えば前期=プラス、当期以降=明らかにマイナスの場合に減損の兆候があると判断すべきこともある

(損益またはキャッシュ・フロー)
・通常、「営業活動から生ずるキャッシュ・フロー」ではなく、「営業活動から生ずる損益」が適切であるとされている
・「営業活動から生ずるキャッシュ・フロー」を減損の兆候の判断に採用することは限定的と考えられる

(事業の立上げ時等)
・合理的な事業計画があり、当該計画にて当初より継続してマイナスが予定されている場合、予定していたマイナス額より著しく下方に乖離していないときは、減損の兆候には該当しない
・実務上は投資額が回収不能となる可能性を勘案して判定する必要あり




11.税効果開示に関する改正基準の早期適用にあたってのポイント

■税効果改正基準の適用時期
・開示については、H30年3月期決算から早期適用可
※会計処理に関する基準はH30年4月以降開始会計年度から適用

■表示に関する改正
・(従来)DTA&DTLは流固分類⇒(改正後)DTAは投資その他資産、DTLは固定負債

■注記に関する改正(注記事項の追加)
(1)評価性引当額の内訳に関する数値情報
⇒税務上の繰越欠損金(以下、繰欠)に係る評価性引当額・その他の評価性引当額を区別して記載
(2)評価性引当額の内訳に関する訂正情報
⇒評価性引当額の合計に重要な変動が生じている場合、その主な原因
(3)税務上の繰欠に関する数値情報
⇒繰欠全額を基礎に算出したDTA・評価性引当額・実際に算出した繰欠DTAを記載
(4)税務上の繰欠に関する訂正情報
⇒繰欠DTAに関して、回収可能と判断した理由

■適用初年度の注意
・表示方法の変更として取扱う⇒比較情報について要組替え表示
・表示(または注記)だけ早期適用、はNG

■会計処理に関する改正基準
・未適用の会計処理に関する適用指針等は、「未適用の会計基準」として、適用による影響を注記

■会社法上の扱い
・表示区分の見直のみ改正案あり⇒連結(単体)BSの表示には影響あるが、連結(個別)注記表にはなし



12.組織再編後の最初の決算に際してのポイント

■連結子会社の個別財務諸表
・会計基準の摘要の網羅性
 ⇒小規模で会計監査人非設置の会社の場合、特に留意が必要。
・会計方針の統一
 ⇒棚卸資産の評価方法、固定資産の減価償却の方法等は必ずしも統一を必要としない。
 ⇒連結範囲に含めた時点で会計処理を統一するのが原則であるため、年度末に会計方針を変更する場合は合理的な理由が必要。

■連結財務諸表における会計処理
・のれんの減損
 ⇒取得した年度末で減損処理が必要になる場合、取得時の会計処理を再検討しなければならない可能性がある。

■連結財務諸表上での開示
・企業結合の注記
・連結キャッシュ・フロー計算書注記
 ⇒組織再編の概要及び受入資産及び負債の開示が必要となる。

■内部統制報告
・評価範囲の検討
 ⇒連結売上高等も増加するため、重要な事業拠点の評価範囲の十分性を検討する必要がある。
・評価範囲の制約
 ⇒評価作業が完了しないことに合理性が認められる場合は、評価省略可。



13.株式報酬型ストック・オプションの開示

■会社法決算
①事業報告
・会社役員の報酬額として金額を開示
・報酬の額や算定方法の決定方針を開示
 ※指名委員会等設置会社以外は省略可
②計算書類
・重要な後発事象として開示すべき事項がないかを検討
⇒重要な場合、その他の注記にて開示することも考えられる

■金商法決算
①提出会社の状況
・「ストックオプション制度の内容」にて制度概要を記載
・「コーポレート・ガバナンスの状況等」にて役員の報酬等として開示
②ストック・オプション注記
・財規、連結財規に従い注記を行う
③重要な後発事象注記
・重要な後発事象として開示すべき事象がないかを検討
④1株当たり情報
・潜在株式調整後1株当たり当期純利益の計算において、当該影響を加味する




14.在外子会社等の会計処理に関する当面の取り扱い

・親子会社の採用する会計方針は原則統一するものとされているが、在外子会社がIFRSまたはUSGAAPで財務所要を作成している場合、それを連結決算手続き上、利用することが出来た。
・平成29年3月の改正で、取り扱いの対象が国「内」子会社にも広がった。
 ⇒ 親会社が日本基準、子会社がIFRSを採用するケースに対応するため。
・ただし一部の項目については、子会社の会計処理を修正することが求められる。
 ⇒ のれんの償却、退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理、研究開発費の支出時費用処理、投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価




14.IPOディスカウント

投資家が申請会社株式を購入する際、新規公開時特有の開示情報不足を担保し、
申込から上場までの市況変動リスクを吸収するため、
申請会社株式の想定市場価格に対するディスカウントのこと。

(1)IPOディスカウントを拡大させる要因
・上場直後の既存株式の売却行動など、需給が読みにくい場合
・エクイティ・ストーリー(※)に十分な納得が得られていない場合
・直接比較可能な上場会社が少ない場合
・株式市況の不調が十分にバリュエーションに
 織り込まれていないと懸念される場合など

(2)IPOディスカウントを縮小させる要因
・知名度が高く、ブランドイメージが良好である場合
・エクイティ・ストーリーが十分に浸透している場合
・直接比較可能な上場会社が多数存在する場合
・株式市況が好調に推移しており、バリュエーションに疑問が少ない場合
・収益性、成長性において、他社より競争優位にあることが明確な場合など









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