2018年7月27日金曜日

7/27 勉強会:請負契約に基づく機械装置、取得時期をめぐり納税者敗訴 他

1.請負契約に基づく機械装置、取得時期をめぐり納税者敗訴

■事例
・会社の決算期は平成25年3月期。
・工場に設置する機械装置の製造納入を請負業者に依頼。
・検収完了は、納入された機械装置が問題なく動作するかを確認し、検収書の押印をもって完了する契約。
・平成25年2月に機械装置は工場に設置され稼働したが、翌日以降に不具合が生じた。
・平成25年5月に機械装置が安定稼働することを確認し、検収書に押印した。

■争点
・納税者は、平成25年3月期の法人税申告に際して、2月分3月分の減価償却費を損金算入した。
・税務署は、平成25年3月期ではまだ機械装置を取得していないのだから、損金算入できないとした。

■地裁判決(納税者控訴中)
取得の時期=所有権移転の時期=検収完了の時期であるから、損金算入はできない。






2.時価算定の評価技法は毎期継続適用

■時価の算定に関する会計基準案【策定中】
・時価の定義を明確化
・時価のレベルを1~3で設定し、レベル1から優先的に使用する
・レベル1:活発でオープンな市場における公表価格
→レベル2・3となるにつれて時価の概念は抽象的となる。
・時価には、マーケットアプローチの他、インカムアプローチも含む
・評価方法は毎期継続して適用する






3.譲渡所得の無申告めぐり重加算税取消す

■事例
・土地換地処分に係る清算金を確定申告期限までに申告しなかった
・清算金は分離譲渡所得に該当
⇒税務署は重加算税の要件を満たすと判断

■判決
・重加算税は課さない
(理由)
・確定申告会場に清算金に関する書類を持参しなかったのは、その事実を秘匿するための行動とはいえない
・税務調査時に清算金を受領した事実や資料を隠ぺいしようとする態度を取っていたとはいえない
・資料を破棄しておらず、清算金も口座から出金していないため、秘匿行為はないと判断









4.OECDが評価困難な無形固定資産に関するガイダンスを公表

平成31年度税制改正でのHTVIアプローチ(所得相応基準)の適用によって生じた二重課税を解決
事前確認制度を活用し事後の紛争解決よりも未然に紛争を防止する事に重点をおいた

■評価困難な無形固定資産(HTVI)とは
無形固定資産の売買時において、有効な比較対象取引が存在せず、活用により将来生ずるCFの予測が困難なため、適切な売却価格を算定する事が難しい無形固定資産のこと

■所得相応基準とは
HTVIについて取引時点の予測と一定期間経過後の実績値に一定の乖離がある場合、実績値に基づいて取引価格を再評価する手法の事

■BEPS行動計画
BEPSとは多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し課税逃れを行っている問題を指す
各国の首脳間でこの問題を解決するための行動計画が15あり8~10に記載











5.7月豪雨で有価証券報告書の期限内提出が困難な場合は延長可

■豪雨の影響により有報等を本来の期限までに提出できない場合
→金融庁は、平成30年9月28日までに提出すれば、行政上および刑事上責任は問われないとする取り扱いを明らかにした。

■平成30年9月28日でも提出できない状況がある場合
→所管の財務局の承認を得ることで提出期限をさらに延長できる。

■臨時報告書
→作成自体が行えない場合には、その事情が解消した後、可及的速やかに提出すれば遅滞なく提出したものと扱われる。









6.平成30年度における相続税法等の改正について

非上場株式等に係る納税猶予制度の見直し
(1)納税猶予対象株式及び納税猶予税額の拡大
■納税猶予対象株式
⇒取得した全ての発行済議決権株式
■納税猶予税額
⇒納税猶予対象に係る贈与税・相続税の全額
 
(2)承継パターンの拡大
■贈与者・被相続人の要件
⇒複数人(代表者以外の者を含む)からの特例後継者への承継も適用対象
■後継者要件
⇒代表権を有する複数人(最大3名)への承継も適用対象

(3)雇用確保要件の実質的な撤廃
⇒雇用確保要件を満たせない場合であっても、一定の書類を都道府県へ提出すれば納税猶予を継続できるようになる。

(4)譲渡、合併、解散時等の納税猶予額の免税
⇒「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」には、下記に額に基づき納付金額を再計算し、当初の納税猶予税額との差額は免除。
譲渡:譲渡対価の額
合併:合併対価の額
解散:解散時の相続税評価額

(5)相続時精算課税制度の適用対象者の拡大
⇒贈与者の推定相続人以外の者である特例後継者も適用対象










7.税務相談:事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するかどうか

■相談内容
国外事業者A社はインターネットを通じて投資に関する情報を提供している。
この役務の提供は「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するか

■A社概要
・国外事業者
・インターネットで株式投資に関する情報を提供
・サービス料が高額であることから個人の利用はない
・利用者(法人)とは個別に契約を締結

■事業者向け電気通信利用役務の提供とは
国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち,当該役務の提供に係る役務の性質等から
役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう
例)インターネット広告、
例)契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなもの

■判定
相対で個別に取引内容を定めて契約を締結し、事業として利用することが明らかであることが
確認できるため事業者向け電気通信利用役務の提供に該当することとなる。
なお、サービス料が高額であることで実質的に個人利用が見込まれないとしても、それだけで
「事業者向け」とはならず、あくまで契約内容・取引条件から実態をみて判定する。












8.大幅下落している電話加入権の取扱い

インターネット回線の普及に伴い、「電話加入権」の価額が下落している。
NTT東日本と契約している場合、電話加入権の利用休止から10年後に自動解約される制度あり。
※NTT西日本は自動解約される仕組みはない

■電話加入権とは
電話回線を利用する場合に必要となる権利

■電話加入権の税務上の取扱い
・固定資産ではあるが、非減価償却資産に該当
・償却費計上×
・評価損計上×
・除却損○

■評価損計上できない理由
「1年以上利用休止(遊休)状態」であれば、法人税法において固定資産の評価損計上が認められる。

ただし電話加入権は以下理由により評価損計上ができない
・ネット普及に伴い市場全体が大幅に下落した
・1年以上利用休止していた事実によって下落していない

なお利用契約を解約した場合、
電話加入権の権利が消滅しているため、除却損計上が可能となる。










減価償却方法の統一

・近年、減価償却方法を定率法から定額法に変更する傾向が続いている
・変更理由
 「使用実態をより適切に反映」
 「より適正な期間損益計算を行う」
 「グループ内での会計方針の統一を図った」
・親子の会計方針は原則統一
 ⇒「評価の方法」「固定資産の減価償却方法」
  については「必ずしも統一を必要としない会計処理」








10.内部統制高度化の着眼点

■M&Aを契機とした内部統制の再構築
・内部統制報告制度はあくまで財務報告の信頼性に目的が限定
→コンプラ、労務管理、経営管理やガバナンスのケアについて、全社統制での対応は限定的
・制度対応のみならず、コンプラ対応も含めたグループ管理標準パックを構築する
■ガバナンス機能の向上と内部統制
・会社における広義の内部統制機能を高めるために重要な点は、内部統制はあくまで経営者による指示命令で実行
・経営者を監視する取締役会や監査役会等といったガバナンス機能を担う機関と連携
→連携強化をすることで、経営者による不正の抑止、防止、早期発見につながる











11.内部統制の見直しはこう進める 1章

■内部統制報告制度の概要
・内部統制報告制度とは?
⇒主として上場企業が「自社グループ」の「財務報告に係る内部統制」の有効性を評価し、内部統制報告書を作成すること、さらに、その内容の適切性について、外部監査人による監査を受けることが要求される制度

・主たる特徴
⇒上場企業だけでなく上場企業に属するグループ会社も対象となり得る
⇒自社グル―プの内部統制のうち、財務報告の信頼性に係る範囲に限定される

・制度対応手順
※「文書化」した上で、文書化通りに内部統制が「整備・運用されているか」を評価
(1)評価範囲の決定
全社的な内部統制および決算・財務報告プロセス=原則としてすべての事業拠点を評価対象
業務プロセス=「重要」な事業拠点のうち、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目に至る業務プロセスえお評価対象
※「重要」・・・連結ベース売上高のおおむね2/3に含まれるか否か
IT全般統制=財務報告上で重要な役割を担うシステムを評価対象
(2)評価対象の文書化
全社的な内部統制および決算・財務報告プロセス=チェックリストや質問書等
業務プロセス=業務記述書・フローチャート・RCM等
(3)整備状況の評価
「ルールが存在するか、ルールが実務に落とし込まれているか」を評価
(4)運用状況の評価
実務上は特に重要なコントロールに絞って、「ルールが一定期間守られているか」を評価
(5)有効性の判断
発見された内部統制上の不備を集計し、金額的・質的重要性を勘案して、開示すべき重要な不備に該当するか否かを判断








12内部統制報告制度への対応合理化のヒント

(1)(大前提) 内部統制報告制度への対応だけでは不足
⇒内部統制(以下、IC)の4目的を意識
・財務報告の信頼性(IC制度の対象)
・業務の有効性・効率性
・事業活動に関わる法令等の遵守
・資産の保全

(2)合理化案について監査人と事前協議・合意

(3)評価単位は必ずしも会社単位にする必要はない
企業単位とする会社がほとんど⇒事業別管理していれば、見直しの余地あり

(4)コントロールの統合による文書化・評価作業の合理化
同じコントロールなのに部署・拠点別に評価作業を実施⇒コントロール統合
異なるコントロールだが、基本ルールは共通⇒コントロール統合
※IC制度上、詳細規定なし

(5)フローを考慮したキーコントロール(以下、キーコン)の見直し
例:担当者のフローとその管理者のフローにキーコンあり⇒重要な後者だけをキーコンに
例:受注フローと計上フローにキーコンあり⇒財務に近い計上フローのコントロールをキーコンに

(6)業務監査担当者との連携
業務監査担当者とIC評価担当者は連携していない事例が多い
業務監査担当者は通年で業務負担は変わらない⇔IC評価担当者は評価時期で繁忙と閑散の差あり










13.研究報告にみる内部統制報告制度の現状と留意事項

■環境変化への柔軟性欠如
法律上の規制対応を目的とするため、環境変化を考慮した取組が実施されていない
⇒文書化資料の更新/評価作業が膨大、ローテーション採用により評価担当者にノウハウが蓄積されていない。
⇒業務変革等に対応できず実際の業務と内部統制報告制度対応に乖離が生じる

■信頼性の懸念
開示すべき重要な不備の半数程度は有報の訂正に伴って報告
⇒内部統制が有効と報告したあとで、有効でないと報告することは制度のそのものの信頼性を毀損しかねない

■大規模企業における開示すべき重要な不備の特徴
全社的な内部に起因するものと経営者/従業員の不正、子会社の誤謬に起因するものが多い
⇒決算・財務報告プロセス、業務プロセスに起因するものが多いが、防止/早期できる内部監査等の全社的な内部統制の課題があると判断される
⇒子会社では人員体制の脆弱性やジョブローテーション未適用など、不正防止が難しい
⇒取締役会の活性化や内部監査の監査体制等の改善、子会社決算数値の異常点の識別等が是正措置として考えられる

■新興企業における家事すべき重要な不備の特徴
創業者の力が強く働くことや人材不足が重要な不備に起因する
⇒役員・従業員の内部統制意識の熟成、社外取締役の導入等、基本的な内部統制体制の構築が求められる。










14.退職給付信託財産の一部返還の可否

■退職給付信託財産の返還可否
 信託財産を会社(事業主)の意思によって自由に会社の資産等と交換することは禁止されている。
※退職給付信託は、退職給付の支払い、他の年金制度への拠出を目的として設定されるため。

■例外として事業主の資産と信託資産との入替えが認められるケース
 (1)退職給付信託が超過積立の状況となった場合
 (2)信託目的を達成できない場合(信託した資産が株式であり、当該株式が上場廃止等により流動性がなくなる等)
 (3)買収・合併により年金資産に自己株式が生じるおそれがある場合










15.平成30年度税制改正における、主な法人税関係の改正について

■法人税法
(1)収益認識に関する会計基準への対応
・収益認識の時期:引渡し日(検収日、出荷日等)、近接日
収益の額:貸し倒れ、返品等は加味しない
(2)大法人の法人税等の電子申告の義務化

■租税特別措置法関係
(1)税額控除
 ・環境関連投資促進税制の廃止、高度省エネ投資促進税制の創設
 ・国家戦略特別区域等の特別区において固定資産等を取得した際の特別償却、税額控除制度の見直し
 ・雇用促進税制、所得拡大促進税制の見直し
(2)特別償却、準備金等の税制の見直し

■その他
(1)交際費等の損金不算入制度の延長
⇒平成32年3月31日まで、2年延長。
(2)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長
⇒平成32年3月31日まで、2年延長。






16.税務調査において調査官が、修正申告ではなく更正を嫌がる理由はいくつかあるが、その1つが「理由の附記」。

・増額更正する場合は、税目を問わず理由附記が必要。

・裁決で、理由付記が不十分で課税処分が取り消された例もあり。

・理由附記とは【その調査の内容を知らない第三者が理由附記を見ただけで処分の理由がわかる】程度が求められる。



 


17.固定資産論点

1.固定資産の減損
・事業用の固定資産が収益性の低下によって投資額の回収が見込めなくなったこと
・資産の帳簿価額を減額させる
・人員増加に伴いオフィス移転⇒内部造作等を固定資産計上⇒翌期には減損といったケースあり
・税務上は損金不算入⇒売却、除却により解消

2.ソフトウェア
・「市場販売目的」と「自社利用目的」
・将来の収益獲得(費用削減)が確実⇒資産計上、不明⇒費用計上
・税務上は不明な場合も資産計上
・資産計上するためには、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書や、
ソフトウェアの制作現価を集計するためのPJコードを付した管理台帳等の整備が必要
・社内稟議書においては、収益獲得、費用削減効果を定量的、具体的に明らかにし承認を取っておく必要あり

3.資産除去債務
・原状回復工事の見積書を業者へ依頼、これに基づいて計上(原則法or簡便法)
・自社で見積もることができる場合もあるが、証明力が弱い
・ハウスクリーニングは資産除去債務の範囲外
・税務上は見積のため、全額否認















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