2018年11月20日火曜日

11/16 勉強会:消費税軽減税率~飲食できない設備なら意思確認無しで8%~ 他

1.海外金融口座情報の自動的交換が始動

■海外金融口座の自動的情報交換制度とは
外国の金融機関の口座を利用した国際的な脱税及び租税回避に対処するため、
OECDが策定した「共通報告基準」に従い、金融機関が非居住者に係る金融口座情報を税務当局に報告し、
これを各国の税務当局間で互いに提供し合う仕組み。

⇒国税庁は、受領した金融口座情報を国外送金等調書・国外財産調書・財産債務調書や、
独自に収集した情報と併せて分析したうえで、課税・徴収分野で活用する方針。





2.時価評価課税や欠損金の持込制限緩和へ

■連結納税見直しの方向(まだ議論すらされていない)
(現在)連結グループ全体で連結所得、連結税額を計算するという仕組み
(今後)より個別の子会社ごとの計算を尊重+申告、納税も各連結法人が行うことが予想

■組織再編税制との整合性もテーマ
(時価評価)
・組織再編税制:適格要件を満たせば課税繰り延べ
・連結納税:税務簿価1000万円に満たない資産等を除き、原則として連結納税加入時に時価評価
(欠損金引継ぎ要件も両者で異なる)
⇒時価評価も欠損金の引継ぎ要件も緩和の方向で議論される予定(租税回避への対応も同時に検討)

■地方税
・連結納税を適用しない点、現行制度が維持される見通し

■対象子会社
・100%子会社のみを範囲とする点、現行制度が維持される見通し



3.H31.10/1以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A

【第1回】基本編

Q:H31.9/30までに購入した在庫品を10/1以後に販売した場合の消費税率は?
A:仕入は8%、売上は10%で計算

Q:仕入先B社は出荷基準で売上を、当社A社は検収基準で仕入を計上している場合、9/30に出荷されて10/1に検収した商品の消費税率は?
A:8%で計算。仕入先発行の請求書の税率でOK

Q:9月に販売した商品が10月に返品された場合の消費税率は?
A:8%で計算

Q:H31.9/1に向こう1年間の役務提供を行う契約を締結し、対価を前受けした場合の消費税率は?
A:役務の全部を完了する日の税率を適用するので10%。中途解約不能の場合は8%で計算
※役務提供の内容が月ごとに完了し、中途解約可能である場合の取扱いは、次号のQ&Aを参照






4.消費税軽減税率~飲食できない設備なら意思確認無しで8%~

■軽減税率の対象となるものと対象外のもの
・「飲食料品の譲渡」⇒食品表示法に規定する食品(酒類を除く)、人の飲用又は食用に提供されるもの
・「食事の提供」⇒飲食に用いられる設備のある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供

■消費税、軽減税率Q&A
・問41コンビニエンスストアでのイートインスペースでの飲食
⇒店内飲食であれば10%、持ち帰りであれば8%
ホットスナックのように持ち帰りでも店内飲食でも可能な商品は販売時に顧客に対して意思確認を行うなどの方法で軽減税率の対象か否かを判定する事となる。

■現実的に不可能な場合の対応策
・意思確認と掲示
⇒店内飲食可能な店舗において販売時に、「こちらでお召し上がりですか?」等の意思確認。
⇒例えば、「イートインコーナーを利用される場合は申し付け下さい」などの掲示、「飲食はお控えください」等の掲示を行い、実態として飲食させないスペースを明らかにすることがポイント。






5.条件付取得対価返還、会計処理を修正へ

■企業結合に関する会計基準
・条件付取得対価が返還される場合の会計処理を公開草案から修正
→返還対価を取得原価から減額するとともに、のれんを減額又は負ののれんを追加認識
→追加的に認識する又は減額するのれん又は負ののれんは、企業結合日時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は損益として処理する。



6.相続税・財産評価の審理事例をチェック(1)

■小規模宅地等の特例の適用における一棟の建物の範囲(区分所有建物でない場合・区分所有建物である場合)

【小規模宅地等の特例とは】
相続される遺産である宅地の相続税評価を大幅に下げてもらえる。

■概要
・被相続人は配偶者と生計を別にする長男と二世帯住宅に住んでいた。
・被相続人が所有していた宅地については、配偶者と長男がそれぞれ2分の1を取得。
・当該建物に係る被相続人および長男の所有形態、下記の事例によって特定居住用宅地等に該当する部分はどうなるか。
・被相続人所有宅地200㎡
・被相続人及び配偶者の居住用1F(80㎡)、長男の居住用2F(80㎡)

(事例1)建物が区分所有建物でない場合。
被相続人および長男はそれぞれ建物の持ち分2分の1を所有。
⇒配偶者と長男の取得した宅地の全てが特定居住用宅地等に該当する。
建物が、被相続人の親族(生計を一にしているか否かは問わない)が居住用に供していた部分。

(事例2)建物が区分所有建物である場合
被相続人及び長男はそれぞれの専有部分(1階及び2階)の所有権を所有。
⇒配偶者が取得した100㎡のうち、配偶者が取得した持ち分2分の1部分の50㎡が特定居住用宅地等に該当する。
被相続人の居住用に供されていた部分に限られる。






7.法人の無償譲受けに伴う出資増加益に贈与課税

■出資する同族会社が不動産を無償で譲り受けた増加益が贈与税の課税財産に該当するか否かが争われた事案

・請求人は、本件の増加益は不動産を無償で取得したことによる結果としてもたらされたにすぎない等主張し贈与税の課税財産にならないとした

⇒結果として審判所は、無償譲渡によって同族会社に対する出資価額が実際に増加し、対価を支払わないで経済的利益を得たのだから相続税法により増加益は課税財産になるとした



8.消費税改正点 ※参考

1 資本金等の額が1億円を超える大法人等に係る確定申告書等の提出につき,その提出の電子化が義務化
【平成32年4月1日以後に開始する課税期間から適用】

2 収益認識基準に係る国際会計基準の導入に伴い,長期割賦販売等に係る特例(リース譲渡に係る特例を除く)が廃止
【平成30年4月1日から適用】

3 券面のない有価証券の譲渡に係る内外判定基準について,原則として,当該有価証券を取り扱う振替機関等の所在地で判定することとされた
【平成30年4月1日から適用】

4 今般の金の密輸に対応するため,輸入に係る消費税ほ脱に対する罰則を強化することとされた
【平成30年4月10日から適用】

5 農林水産業について,そのみなし仕入率を引き上げることとされた
改正前 70%
改正後 飲食用の売上については80%
【平成31年10月1日の属する課税期間から適用】





輸出代行を利用した輸出免税

Azazonが日本の中小企業の商品輸出支援を行うと発表。

■委託者が輸出免税の適用を受ける場合は
(1)委託者が直接輸出する場合
「輸出許可通知書」等の証明書類を一定期間保存することで受けられる。

(2)委託者が輸出代行業者を通じて輸出する場合
「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」を代行業者に交付することで受けられる。
⇒代行業者が最終の輸出申告者となるため、委託者が代行業者名義の「通知書」をもっていても効力がない。
⇒「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」の交付を受けることで、
委託者は代行業者が輸出者でないことを示す必要あり。
なお代行業者は「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」を確定申告に添付する必要あり。





10.金融庁 企業内容等開示府令の改正案

・有価証券報告書等の記載事項を整理・拡充。
・2020年3月期から適用(一部、2019年3月期から)
・主な改正内容は下記の通り。
・会計上の見積に用いた仮定、不確実性の内容等、経営者の認識を記載する。
・政策保有株式の保有の合理性を開示、また個別開示の対象となる保有銘柄数を30⇒60に拡大。
・監査法人の継続監査機関を開示



11.IFRS16号「リース」の個別論点(少額資産リースと短期リース等)

■少額資産リース
・条件
(1)借手は、資産を単独、または容易に利用できる他の資源と組み合わせて使用することで便益が得られる。
(2)原資産は他の試算への依存性や相互関連性が高くない。
⇒これらを満たした上で、新品の価値が$5,000米ドル以下。

・会計処理
⇒使用権資産とリース負債を認識せず、リースに関する費用をリース期間に渡って定額法等により認識。

■短期リース
・条件
⇒リース期間が12か月以内(購入オプション、延長オプションは除く)。

・会計処理
⇒上記と同様。

■サブリース
・内容
⇒借手と貸手の間にリース(ヘッドリース)が存在している状況で、原資産が当初の借手から第三者にさらにリース(サブリース)される取引

・会計処理
(1)ヘッドリースが短期リースに該当する場合
⇒同様に、賃貸借処理。
(2)(1)以外
⇒元々のヘッドリースの使用権資産を元に処理。



12消費税の仕入税額控除をめぐる実務論点

■マンション販売事業者の件(筆者見解)
・課税仕入れを行った時点における当該事業者の判断が重要視される
・問題となっているいずれのケースでも課税仕入れの時点ですでに住宅としての貸付けが行われており、当該建物から非課税売上げが生じる認識は当然あったはず
⇒以上から、納税者が勝訴するのは難しい

■対応策(筆者見解)
・所轄税務署長の承認を受け、「課税売上割合に準ずる割合」を適用する
・マンション販売事業者においては、
⇒販売用マンションの売却売上に対する(売却までに発生する)居住用建物の賃貸売上は少額であることが多い
 この取引に対して会社全体の課税売上割合適用は実態に則していない
 よって「課税売上割合に準ずる割合」を申請することで解決できる可能性がある





13.IFRS下の四半期会計処理と表示

■四半期会計処理
⇒原則は年次財務諸表と同じ方法
(1)棚卸資産の評価減や減損損失⇒1Qで認識した場合、例えば3Qで見積りが変われば追加計上や戻入可能
(2)税金費用⇒事業年度全体についての予想加重平均税率に基づき認識
(3)季節的な損益⇒見越計上や繰延計上は不可(全額を当該四半期で認識)

■四半期表示
⇒日本基準よりも要求される表示は多い
・株主資本等変動計算書は必要(日本基準では不要)
・連結包括PLは累計&四半期分が必要(日本基準では累計のみ強制) 
・CF計算書は要約CF計算書が必要(JPは関連する注記のみ)




14.IFRS任意適用企業の四半期開示分析Ⅰ・Ⅱ

■新規IFRS任意適用状況
2018年3月期までのIFRS任意適用企業は157社
IFRS任意適用は年度末、第1、2、3四半期のいずれからでも適用できる
⇒年度末および第1四半期以外で任意適用した会社は少数

■IAS34号「期中財務報告」の概要
IAS34号「期中財務報告」では1事業年度よりも短い財務報告期間で財務諸表を開示する場合に適用される
⇒IFRSを任意適用している会社はISA34号を適用して四半期報告書を作成する必要がある。

以下の情報を含んでいなければならない。
①要約財政状態計算書
②純損益及びその他の包括利益を表示する要約計算書
③要約持分変動計算書
④要約キャッシュ・フロー計算書
⑤精選された説明的注記
⇒注記内容は事業年度のものと比べて省略される





15.残業手当を含む年俸額の合意とその有効性

■前提
・高額な年俸を支払っており、労使間で「年俸には残業手当を含む」といことで合意済み
・労使間で36協定を締結済み(時間外労働が月60時間を超える部分については割増賃金の支払いあり)。
⇒上記の条件で社員から時間外割増賃金の請求を受けた場合、支払いをどのように検討するか

■時間外割増賃金の支払いの検討
年俸額のうち、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外割増賃金に当たる部分とを判別できるか否かにより検討
(1)判別できない場合
 時間外割増賃金は一切支払われていないことになる
⇒時間外割増賃金を支払う必要あり(労働基準法37条等の規定に基づき算出)

(2)判別できる場合
 ①「割増賃金に当たる部分の金額>労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額」の場合
 ⇒差額を支払う必要あり
 ②「割増賃金に当たる部分の金額<労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額」の場合
 ⇒別途割増賃金を支払う必要なし



15.契約締結

契約は契約当事者の自由な意思によって成立
口約束で条件を取り決めることも法律上問題ないが、会計処理の証拠書類として位置付けられるほか、
下記のような効果が期待できるため、取引基本契約書を締結することが望ましい。

1.契約成立の有無を明確にする
2.契約の内容、特に権利・義務を明確にする※
3.トラブル発生時に契約内容・条件を立証する

※自社契約書のひな型通りに契約締結出来ない(取引相手が優位な立場にあり、先方の雛型に合わせざるを得ない)ケースでは、
契約内容については顧問弁護士と相談しながら対応することが必要。

取引基本契約書を作成するときは、双方で合意した事項を簡潔明瞭に条文化し、抽象的な表現は極力避けることが重要。
契約書に盛り込む主な事項としては、主に下記がある。

1.取引の対象
2.債権回収条件
3.契約期間
4.契約解除または違約の場合の条件
5.暴力団排除条項


















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