2019年5月9日木曜日

4/19 勉強会:サブスクリプションサービスの税務上の論点 他

1.会計上の見積り項目の注記事項が明らか

・企業会計基準委員会が検討中の会計上の見積りの会計基準では、会計上の見積り項目の注記事項を提案。
・下記を注記することが提案されている。
「識別した会計上の見積り項目」
「会計上の見積りの内容」
「合理的な見積金額」
「将来の財務諸表に及ぼす影響に関する情報」






2.土地の固定資産税評価をめぐる最近の裁判事例

■争点
・土地の地目:固定資産税の税額に影響を与えるため

■商業施設に隣接する調整池の地目は「宅地」か否か
・商業施設を開発するための条件として洪水対策のために設けられた調整池あり
(調整池:大雨の際における洪水を防ぐための受け皿)
・高裁判決が最高裁判決でひっくり返った事例
【高裁】「宅地」と判断
・商業施設の開発行為に調整池の設置等が義務付けられている(開発行為の許可条件)。
・商業施設の維持活用のためには必要不可欠で一体と評価すべき。
【最高裁】原審判決を破棄、差し戻し
・本件隣接池は常時面積の8割以上に水が溜まっている現状あり
・現状を見ずに開発行為の許可条件になっていることだけをみて「宅地」と判断するのはおかしい

■テニスコートとして利用されていた土地の地目は「宅地」か「雑種地」か
・雑種地は宅地の80%相当の価格で評価される
・現況や利用目的に重点を置いて土地全体としての状況を観察すべき(東京地裁)
・本テニスコートは、テニスカレッジのクラブハウスが隣接=宅地として一体評価




3.免税事業者からの値引き提案への対応は

■インボイス制度
・2023年10月1日から導入予定
・課税事業者はインボイス(請求書等に適用税率と税額を記載すること)の発行が義務付けられる
・課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみ仕入税額控除できる
・免税事業者はインボイスを発行できないため、免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除はできなくなる

■問題点
・免税事業者との取引を停止したり、課税事業者になることを強要
⇒独禁法や下請法に抵触するリスク
・免税事業者側からの取引継続目的の値引き提案を受け入れる
⇒買い叩きに該当するリスク
・転嫁対策ガイドラインには、これらのリスクについて何も記載がない




4.拡充された事業承継税制、手続き面も簡素化

法人版の事業承継税制の手続き簡素化(H31年4月1日施行)
①非上場株式等の贈与者が死亡した場合の手続きの簡素化
⇒経営承継期間内(5年以内)に贈与税の納税猶予から相続税の納税猶予の適用に切り替える際の臨時報告書の提出が不要。

②経営承継期間内に自ら認定の取消申請を行う場合の手続きの簡素化
⇒経営承継期間内(5年以内)に取消申請を行う場合は取消申請書のみを提出。取消事由に該当したことを報告する臨時報告を不要。

③特例承継計画提出時における手続きの簡素化
⇒従業員数の確認については特例承継計画に記載されている人数で判断。

④従業員数証明書の追加
⇒添付書類として年金事務所が発行する「被保険者縦覧照会回投票」を追加。






5.配偶者居住権創設で小規模宅地特例は?

■配偶者居住権
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人が所有する建物について、遺産分割によって居住権を取得するものとされた場合又は遺贈の目的とされた場合に配偶者はその居住建物の全部を無償で使用および収益できる権利

■小規模宅地特例
・相続により配偶者が取得する配偶者居住権に基づく敷地利用権は小規模宅地特例の対象になる。
・配偶者以外の相続人等が土地所有権を取得した場合は適用要件を満たせば特例の対象になる。





6.再生計画による弁済期間、最終弁済日まで(再生計画認可の決定時には確定している必要あり)

■事案の概要
・欠損金の繰越控除をめぐり、「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じたか否かが争われた
・国税不服審判所は、「再生計画で定められた弁済期間」とは、再生計画認可の決定時において、再生計画上確定している最終弁済日までの期間をいうものと指摘
・金銭債権に係る最終弁済日は本件事業年度末までに到来しているため、「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じており、欠損金の繰越控除の特例の適用は認められないと判断

■欠損金の繰越控除(特例)
再生手続開始の決定の日の属する事業年度以後の事業年度について、繰越欠損金額の損金算入限度額を増加させる特例あり
⇒「再生計画で定められた弁済期間が満了した」場合、満了の日以後に終了する事業年度については、特例の適用を受けることができない

■再生計画で定められた弁済期間の意義
民事再生法⇒再生計画認可の決定の確定時において、再生計画上確定している最終弁済日までの期間をいう
法人税法施行令⇒規定なし。民事再生法と同様の解釈をするのが妥当。





7.裁判例:退職金の一部前払にかかる源泉徴収

■概要
・一般財団法人Aは理事長Bに対し50Mの貸付金を有していた
・一般社団法人への移行認可を受けるため返済を求めたがBに資力がなかった
・Bは退職金規程を改定し退職金の前借りという形でいったん現金を受け取り返済にあてた。
・会計上の科目は「退職給付資産」で計上していた

■争点
・Bに支払われる現金について源泉徴収は必要となるか(貸付金か賞与か)

■判決
・源泉徴収が必要

■判決要旨
・退職金規程において退職金を担保とした貸付けについて定めた条項が存在しない
・金銭消費貸借契約の存在をうかがわせる客観的証拠がない
・返済の原資となる現金を受け取り、財団へ返金したことにより債務の消滅という利益を得ていることなどからすれば、送金された現金は、将来支払われる予定の退職金の一部が退職前に支払われたと認めることが相当

以上より、Bに支払われる現金は<役員賞与>であり源泉徴収が必要である



8.質疑応答事例のピックアップ

■所得税
Q貸与型奨学金の返済に充てるための給付は非課税所得になるか
A条件付きで非課税となる。
⇒卒業後、県内の企業で2年間勤務する等地方公共団体が条例等で定める要件をみたす場合

Q賃貸用の土地建物を購入した際に支払った仲介手数料は
A購入時に発生した諸経費のため取得価額に算入

■法人税
Q空撮専用のドローンの耐用年数は
A航空機には該当せず、器具備品の「カメラ」に該当し耐用年数は5年

Q役員の子の授業料を法人が一括して支払った場合
A定期同額給与に該当する

Q外貨(月10,000ドル)で支払う役員報酬は定期同額給与に該当するか
A該当する。
定期同額給与の「同額」は円換算した金額まで同額とすることを求めていないため
レートの関係で必ずしも支給額が同額にならなくても問題なし





ポイント制度等と収益認識基準

・(従来の会計処理)将来、ポイントとの交換に要すると見込まれる費用を引当金として計上。
・(新収益認識基準)当該ポイントが「重要な権利」の場合、該当部分の収益を繰り延べ(引当金計上負荷)。

・重要かどうかは、「顧客が通常得られる値引きの範囲を超える値引きを得られるか」等で判断。
・誕生日ポイントや来店ポイントなど、収益に起因しないで提供されるポイントについては、収益の繰り延べではないため、これまで通り引当金計上の要否を判断。
・直接の顧客でない相手に与えるポイント(ECサイトの運営会社が、テナントの顧客に付与するポイント等)も引当金計上の要否を判断。

・法人税は基本的に新収益認識基準に合わせる形になるが、独自の要件もある。
⇒ 「自己発行ポイント等が発行年度ごとに区分して管理されていること」「ポイント等は有効期限が経過したことや違反事項に抵触した場合等を除き、一方的に失わせることができないものであること」「値引き等をする金額が明らかであること」
⇒ 実際は、会計税務の処理を分けることは煩雑になるため、上記の法人税法上の要件も満たす制度設計にすることが望ましい。

・なお、法人税上は、「10年経過したポイント」については益金に算入される。





10.2018年12月期決算会社の改正税効果基準の早期適用の事例

・改正税効果基準は2018年4月1日以降開始する事業年度から強制適用。
⇒2018年3月31日以降終了する事業年度から早期適用可。

・主な改正点は2つ

(1)表示の簡素化
⇒繰延税金資産、繰延税金負債を固定区分へ。

(2)注記の拡充
⇒評価性引当額の内訳に関する事項
 定量的情報:税務上の繰越欠損金に係る部分と将来減算一時差異等に係る部分を区分
 定性的情報:評価性引当額に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載

⇒税務上の繰越欠損金に関する事項
 定量的情報:繰越期限別の数値情報の開示
 定性的情報:重要な繰延税金資産を計上している場合、回収可能と判断した理由





11.第2章 サブスクリプションの会計上の論点

■サブスクリプションビジネスの収益認識
(一括売上と分割売上)
・収益認識基準ではライセンスを①アクセス権と②使用権に区分
⇒常にデザイン面、機能面の改良を合理的に期待されており顧客側も受け入れざるを得ないケースは、製品またはサービスが顧客に移転したと言えない
 よって、アクセス権=一定期間にわたり収益を認識
⇒提供元がライセンスの機能性および価値に著しく影響を与える活動を行わない
 よって、使用権=一時に収益を認識
 例:1年契約のソフトウェアライセンス契約であるが、ソフトウェアが完成しておりアップデートの予定がない
※ただし使用権であってもライセンス期間が長期間の場合等は検討が必要
 



12.サブスクリプションサービスの税務上の論点
■法人税法上の取り扱い
・会計との重要な相違なし(役務完了時に益金算入)
⇒期間に応じた継続的なサービス提供⇒サービス提供期間に応じて益金算入
⇒ライセンス販売を目的とした売切り型⇒一時点で益金算入

■消費税法の取り扱い

・従来通りの取扱い





13.連結決算の異常値を見つける効率的な方法
連結決算のレビューは、作成順序に沿って膨大な計算資料を追いかけるアプローチだけではなく、連結財務諸表数値を分析して、異常値を発見するアプローチも必要である。

■連結パッケージの分析
・数値の整合性分析
・前期比較分析
・基礎資料との照合

■換算手続の分析
・換算レートのチェック

■内部取引消去

・相手先別の残高を確認し、連結グループ会社に対する残高が0になっていることを確認









14.サブスクリプションの特徴

(1)契約形態
・サブスクリプションという呼称を利用していても、その実態が売り切りの契約形態に近いケースもある点に留意が必要。
(例)ソフトウェアの1年ライセンスを毎年販売するような場合、1年菅野売り切りライセンスを結果的に毎年販売することでサブスクリプションモデルと似た形式になる等。

(2)所有権
・サブスクリプションは、使用許諾契約等を締結し、提供側に所有権を留保したまま製品等を利用させる取引
⇒顧客による支配、占有は生じない

・売り切りは、売買契約により顧客に所有権が移転
⇒顧客による支配、占有が生じる
※契約対象がソフトウェア等の著作権法上の著作物に該当する場合
⇒売買契約であっても所有権は移転せず、買い手に専属的な利用許諾権が与えられる契約とされ、支配あるいは占有が生じるという点で変わらない。

(5)収益性の判断
・サブスクリプションは、顧客が利用するインフラへの投資コストに対して定期収入がどれだけ稼げるかで判断
⇒新規顧客の獲得、継続利用者から得られる収入でその全体の回収を図る
・売り切りは、個別の製品のコストに利益を載せる
⇒製品1単位当たりのコストに得られる利益を含めて販売





15.スタートアップを取り巻く環境変化

1.カネが変わった 
・これまでベンチャーへの投資はVCが主に担ってきた。
・昨今は、大企業が主体となって出資するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)がカネをつぎ込んでいる。
・背景には、自己変革ができない大企業の危機感があるとのこと。
・例えば、トヨタは自動車造りの会社から移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」へと再定義したが、そこに足りないパーツをベンチャーから取り込もうとしている。

2.ヒトが変わった
・カネの出し手であるエンジェル投資家の急増
・また大きな成長を遂げたメガベンチャーが、新たな起業家輩出の宝庫になっており、上から下へと人脈の継承が起きている。

3.マインドが変わった
・有名大学を出て旧来の大企業を目指すような若手が、リスクを取ってベンチャーに参加し始めている。






























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