2019年5月19日日曜日

5/10 勉強会:新たな収益認識基準が外食産業に与える影響 他

1.上場子会社の独立社外取締役、元親会社在籍者以外から選任を

経済産業省のコーポレート・ガバナンス・システム研究会が検討している
「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」の概要は下記の通り。

・上場子会社の独立社外取締役については10年以内に親会社に所属していた者を選任しないことを検討するべき。
・取締役会における独立社外取締役の比率については、1/3以上や過半数を目指すことが基本である。





2.新・連結納税制度の欠損金持込制限と時価評価課税

■現行制度:2択(保有期間を基準)
・時価評価課税あり&欠損金持込不可
・時価評価課税なし&欠損金持込可能

■改定案:3択(中間がある組織再編税制との整合を加味)
(判断基準)
A.親子が合併等するとしたら組織再編税制で適格判定されるか
B.支配関係が5年超
C.親子間に共同事業性あり

(それぞれの取扱い)
(1) A×:時価評価課税あり&欠損金持込不可
(2) A〇+BCどちらか1つでも〇:時価評価課税なし&欠損金持込可能
(3) A〇+B×+C×:時価評価課税なし(含み損益の利用制限あり)&欠損金の一部利用制限





3.マンション仕入控除で新たな更正処分

■アズ企画設計
・中古不動産を取得し、賃貸募集、リノベーションを行い、資産価値を高めてから不動産投資家に販売するビジネス
・居住用住宅の建物部分に関しては課のみに区分し、全額控除していた
⇒共通対応にすべきとして、国税局から更正処分を受ける
⇒追徴税額は加算税を含めて1億3千6百万円
⇒同社は、過去の調査で何の指摘もなかったとして不服申し立てを行う方針

・取扱いの統一のため、国税局が今後否認事案を増加させる恐れあり




4.今週の専門用語

■個別申告方式(案)
⇒各連結法人が所得、税額を計算し、申告・納税も各連結法人が行う仕組み。
⇒修正・更生が一部の連結法人で行われた場合に他の全ての連結法人に影響が及ぶという現行連結納税制度の問題点の解消。
 ただし、連結グループ内の損益通算は維持され、欠損金の合計額は各連結法人の所得金額の比により按分される。





5.審判所、過大支払利子税制の適用を容認

■過大支払利子税制とは
関連者純支払利子等の内、調整課税所得の一定割合(50%)を超える部分を損金不算入とする制度ある。

■事例
海外法人が内国法人である納税者の関連者に該当するか否か。
・海外法人からの借入金があった納税者は、借入金にかかる支払利息を損金に算入していたものの、海外法人に対する利息は未払であった。
・海外法人の役員3名は、納税者の役員も兼務。

・課税当局は海外法人が納税者の関連者等に該当すると判断し、支払利息の一部を損金不算入とする課税処分を行った。納税者は兼任していた2人は納税者の経営実務に一切関与していないとして不服とした。

■審判
海外法人は関連者等に該当すると判断。
・役員の2分の1以上を納税者の役員が兼務していること。
・納税者が海外法人の事業方針を実質的に決定できる関係にあったと推測できる。





6.有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用)

■1/31改正開示府令の適用時期と留意点
(1)2019年3月期
・主要な経営指標等の推移
・コーポレート・ガバナンスの概要
・役員の状況
・監査の状況
・監査の状況(監査公認会計士等と同一のネットワークに属する組織に対する報酬等)
・役員の報酬等
・株式保有状況

⇒監査の状況では、新たに監査公認会計士等を選定した理由(選定の際に考慮した方針を含む)について記載する
⇒役員の報酬等では、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)や、それに基づく報酬実績を記載する

(2)2020年3月期 ※早期適用可能
・経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
・事業等のリスク
・経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析
・コーポレート・ガバナンスの概要の概要(財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針)
・監査の状況(監査役及び監査役会の活動状況、継続監査期間等)

■会計基準の改正に係る留意点
(1)税効果会計基準
・注記
繰延税金資産及び負債の主な発生原因の内訳について、重要な繰越欠損金については、他の将来減算一時差異と区分して記載

(2)収益認識会計基準
・会計方針の変更
適用初年度においては会計方針の変更として取り扱い、原則新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首利益剰余金に加減し、期首残高から新たな会計方針を適用することができる

⇒BS科目について、重要な科目に対する影響額について記載する
⇒PL科目について、売上高、売上原価、販管費などのそれぞれについて影響額を記載する





7.適用除外事業者と中小特例の適用関係

■適用除外事業者
資本金1億円以下であるが、過去3事業年度の平均所得金額が15億円を超える法人をいう

■適用関係(○…適用可 ×…適用不可)
・軽減税率 ×
・中小企業技術基盤強化税制 ×
・その他特別税額控除 ×
・特別償却 ×
・一括評価貸倒引当金の法定繰入率の適用 ×
・少額減価償却資産の取得価額の一時損金算入 ×
・交際費課税における中小企業者の定額控除 ○※
・欠損金額の繰戻し還付 ○※
※大法人(資本金5億円以上)の100%子会社である場合は適用不可

■その他論点
・過去3事業年度がない法人(設立4年未満)は適用除外法人とならない
・修正申告等により過去3事業年度の平均所得金額が15億円を超えることと
 なった場合は過去に遡及して適用除外法人となる
⇒既に中小特例を適用している場合には修正申告が必要
・更正の請求等により過去3事業年度の平均所得金額が15億円以下となった場合でも
遡及して税額控除を受けることはできない(当初申告要件のあるものは確定申告時に
別表添付していないと適用不可のため)





8.源泉所得税:新年号に伴う源泉納付書の記載の仕方

改元後においても「平成」が印字された納付書を使用することは可能。
ただし、以下の点に留意すること

■留意箇所
・「平成」が印字されている箇所
⇒二重線による抹消や「令和」の追加記載は不要

・納付書左上の年度欄
⇒31年度を記載すること

■記載例
・納期の特例のケース(平成31年.1月~令和元年.6月)
納期等の区分欄
自3101
至0106

・令和2年1月20に報酬等を支払った場合
年度欄 ⇒ 31年度
支払年月日 ⇒ 020120
納期等の区分 ⇒ 02年02日

なお「令和」が印字された納付書は10月以降に配布を予定





監査人交代の開示

・東京証券取引所が、2019年1月に「会社情報適時開示ガイドブック」を改訂し、監査人の移動理由について実質的な内容を開示することを明確化。
・2019年1月22日~4月21日で監査人交代を適時開示した会社は36社。「任期満了のみ」を理由にした会社は1社もなし。
・事例 大塚家具
「現任監査人から当社の経営環境の変化に伴う監査工数の増大を理由に契約更新を差し控えたいの申し出を受けました。」
・監査人交代に伴う、監査法人規模の変化
 同規模の監査法人への変更:16件
 小規模な監査法人への変更:19件
 大規模な監査法人への変更:1件







10.新リース会計基準開発へ、専門委で検討開始

・基準開発に当たって、4月23日のASBJの審議では、以下を中心に検討
①借手の費用配分のあり方
②国際的な会計基準との整合性を図る程度
③連結F/Sと単体F/Sの関係

・借手の費用配分のあり方と国際的な会計基準との整合性
⇒IFRSとUS-GAAPでは費用配分の方法が異なる。
 IFRS:FL、OLに関わらず、全てのリースを金融の提供ととらえて、使用権資産の減価償却費とリース債務に係る金利費用をそれぞれ認識する単一の会計処理モデルを採用。
 US-GAAP:FLは上記同様。OLは通常均等な単一のリース費用を認識する会計処理モデルを採用。

・・・新基準では、どちらかを採用するか、または一定の基準により使い分けるか、検討中。

・連結F/Sと単体F/Sの関係
⇒単体F/Sの方が、関係諸法規等の利害調整が難しいため、以下の点を考慮して検討
①投資家のニーズ
②実務上のコスト(ex.中小企業、会社法監査のみの企業etc)
③周辺制度に慌与える影響(ex.会社法、法人税法、財務制限条項etc)





11.有価証券報告書の作成上の留意点(平成31年3月期)

■1/31改正開示府令の項目及び適用時期
・主要な経営指標等の推移⇒2019年3月期~
・経営方針、経営環境及び対処すべき課題等⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・事業等のリスク⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・経営者による財政状態、経営成績及びCFの状況の分析⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・CGの概要⇒2019年3月期~
・CGの概要(財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針)⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・役員の状況⇒2019年3月期~
・監査の状況⇒2019年3月期~
・監査の状況(監査役及び監査役会の活動状況、継続監査期間等)⇒2020年3月期~(19年3期早期適用可)
・監査の状況(監査公認会計士等と同一のネットワークに属する組織に対する報酬等)⇒2019年3月期~
・役員の報酬等⇒2019年3月期~
・株式の保有状況⇒2019年3月期~
 



12.不動産賃貸における収益基準の適用
■概要
リース基準が適用されるリース取引は、収益基準から除外される。
ただし、取引によっては、収益基準が適用される。
⇒リース基準の適用対象かどうか、の検討から始める

■賃料・共益費収入
⇒リース基準を適用(特に論点なし)

■水道光熱費収入
リースの概念とは異なるため、収益基準を適用
⇒水光熱の提供が、本人と代理人のどちらの立場で行われるかで、計上方法は異なる

■違約金収入
賃料としての性質があるか、がポイント(あればリース基準)
・解約違約金⇒典型的なケース(残期間の賃料相当の違約金)であれば、リース基準
・破損違約金⇒賃料としての性格ではなく、賃貸人に履行義務もないので、従来慣行に従う

・礼金・敷金・更新料等⇒実務慣行や判例が様々で、実態判断が必要




13.法人税課税改正の実務ポイント

■主な改正点
・研究開発税制
→試験研究費の増減によって、控除額が減少する場合
・中小企業者の対象範囲の見直し
・業績連動役員給与
→報酬委員会または報酬諮問委員会の決議の独立性要件を追加
・組織再編税制見直し
→株式交換後等の後に完全子会社と合併を予定する場合の、適格要件の見直し
→三角合併等の適格要件について、株式対価の要件の見直し






14.事前確定届出給与の注意点

(1)届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合
・事前に支給額が確定したものとは言えないことから、事前確定給与に該当しない。
⇒支給額全額が損金算入できない。

(2)届け出た支給時期と実際の支給時期が異なる場合
・支給額は届出内容と一致していたとしても、支給時期が異なる場合は、支給額全額が損金算入できない。

(3)支給しなかった場合の役員への課税
・届け出た支給額が実際に支給されない場合、支給期到来前に受給辞退の意思表明を証する書面を役員から会社宛に提出した場合には、課税されない。
※参考:所得税基本通達28-10
 給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全額又は一部の受領を辞退した場合には、その他支給時期の到来前に自体の意思を明示して自体したものに限り、課税しないものとする







15.ウーバー・テクノロジーズ

・配車サービス最大手
・今週ニューヨーク証券取引所に上場予定
・IPO価格は仮条件レンジの上限になり得るとのこと
・同社のIPOは最大90億ドル(約9900億円)規模と今年最大で、米史上10位以内に入る規模になる可能性が高い(ブルームバーグの集計データより)
・仮条件44-50ドルで1億8000万株を売却
・IPO価格が50ドルなら、評価額は約840億ドルとなる見込み
・18年12月期の売上高は前期比42%増の112億ドル(1兆2500億円)





16新たな収益認識基準が外食産業に与える影響

新収益認識基準では、顧客との契約から生じる収益に対して適用
➾「顧客との契約」には口頭による約束も含まれるため、飲食サービスの提供(口頭注文➾サービス提供)等も適用対象となる

・いつ収益を計上すべき
外食産業では事前にサービス価格が明示され、サービス提供の都度、対価を受領。
➾対価受領時点でサービス完了となるため、完了時点で収益認識する
➾変更なし

FC(フランチャイズ)の場合、加盟金収入やロイヤリティは注意が必要
➾加盟金がFC契約期間にわたって提供する本部のサポート等に対するものであれば、FC契約期間に渡って計上するか否かの検討が必要
➾ロイヤリティが歩合の場合は、加盟店の売上計上月と同じタイミングでの計上が必要

・いくらで売上計上すべき
無料での割引クーポンは売上代金の割引時に販促費等で処理している場合、売上から減額する処理への変更を検討する必要がある
ポイントに関しての処理にも影響あり
➾自社ポイントが重要な権利(1ポイント=1円値引き等)と判断される場合、売上の繰延を検討する必要がある。
➾他社ポイントを付与している場合、ポイント運営会社のために回収した部分があれば、売上から控除する

・決済手段
ビットコイン等の仮想通貨で決済された場合、当該仮想通貨の時価で収益を計上する必要がある。




























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