2019年5月9日木曜日

4/26 勉強会:有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用) 他

1.一定の投資運用業者は代理人PEならず

・恒久的施設(PE)とは
外国企業が相手国内で事業を行う一定の場所(支店や工場など)。

・PEが必要な理由
 課税の有無を判断するためにPEが必要。
 例えば、日本企業が中国国内にPEを保有しており、発生した収益が中国源泉の収益と認定された場合、
 法人には中国の企業所得税、その業務を行った従業員には個人色税が課税される。

・代理人PEとは
 非居住者又は外国人に対する課税について、課税所得を区分するPEの類型の一つ。
 自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者。

■投資運用会社は代理人PEに該当するか?
金融庁は4月1日付けのPEに係る参考事例集の一部改訂により、
特殊関係者でないLPがファンド出資の10%以上を保有していれば、
投資運用会社は代理人PEとはならない旨を明確化。




2.取締役に報酬決定を再一任しているケースはその旨を記載

■開示の強化
・2019年3月期より、役員報酬決定の枠組みとして以下を開示
(1) 算定方法の決定権者、権限や裁量の範囲
(2) 報酬委員会がある場合にはその位置づけ・構成メンバ
(3) 取締役会・報酬委員会の報酬決定に関する具体的な活動内容など

■取締役に報酬決定を再一任しているケース
例:総会で報酬の総額を決定⇒個別の報酬額は取締役会で決定する旨の決議⇒取締役会で個別の報酬額を社長に一任する旨の決議
⇒このようなケースも、その旨を記載することとされている




3.技術士

・科学技術に関する高度な専門的応用能力を必要とする事項について計画、設計、分析を行う技術者
・国家資格
・科学技術に関する21の各技術部門がある(機械部門、建築部門など)
・登録者数は9万人。うち45%が建築部門の技術者
・二次試験の合格率は約10%



4.建築数量積算報酬は無資格でも源泉対象

建築積算に係る数量精算業務の対価が源泉徴収の対象となった裁判

■事例
・原告会社は建築設計時の概算書の作成等を業務とする法人。
・無資格者に発注した本件業務は、建築積算業務のうち、建築物等の設計図書から建築資材の数量を算出する業務。
・源泉徴収の対象となる「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当しないとして、源泉徴収の対象外であると主張。

■判決
・設計図書から建築資材の数量を算出する数量積算業務は技術士が行う業務であると解釈。
・無資格者に対して発注していた本件業務は技術士が行う業務に相当すると指摘。
よって、源泉徴収の対象になる報酬に該当すると判断。




5.定期保険の損金算入割合を大幅制限へ

・国税庁は一定期間災害保障重視型定期保険をはじめ、高い節税効果が問題視されていた定期保険の損金算入割合を大幅に引き下げる改正通達案を公表した。
⇒生命保険会社各社は2月中旬に国税庁より通知を受けており、すでに法人向け定期保険の販売を停止している。

・例えば、一定期間災害保障重視型定期保険の最高解約返戻率は85%前後のものが多くなっている。
⇒70%超85%以下の場合は今後は損金算入割合は40%となる

・また、一定期間災害保障重視型定期保険の最高解約返戻率が85%を超えると損金算入割合はさらに圧縮される。改正通達は「保険期間開始日から10年を経過する日」までは「最高返戻率×90%」の資産計上を求めている。
仮に、90%だとすると81%(90%×90%)の資産計上が求められ、損金算入できるのは、支払保険料の19%となる。




6.国外送金等調書に係る文書照会→調査の流れ

■国外送金等調書制度の概要
金融機関等を通じて国外へ送金したり、国外からの送金を受領した場合に、金融機関が国外送金等調書を税務署に提出する。対象取引には、ATMを利用した国内・国外口座からの現金引き出しも含まれる。
なお、金額は100万円超(外貨の場合は100万円相当額)が対象

■プライベートバンクへの送金等について
国外送金等調書には、国外送金の相手国名、金融機関名が記載されている。
また、タックスヘイブンやスイスのプライベートバンクへの送金も確認している。

■国外送金等調書に係る文書照会(お尋ね)について
国外送金等調書については所得税申告書等と照合し、照合の結果所得税申告書等と不一致の場合、文書照会による行政指導又は調査による解明が行われる。
国外送金等の年月日が進行年分に係る場合や直ちに課税関係が生じないと想定される場合は、翌事業年度以後に申告書等との照合を行う「継続管理資料」として管理される。

■文書照会に回答しなかった場合、督促は行われるか
未回答者に対し書面による提出督促は行われず、電話による回答の提出確認が行われる。
なお、課税当局は未回答者に対しては調査による接触を検討するとしている。

■調査が行われる場合、実地調査となるのか
事案に応じて調査等の分担が行われ、個人課税部門、資産課税部門において実地調査が行われる。
また、調査対象税目・調査対象期間に係る申告書に税務代理権限証書が添付されている場合、課税当局は税務代理人に対しても説明する必要がある。






7.軽減税率と飲食設備における合意

■飲食設備がある場合
原則として店内飲食か持ち帰りか「意思確認(双方が合意)」を
する必要がある。
店内飲食⇒10%
持ち帰り⇒8%

■公園のベンチ等を利用する場合
双方の<合意>にもとづいて設備が利用されるものではないため
原則として軽減税率8%が適用される。

ただし、<合意>には黙示的なものを含むため、たとえば店側が
メニューやおしぼりをテーブルに設置する場合には実態が<飲食設備>
となり、軽減税率は適用されないこととなる。




8.法人税:受取配当等の益金不算入額の過大計上に注意

受取配当等に係る法人税の申告にあたり、
益金不算入額を過大に計上しているケースが発生している

特に下記(4)に該当する区分を(3)に区分して申告するケースが多く、
税務調査でも必ず確認されるため要注意

■ポイント
株式の保有割合に応じた「株式等の区分」を必ず確認すること

(1)完全子法人株式等
保有割合:100%
益金不算入額:受取配当等×100%

(2)関連法人株式等
保有割合:1/3超~100%未満
益金不算入額:受取配当等△負債の利子

(3)その他の株式等
保有割合:5%~1/3以下
益金不算入額:受取配当等×50%

(4)非支配目的株式等
保有割合:5%以下
益金不算入額:受取配当等×20%

なお(3)のその他の株式等は、
(1),(2),(4)のいずれにも該当しない株式等にあたるため注意すること。






ITに関する重要な虚偽表示リスクのQ&A案

・日本公認会計士協会が発表。
・ERPやクラウドサービスが利用されている際の監査人の留意点等を示す。
・ERP
 ⇒ 内部統制に関して、事前にシステム化された統制機能が組み込まれているケースがある。
 ⇒ ERPによってその程度は異なるので留意が必要。
 ⇒ 会社が当初想定された使い方を異なる使い方をしており、統制機能がうまく働かないケースも。
・クラウドサービス
 ⇒ 市販の簡易なパッケージソフトとして評価を行わないように注意。
 ⇒ 例1)会計システムの管理者権限を社外でベンダーが保有する場合は、不適切なアクセスのリスクに対する内部統制を把握する。
 ⇒ 例2)データのバックアップ体制について、ベンダーとの契約内容で十分にリスク対応されているかを検討する。






10.有価証券報告書 作成上の留意点(平成31年3月期提出用)

■2019年3月期から適用
【主要な経営指標等の推移】
・「最近5年間の株主総利回り」の推移を、「提出会社が選択する株価指数における最近5年間の総利回り」と比較して記載。
・「最高株価」と「最低株価」を記載。

【コーポレートガバナンスの概要】
・「コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方」を記載。
・「企業統治の体制の概要」に機関の名称・目的・権限・構成の氏名を記載。

【役員の状況】
・社外役員の、会社との人的・資本的関係を記載。
・社外役員、監査役監査・会計監査・内部統制の連携等を記載。

【監査の状況】
・「内部監査及び監査役監査の状況」、「会計監査の状況」、「監査報酬の内容等」を記載。

【役員の報酬等】
・報酬プログラムの説明

■参考
・有報は和暦でも西暦でも記載可能。




11.用語から読み解く収益認識会計基準 開示

■企業会計基準29号「収益認識に関する会計基準」が示す開示に関する用語
(契約資産)
・企業が顧客に移転した財またはサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(債権は除く)
 契約資産は、例えば契約のなかの別の履行義務を充足しなければ債権とはならず、信用リスクだけではなく履行リスクにも晒される
 ※「債権」=上記のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)であり意味合いが異なる。
⇒契約資産は金銭債権として取り扱い、BSに区分表示または注記しなければならない。

(履行義務を充足する通常の時点)
・収益を認識する通常の時点であり、例えば、商品等の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時をいう。
⇒基準80項では、下記を注記することとされている。
 (1)企業の主要な事業における主な履行義務の内容
 (2)企業が履行義務を充足する通常の時点

 



12.統合報告書の活用方法

■投資家目線
・いかに積極的に、明瞭なメッセージを伝えようとする姿勢があるかを感じ取る
・経営の時間スパンを感じ取る

■会社目線
・公表して終わりではなく、外部の反応を経営へフィードバックして活かす
・非財務情報の保証を追及する (財務情報と違い、開示のルールは発展途上)




13.非財務情報開示ガイダンスの特徴と企業への影響

■有価証券報告書の記載内容の見直し
・非財務情報開示の拡充の一環で、有価証券報告書の記載内容が見直された。
・2019年1月に「企業内容等の開示に関する内閣府令」を改正
⇒「記述情報の開示に関する原則」を公表

以下、有価証券報告書の見直し内容と対応時期(3月決算を想定)
■2019年3月期
・ガバナンスの情報の拡充
⇒役員報酬、政策保有株式等
■2020年3月期
・記述情報の記載の充実
⇒経営戦略、経営者による経営成績の分析(MD&A)、リスク情報等
・監査関係情報の拡充
⇒監査役会等の活動状況、監査人の継続監査期間等

■2021年3月期
・KAMの全面適用
⇒監査報告書の記載内容の充実(監査上の主要な検討事項等)








14.投資信託の時価評価

■公開草案
・2019年1月18日、「時価の算定に関する会計基準(案)」が公表された。
※当案は、範囲に含まれる時価をどのように算定すべきかを定めるもので、どのような場合に時価で算定すべきかに関しては、他の会計基準に従うとされている。
・公開草案では、2020年4月1日以後開始する年度の期首からの適用が提案されている。

■投資信託の時価評価への影響
・上記案の公表に伴い、「金融商品会計実務指針62、266、267項」「金融商品会計基準82項」の定めは削除される改正案が公表
⇒公開草案のベースでは、概ね1年をかけて検討を行うこととし、当面の時価評価については現行の取扱いが踏襲されるものと考えられる。







15.今年上場した銘柄の現在

・現在24社がIPOしているが、うち10銘柄は初値を上回っており、残りは下回っている状況
・公開価格を時価が下回っている銘柄が4銘柄(※)あり。
(※)KHC(1451・マザ)、コプロ・ホールディングス(7059・マザ)、NATTY SWANKY(7674・マザ)、東名(4439・マザ)の4銘柄
・株価の推移が上場後堅調な銘柄は識学(7049・マザ)、リックソフト(4429・マザ)、スマレジ(4431・マザ)





























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