1.海外出向者に係る現物給与課税
・海外出向者の子供が現地で通う日本人学校の授業料、通学費用を
会社が負担した場合
→現物給与として給与課税される
学校に通うための費用は個人が負担すべきもののため
・現物給与課税される場合、日本で源泉徴収が必要かどうか
→出向者の出国時における出向期間による
1年未満の場合…日本で源泉徴収が必要
1年以上の場合…日本で源泉徴収不要
・出向期間が1年以上で、
支給される給与について日本で源泉徴収が必要になる場合
→出向期間中に国内において行う勤務があったとき
2.循環取引を巡る裁決、税務上の取扱いはどうなる?
■審判所の判断
①架空取引によって得た現金や売掛金を益金の額に算入するかどうか
架空取引により得た「現金」が無償により得た資産なので、「無償による資産の譲受け」に該当するため益金の額に算入する必要がある
②重加算税の賦課対象となるか
事実の隠ぺいと仮装があったかによる
ある場合:重加算税の対象になる
→青色申告の承認の取消要件にも該当
「事実の隠ぺい」とは、課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実を隠したり脱漏することを言う
「事実の仮装」とは、所得、財産、取引上の名義などについて、それがあたかも事実であるかのように装うこと、故意に事実をわい曲することを言う
3.遺贈による登録免許税は法定相続人の負担
■事例
Aさん(被相続人)の遺言に従い、Aさん名義の土地を財団法人に贈与
土地の名義変更に係る登録免許税は誰の負担になるか
■判決
登録免許税は法定相続人が負担するべき
■理由
①遺言執行費用は法定財産の負担とする規程がある
…土地以外のAさんの財産から執行費用は支払うべき
⇒法定相続人が負担するべき
②Aさんの遺言では財団法人の負担とするべき意思がない
4.上場時の四半期連結P/Lは現行通りに
・企業内容等開示布令が8月20日に公布・施行
→新規上場時の有価証券届出書に掲げる財務諸表の年数が2事業年度分に短縮
※従来は5事業年度分
→非上場会社が初めて提出する有価証券届出書にIFRSに準拠した連結財務諸表を掲げる場合、最近連結会計年度分のみの記載で足りる
→四半期連結B/Sを掲げた場合には四半期連結P/Lも合わせて掲げる
5.福祉車両の非課税措置悪用事例が横行
身体障害者用物品を譲渡した場合消費税は課されないので、一部の税理士の間で「節税」のひとつとして租税回避行為が行われている。
※身体障害者用物品とは電動車いすや特殊寝台、車いすの設置に伴う改造費など、障害者にとってかかせないもので厚労省の指定をうけたもの
⇒改造費のみならず車両本体価格もあわせて非課税となる
具体例
通常の車両に手でアクセルペダルを操作できる手動装置をつけて(改造して)売った
改造した場合
⇒本体価格100万円+改造費10万円 計110万円
∴消費税はかからない
改造しない場合
⇒本体価格100万円+消費税
8万円 計108万円
∴8万円の消費税が課される
改造して売った場合、2万円高く売れているが消費税は課されない。
高級車であればあるほど消費税の差額は多くなる
税務当局は平成27年度税制改正案として、改造部分のみ非課税対象とし、車の本体部分については非課税対象から外すことを検討している。
6.役員給与の業績悪化改定事由、裁判所の着眼点が明らかに
【事例】
・A社(業績堅調)→ <手数料売上> → B社(債務超過)→ <借入返済>
※A社、B社の代表者は共にX氏
・銀行から、A社における代表者Xの役員報酬を減らし、その分、B社の返済原資である手数料売上を増やすようにと指導を受けた
⇒役員報酬の減額は、「業績悪化改定事由」に該当するか
【判決】
・該当しない
・A社に業績悪化の事実なし
⇒A社、B社が実質同一企業であり、銀行からの強い要請のもと行われた減額改定であっても、あくまでも自社(A社)に業績悪化の事実がなければ該当しない
⇒現在、控訴中
7.連結納税適用の場合の地方法人税に係る税効果の取扱いを明らかに
企業会計基準委員会は、平成26年度の地方法人税法の施行を踏まえ、「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」などの見直しに入った。
改正案の概要
・連結納税制度を適用している場合、地方法人税の課税標準である基準法人税額は、連結事業年度の連結所得の金額から計算した法人税の額。
・地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断は個別所得見積額だけでなく、他の連結納税会社の個別所得見積額も考慮。
・連結納税制度を適用した場合の地方法人税に係る税効果会計の考え方は、法人税と同様の取扱い。
・よって、連結納税主体の連結財務諸表において地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性は、連結納税主体を一体として判断する.
8.所得拡大促進税制 設立初年度の取り扱い
■適用要件(原則)
①基準年度の給与等支給額に比し当期の支給額が2%以上増加
②当期の支給額が前期の支給額以上
③当期の平均支給額が前期の平均支給額超
☆設立初年度は
(1)基準年度がない
(2)前期がないため特例がある。
■設立1期目の取り扱い
①基準年度の給与等支給額を当期の支給額の70%とする。
基準年度70 当期100 →30/70=0.42≧2%
②前年度の給与等支給額はゼロとする。
③前期の平均支給額はゼロ、当期の平均支給額は1とする
よって、設立1期目は給与等の支給があれば必ず適用ありとなる。
9.消費税:任意の中間申告
H26/4(個人はH27/1)から、消費税の中間申告、納付義務の無い法人も任意で中間申告ができることになった。
留意点は以下のとおり。
•任意の中間申告をする場合は、課税期間開始後6月以内に届出を提出する。
•届出を提出すると、税務署から前年実績による中間申告書と納付書が送られてくる
•通常の中間申告では申告書を提出しなくても前年実績による申告があったものと見做されるため納付だけすれば良いが、任意の中間申告では提出が必須。納付のみを行うと、過誤納扱いされる。
•年1回のみ
10.税効果会計の注記
税効果会計の注記
・DTA・DTLの発生原因と内訳
・法定実効税率と税引前当期純利益に対する法人税等の比率との間に差異がある場合の原因と内訳
・税率変更によりDTA・DTLの金額が修正された場合、その旨と修正額
・決算日後に法人税率等の変更があった場合、その内容と影響
拡充が検討されている内容
※IFRSや米国基準が要求する開示事項のうち、有用と思われるものを取り込む予定
①定性的な情報開示
②DTAの認識の根拠
③DTAを認識していない一時差異の額
④DTAを認識していない税務上の繰越欠損金
11.ヤフー事件・IBM事件の捉え方と今後の対応
1. 概要
①ヤフー事件
適格合併かつ欠損引継ぎ可能となるように、形式的要件を満たす様なスキームを取った。
⇒租税回避行為だとして、国側は否認を主張 ⇒ 国側勝訴
②IBM事件
・100%子会社の株式を子会社に取得させ、譲渡損失を計上し、損金算入
・加えて、受取配当金を益金不算入とした。
・さらに、連結納税制度により、欠損金の引き継ぎを行った
⇒租税回避行為だとして、国側は否認を主張 ⇒ 国側敗訴
2. 今後の対応
ヤフー事件とIBM事件ともに、租税回避行為として国は否認を主張
⇒ヤフーは国側勝訴、IBMは国側敗訴と結果が異なる
⇒違いは、事業目的があっても、否認できるか否か(法132条と132の2条の違い)
⇒形式的要件に合うように、後付けで事実を作り出すスキームは否認されるリスク
⇒条文の趣旨から解釈を行うという対応がより求められる。
12.外貨建取引等に関する会計~為替変動リスクに対処する施策
・体制の構築
-外貨建資産負債の残高を把握する管理体制を構築
-為替相場が変動することによりどれほどの影響があるのかについて把握し、定期的に取締役会に報告するなど
・施策
-為替予約の利用
-ヘッジ会計の適用など
-在外子会社化
-現地においてビジネスを完結
13.DD口座「企業活動の骨組みの分析」
・ビジネスサイクルアプローチ
⇒内部統制評価の為の業務プロセス機能分析を活用して分析する手法。
・バリューチェーンアプローチ
⇒取引先も含めた包括的な企業活動分析手法。
開発、公告宣伝→調達→加工→流通→販売→アフターサービス
・経営資源アプローチ
⇒企業が保有する経営資源を
「ひと、もの、かね、システム、知財等」に分けて分析する手法。
ひと
:年齢、職能、給与水準、収益対比等
もの
:固定資産、棚卸資産等
かね
:預金、借入金、有価証券、保険等
システム :IT技術
知財
:特許権、商標権
14.議決権種類株式スキームを用いた上場事例(サイバーダイン社)
・サイバーダイン社が東証マザーズに上場
・創業者の保有割合は約43%
・ただし普通株式の10倍の議決権を有するB種類株式を保有するスキームにより議決権ベースで約88%
⇒日本発。米国ではグーグルやフェイスブック等にIT企業、
ニューヨークタイムス等のメディア企業が採用
【サイバーダイン社の普通株と種類株の相違点】
・1単:普通株100株、種類株10株
・譲渡制限:普通株なし、種類株あり
・取得請求権(※1)・取得条項(※2):普通株なし、種類株あり
・種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定め:普通株あり(※3)、種類株なし
(※1)取得請求権は種類株主が保有するス類株式を普通株式に転換する権利
(※2)取得条項は一定の事由が生じたことを条件として種類株式を普通株式に転換するもの
(※3)ある種類株主に損害が生じる恐れがある時は、当該種類株主を構成員とした
当該種類株主総会の決議が必要(原則)
ただし例外として、ある種類株主総会決議を要しない旨を定款に定めることも可能。
15.エビリファイ特許切れ 大塚HDが示す処方箋
・エビリファイは、大塚製薬にとって会社全体の売上の3分の1を占める薬(抗精神病薬)
・15年12月、大塚製薬のエビリファイが特許切れになる。
→後発薬の価格は格安。一気に売上が減るおそれも
・大塚製薬の株価は8/26に5カ年中期経営計画を発表後急上昇。
①既にエビリファイの特許切れは織込み済
②会社の事業計画が堅実
→エビリファイによる減収、それに伴う研究開発費等のコストカットが説得力ある形で示されている
③増配も発表
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決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
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