1.診療報酬の会計処理を巡り税理士が一部敗訴した事件
■まとめ
・保険診療の窓口収入の理論値と実際に乖離があった場合、申告業務の委託を受けた税理士が確認すること
①理論値を使うことに問題はない
②委託者に理論値と実際の窓口収入に乖離があること、理論値と実際のどちらを使うかで税金計算が異なることを通知する
→どうするのか委託者の意向を確認する
③乖離している原因を究明する
・税金計算を間違えたことを理由にして、委託者と税理士の間に債務不履行が成立するわけではない
2.教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置に関するQ&A
■制度おさらい
・直系尊属から教育資金のために資金を一括贈与した場合の非課税枠
・最大1,500万円まで非課税
※うち、学校以外に支払う場合の非課税枠は500万円まで
・受け取る側は30歳未満まで
■制度適用時の流れ
①贈与時
・金融機関に「教育資金専用口座」を開設
・「教育資金非課税申告書」を金融機関へ提出
②30歳になるまで
・随時教育機関へ支払った領収書を金融機関へ提出
・領収書に基づいて口座から払い出し(立替精算のようなもの)
③30歳になった時
・口座残額を精算⇒残額は贈与税の対象
■Q&A(文科省)抜粋
①部活動の費用は非課税の対象
※個人で専門店で購入した「グローブ」「バット」は対象外
②500万円の非課税枠に含まれるもの
学習塾や習い事の月謝、自動車学校、各種資格試験の受験料等
③学校への寄付金は非課税の対象外
④金融機関への提出書類
領収書以外にも、振込完了画面や口座引落しの事実が解る書類でも可
基本は原本の提出となるが、場合によってコピー可
3.投資家要件厳格化など、プロ向けファンドを見直しへ
■プロ向けファンドの仕組みを悪用し投資家に被害を与えるケースがある
金融庁は販売可能な投資家を見直す政令案を5月に公表
→新たなファンドの組成が困難などの反対意見を受け、改正が先送り
→今年末までに一定の報告書をまとめる予定
■プロ向けファンド、現行制度の問題点
・49名以内であれば投資の素人にも販売可能
・販売時の書面交付義務なし
・説明義務などの行為規制が課せられていない
・販売業者は行政処分の対象になっていない
4.士業の必要経費をめぐる問題で国税不服審判所が注目判断
【所得税】事業所得の必要経費
(1)売上原価
(2)販管費
-業務に直接関係がある
-業務の遂行上通常必要である
⇒業務に『直接』関係があることが必須要件か??
【事例①】(高裁判決確定/上告不受理)
・弁護士が弁護士会の役員として支出した懇親会費用
⇒必要経費に該当
【事例②】(審判所判断)
・司法書士がが支出したロータリークラブの会費
⇒必要経費に該当しない
【ポイント】
・①、②とも業務に『直接』関係は認められない
・①は、弁護士会は強制入会制度となっており、その役員が懇親会費用を負担するという義務的な実情あり
・②は、ロータリークラブへの入会は任意であり、司法書士としての義務と直接関係しない
・今後も、『業務との直接関係』が必要経費の要件
・ただし、個別事案ごとに例外判断はあり得る
5.家電リサイクル法料金も経過措置対象に
消費税が10%に引き上げされる(予定)ことに伴い8%引き上げ時と同様に、10%へ引上げの際も経過措置取引がある。
税率 :10%(国税7.8%、地方税2.2%)
施工日:H27年10月1日(予定)
指定日:H27年 4月1日
・8%引き上げ時の主な経過措置取引
旅客運賃(定期代)、電気料金、工事の請負等、予約販売に係る書籍等、資産の貸付け、役務提供など
⇒10%引き上げ時も経過措置の対象となる。
(指定日までに契約等していることなど)
・リサイクル料金の経過措置(10%引き上げ時の新たな経過措置)
(例)
H27.9.29にリサイクル料を領収し、
H27.10.1以降に廃家電を引渡し ∴8%適用
6.所得税改革、給与所得控除もターゲット
政府税制調査会が個人所得課税の全体の見直しを行う方針をたてた
主な見直しとなる論点
・配偶者控除
・給与所得控除
・公的年金等の控除
年金については、H26年度税制改正大綱の検討事項。
配偶者控除等の控除見直しは、H28年度税制改正の課題。
7.税恩典利益異なれば比較可能性なし
(事例)
大手自動車会社(以下、A社)が新興国に所在する子会社等(以下、B社)と行った取引
の対価が独立企業間取引価格に満たないとして、移転価格税制の適用を受けた。
(A社の主張)
これに対し、A社は「B社は自由貿易地域内にあり、税恩典を受けていたにも関わらず、税務当局が独立企業間取引価格を算定する際、比較対象法人として同地域以外で事業活動を行う法人を選定した上、税恩典利益相当分の差異調整を行わなかった」ことを問題視
(裁判所の判断)
裁判所は、「同様に、税恩典利益を享受している法人を比較対象法人として選定しない限り、B社の比較対象として不適切である」と判断し、A社の主張を受け入れ、課税処分を取消
本事例のように比較対象法人のデータが少ない新興国等では比較対象法人の選定が困難になる可能性あり
8.企業結合の暫定的会計処理で四半期財規
企業結合に係る四半期会計基準の改正を踏まえた四半期連結財規等が平成26年9月30日に公布・施行
(改正内容)
①企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合、その確定した四半期会計期間等において、その旨の注記が必要
②暫定的な会計処理が確定したことに伴い、四半期財務諸表等に含まれる 比較情報において取得原価の配分額の重要な見直しを反映させている場合、その見直しの内容及び金額の注記が必要
(適用時期)
平成27年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から適用(早期適用可)
9.IPOの状況(~2014年9月末時点)
①上場承認数
42社(前年同期比10社増)
②主幹事証券推移(括弧内は前年同期)
野村証券 16社(15社)
大和証券 11社(5社)
SMBC日興証券 4社(2社)
みずほ証券 4社(4社)
SBI証券 4社(2社)
大和証券が大幅層
③監査法人推移
トーマツ 19社(18社)
あずさ 14社(6社)
新日本 8社(3社)
トーマツは微減 あずさが大幅増
④市場推移
東証1・2部 11社(9社)
マザーズ 22社(14社)
ジャスダック 8社(8社)
マザーズが大幅増
10.所得税:相続税取得費加算の特例改正について
■相続税の取得費加算(現行)
相続で取得した資産を一定期間内に譲渡した場合、相続税の一部を取得費(譲渡原価)に加算することができる特例。
土地を譲渡した場合には、「当該土地以外の土地にかかる相続税」についても取得費に加算できる。
■改正
上記の「当該土地以外の土地にかかる相続税」が「当該土地にかかる相続税」に改正される。
平成27年1月1日以後の相続で取得した土地について適用となる。
■事例
①相続人甲の取得した資産(課税価格) 4億円
(内訳:A土地1億、B土地2億、土地以外1億)
②相続税額 2億円
③A土地を3億で譲渡
④A土地の取得価額は不明
<改正前>
(1)取得費 3億×5%(概算経費)=0.15億
(2)取得費加算 相続税2億円×3億※/4億=1.5億
※A土地1億+B土地2億=3億
(3)計1.65億
<改正後>
(1)取得費 3億×5%(概算経費)=0.15億
(2)取得費加算 相続税2億円×1億※/4億=0.5億
※A土地1億
(3)計0.65億
11.所得税:ロータリークラブの会費等は必要経費に算入できないとした事例 (審判所)
■経緯
・司法書士業を営むAは、ロータリークラブの入会金&会費を事業所得の必要経費に算入して所得税の確定申告を行った。
・税務署は入会金&会費の必要経費への算入を認めず、所得税の更正処分を行った。
・Aはこれを不服として国税不服審判所に審査請求をした。
■審判所の判断
・税務署の主張を認めた。
・必要経費に算入される支出は、
①業務と関連があるほか、
②業務と直接関係があり、
③業務上不可欠なもの
に限られる、というのが審判所の判断理由。
※③は厳しいような・・・払った方がいいかもしれない程度の支出はダメなの??
12.減価償却方法の統一
・固定資産のDep方法を定率法から定額法に変更している事例が増加
・親会社及び子会社が採用する会計方針は原則として統一する必要がある。
※ただし、固定資産のDep方法は事務処理の経済性等を考慮し、必ずしも統一を要しない(監査実務指針第56号)。
・事業セグメントごとに償却方法を統一することが望ましい
※実務上の取り扱いとして事業場単位でのDep方法の選択も認められている。
(事例)第一工業製薬
四日市事業所:定率法、滋賀事業所:定額法
・法人税法も事業所ごとにDep方法を選定することが出来る(法令51条①)
13.新設分割・吸収分割と株式譲渡
事例①
・A社がB社に一部事業を新設分割
・同日にB社の株式をC社に売却
問題:取引実行日においてC社はB社の設立登記の完了を確認出来ないままB社株式を取得することになる。B社設立未了又は設立瑕疵のリスクがある
解決:B社を事前に設立しておけばリスク回避できる。
但し、設立から時間が経過しているとB社を調査するコストが発生する。
14.借入金をヘッジ対象とした金利スワップのヘッジ会計
①金利スワップ取引後にヘッジ会計の適用
⇒ 以下の要件を満たせば、ヘッジ会計の適用は可能
(1) ヘッジ対象とヘッジの有効性の評価方法が文書化
(2) リスクの管理方針に従っている。
※ただし、ヘッジ会計適用までの、ヘッジ手段の時価変動は損益計上
②特例処理を適用していたが、一部繰り上げ返済した場合の取り扱い
⇒ 特例処理の適用を続けることは出来ないが、繰延ヘッジの適用は可能
※特例処理を継続できない理由 ⇒ 特例処理適用の要件(6要件)を満たさなくなるため
※繰延ヘッジは適用できる理由 ⇒ 上記①の理由と同様
15.株式譲渡と株券交付の要否
・株式譲渡時に株券が発行されていない場合、株券を交付してもらう必要があるか。
①定款に株券発行すると記載
⇒ 株券を発行してもらう必要がある。
※株券発行会社でも、非公開会社ならば、株主の請求があるまで発行する義務はなし
⇒ 請求し、株券を発行、交付してもらう必要がある。
②定款に株券発行しないと記載
⇒ 株券を発行してもらう必要なし
③株券発行の記載が定款にない
⇒ 株券発行会社と同様の取り扱いになる。
16.公開草案「未実現損失に係る繰延税金資産の認識」の解説
(論点)
・IAS12号「法人所得税」の適用の明確化
(負債性金融商品の未実現損失に係る税効果)
IFRS…負債性金融商品※を公正価値で評価。
公正価値の下落部分について税法の取得原価評価と異なることから、税効果を認識
→ 繰延税金資産を計上
ただし、現状のIAS12号だと、見解や実務に多様性がある
当該、多様性のある論点に対処するため強制的なガイダンスにおいて論点を明確化
⇒当該負債性金融商品の未実現損失に係る税効果の整理を契機に一般的な繰延税金資
産の認識に対しても明確化が図られる
※負債性金融商品:資産側に計上される社債、国債など
17.グローバル税務業務の特徴と問題
■間接税(日本:消費税、欧州VAT、米国SUT等)の特徴
①国によって制度が大きく変わる
例)イギリスのVATは生活必需品は無税、その他は原則20%
②改正頻度が高い
例)インドでは毎年税率変更、ブラジルは種類が多い
③複雑なせいどへの対応が求められる
例)EUの三角取引では立場(仲介者、売手、買手)により課税関係・申告国が決定
⇒簡素化規程で申告義務が免除となるが、EU加盟国によって適用条件が異なる
■間接税の具体的な問題
①プロフェッショナルファームへの委託定数料増加
②システム改修費用の増加
例)システム設定の変更、システム間プログラムの変更
③不適切な税率適用による過大/過少申告
例)適切な税率が分からない場合に最も高い税率を採用する等
④税務を担当する部員の業務量の増大
例)改正内容のキャッチアップ、対応
18.使える補助金・助成金vol.2 補助金と助成金の違い
【助成金】
・(受給時期)後払い
・(要件)条件を満たせばもらえる
・(金額)数十万~100万円
・(募集時期)通年
【補助金】
・(受給時期)後払い
・(要件)高倍率 優秀な提案のみ採用
・(金額)数百万~数億円
・(募集時期)年1回
※受給後も資料の整理、会計検査院の検査など
《オマケ》経営革新等支援機関の支援を受けた会社のメリット
1.専門家が事業計画策定を支援
2.創業補助金制度
(前回の勉強会で取り上げました)
3.経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額の特別控除
設備投資に当って、30%特別償却もしくは7%税額控除
4.融資が有利になる
・保証料率引下げ
(信用保証協会:保証料率▲0.2%)
・日本公庫、商工中金:基準利率から最大▲0.6%
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