2014年10月5日日曜日

10/3 勉強会:簡易課税制度の事業区分の事例 他

1.土地等の低額譲渡を認定、関係法人への寄附金と判断

■土地等の譲渡まとめ
 ・土地等の譲渡は時価で行う
 ・時価よりも低額で譲渡された場合は、時価-譲渡対価が寄付金となる
 ・土壌汚染されている土地の時価は、本来の時価-土壌汚染対策費となる

■減価償却費まとめ
 ・購入した減価償却資産は一度資産計上し、決算で償却費として費用処理して損金とするのが原則
 ・使用できる科目を償却費に限定することは、会計処理の実情に即さないので、他の科目を使用することもできる(基本通達で範囲を限定して例示)

 ※新規で取得した減価償却資産の取得価額を修繕費処理した場合
  基本通達で例示しているものの範囲から外れているため、償却費として損金経理した金額にならず、全額損金不算入となる


2.税務調査で「繰延税金資産」に注目

■「繰延税金資産を計上しなかったこと」によって租税回避の意図があると疑われることも!
大きな繰越欠損金があるにも関わらず、繰延税金資産が未計上

⇒法人が繰延欠損金を損金算入できるかどうか確信を持てなかったと考えられる

⇒行為計算否認規定の適用の可否の判定で不利になる可能性有り
 ※特に同族会社等、組織再編成に係る行為又は計算の否認で注意


3.社員食堂の食事代で経済的利益を認定

【ケース】
①外部業者に給食業務を委託(材料購入~管理、調理)
②食券代を従業員から給料から天引き
③外部業者に代金を払う
⇒外部業者に支払った代金と食券代の差額が経済的利益に認定

【経済的利益の供与にならない範囲】
①調理の場合…材料費を従業員から徴収
②購入の場合…購入価格を従業員から徴収

※半額以上を従業員から徴収かつ会社負担3,500円以内の場合、例外あり

【問題点】
①外部業者の請求書に「食事代」と記載
 …材料費ではない。材料の購入明細や在庫を貰っていなかった
②「食事代」以外に「副食代」「業務委託費」も別途支払
 …大きな範囲で見ると「材料費」以外の対価の支払いをしている
 …調理ではなく購入に該当すると判定

→回避するためには
・請求書の摘要欄を「材料費」にしてもらう…在庫状況も管理
・本当に「調理部分」のみを委託…給食のおばさん化


4.持分の定めのない医療法人の課税関係

持分の定めのない基金拠出型の社団医療法人の特徴
※基金拠出型・・・基金に拠出された財産の返還義務のあるもの

・資本等を有しない法人に該当
・交際費課税
 ⇒(期末総資産 - 期末総負債 - 当期利益)×60% 1億円以下であれば、800万円の損金算入枠を使える
・中小企業投資促進税制
 ⇒従業員数1,000人以下であれば、適用可能
・貸倒引当金繰入、欠損金の繰越控除
 ⇒中小企業(資本金1億円以下)と同様の取扱い


5.勤務税理士への賠償命令、高裁も認める

【事例】
納税者が、受任者の申告ミスについて、会計事務所の所長税理士だけでなく、勤務税理士に対しても税賠訴訟を提起したというもの

【東京地裁】
・勤務税理士について、注意義務違反を認定
・所長税理士について、納税者との間に契約関係があり、また履行補助者とした勤務税理士が注意義務違反をしたことから、債務不履行を理由に損害賠償を命令
・勤務税理士について、納税者との間に契約関係は認められないものの、税理士としての注意義務を違反したことにより過失を肯定できることから、納税者に対する不法行為を理由に損害賠償を命令
 ↓
勤務税理士は、
・納税者から申告義務を受任した所長税理士とは異なり、勤務税理士は納税者との間に契約関係が認められないため、納税者に対して注意義務を負わない。
・勤務税理士は所長税理士の単なる履行補助者にすぎないため、個人的な責任は生じ得ないと主張し、高裁に控訴
 ↓
【高裁】
・勤務税理士について、納税者との間に契約関係が認められなくても、申告を担当する税理士である以上、納税者に対して注意義務を負っている。
・勤務税理士について、税理士という公的な資格に基づいて申告に関与している以上、所長税理士の単なる履行補助者にすぎないという理屈は通じず、個人的な責任も生じ得る。
と指摘し、東京地裁の判決を支持した。


6.簡易課税制度の事業区分の事例

■デパート内にあるテナントの事業区分について
1.テナントが仕入れた商品を消費者へ販売のつど、定価の10%をデパートへ支払う契約
 ⇒仕入商品の消費者への販売であるため第2種事業に該当

2.テナントが仕入れた商品を消費者へ販売のつど、デパートがテナントから定価10%引きの価格で商品を買い取る契約の場合
 ⇒テナントの販売員が消費者へ販売しているが、いったんデパートへ販売へ販売しているため第1種事業に該当

3.委託契約により、デパートが仕入れた商品をテナントが販売のつど、定価の10%の手数料をテナントに支払う契約の場合
 ⇒委託販売手数料であるため第4種事業に該当

■歯科技工所の事業区分について
納税者が主張していた「製造業」を容認し、「サービス業」としてみなし仕入れ率とした更正処分を取消
⇒裁判長は有形物を製造していることは明らかなため、「実態」から判断をして容認をした

しかし控訴審では歯科技工所は「サービス業」として第5種事業に該当と逆転判決

理由がTKCの経営指標によると、歯科技工士の課税仕入れの構成比が42%であるため、サービス業に該当と判断をした。

TKCの経営指標を根拠に判断されるのは不思議である。
(その後の最高裁への上告は棄却され結審された)


7.法定実効税率の取り扱いに注意

地方法人税法及び地方税税法等の一部を改正する法律(地方税法等改正法)が平成26101日から施行されることから、平成26101日以後開始事業年度の法定実効税率の算式が変更されるので注意。

(外形標準適用法人 東京都23区の場合)
法人税率25.5%×(1+住民税率16.3%+地方法人税4.4%)+事業税4.66%+地方法人特別税2.898% / 1+事業税率4.66%+地方法人特別税2.898

=法定実効税率 35.64

各種税率の変更や地方法人税が新設されているが、住民税率の引き下げと地方法人税の税率が一致しているため、法定実効税率には原則として影響はない。


8.法人税:賃借建物の原状回復費用/内部造作の無償譲渡について

■建物の賃借時に差し入れた敷金を退去時の原状回復のための費用に充当する場合
(原状回復費用見積額 500 賃借期間5年とする)
会計:敷金償却100/敷金100
税務:別表4で加算調整100
※法人税法上、原状回復費用は実際に退去し、その額が確定したときに損金算入となる。

■原状回復をせず、内部造作を家主に無償譲渡する場合
借主:除却損/資産
 ・時価はゼロと考える。
 ・廃棄が目的であり、家主に利益を供与する意図なし
 ・寄付金認定なし

家主:資産/受贈益
 ・居抜きの状態で高い家賃で貸せるため、家主は経済的価値を認識
※寄付金⇔受贈益が対応しないケース

(筆者見解)
ゴミとして捨てたものは、捨てた人にとっては無価値であるが、拾って使おうとする人には価値がある。よって当事者の認識により時価が異なることがあってよい。


9.法人税:政治パーティー券の購入費用は接待飲食費か寄付金か

接待飲食費:50%は損金算入可能
寄附金:損金算入限度額の枠内で全額損金算入可能

政治パーティー券の購入費用はどっち?
→飲食を伴う懇親目的のパーティーであれば、『接待飲食費』に該当する。

※パーティー券の購入だけを行い、パーティーに参加しない様なケースでは『寄付金』に該当する。


10.包括利益計算書の形式

・「2計算書方式」と「1計算書方式」の選択適用
・2計算書方式
 当期純利益を表示する『連結損益計算書』と包括利益を表示する『連結包括利益計算書』の2つの計算書で表示する形式

・1計算書方式
 当期純利益と包括利益を単一の計算書(連結損益及び包括利益計算書) に表示する形式

・上場会社の9割超が2計算書方式


11.引当金計上に関する留意点

1.引当金計上の4要件
 ①将来の費用・損失
 ②当期以前の事象に起因 ⇒ 今回のKey Point
 ③見積もり可能
 ④発生可能性高い

2.事例に基づく判定基準の整理
 ①不利な契約締結による将来の損失
  当期以前の不利な契約締結が要因 ⇒ 引当計上可能
 ②不採算事業撤退までの損失
  すぐに撤退すれば損失回避 ⇒ 損失発生の要因は将来に撤退すること
   ⇒ 引当計上不可
 ③中途解約による移転損失
  中途解約するのは将来 ⇒ 引当金計上不可
 ④震災による移転に係る費用
  (1) 震災の影響と直接的な因果関係が明らか ⇒ 引当金計上可能
  (2) 震災の影響と直接的な因果関係が不明 ⇒ 損失の発生は将来移転することに起因
   ⇒ 引当金計上不可


12.引当金に関する会計

適切な見積もりは大事だが、それよりもチェック機能を充実させることが重要(内部統制等)
→将来の損失に備えた引当金計上額自体を減らすための仕組みづくり
→発生原因を把握し、経営に役立てる

Ex.
貸倒引当金 → 与信管理方法の見直し
製品保証引当金 → 自社製品の品質の見直し


13.M&A法務入門(買主候補者が売主に提出する最終提案書について)

・買収金額をズバリと記載する必要がある
・入札の場合、代金の支払方法や時期は競合者を意識して慎重に検討
・最終契約書案を添付することが多い


14.使える補助金・助成金vol.1 創業促進補助金

・補助金(返す必要がないお金)のほとんどが、「一定の雇用」が条件だが、この補助金は雇用がなくても対象となる。

【内容】
・創業に係る費用(※)を2/3、国が補助(上限200万)
※店舗借入費、設備費等

【要件】
①新商品・サービスを提供する創業(概ね創業1年以内)
②「認定経営革新等支援機関」の支援を受けている
※事業承継も可

【応募】
・毎年2月末~6月末に応募

26年は、9,242件応募 3,124件が交付決定








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