2014年10月19日日曜日

10/17 勉強会:法人税:接待飲食費の範囲 他

1.取得費加算特例の説明は相続税申告業務の対象外

■まとめ
・相続人と相続税に関する業務委任契約をした税理士の業務範囲は相続に関することのみ

・相続人が相続により取得した財産につき、その後一定期間内に譲渡した場合に利用することができる取得費加算特例についての説明義務はない
 …所得税に関することなので、相続人は自己の責任において申告納付を行う必要がある(または別途契約を締結する)

・取得費加算の特例
 相続により取得した財産を相続後3年以内に譲渡した場合、譲渡対価から控除することができる取得費にその財産にかかる部分の相続税を加算することができる制度
 …取得費が大きくなるので譲渡所得を圧縮することができる


2.債権流動化の会計処理で企業側逆転勝訴

■債権流動化における劣後受益権の収益配当金の会計処理
・納税者の会計処理
⇒住宅ローン債権の流動化取引(信託譲渡)により、信託銀行より優先受益権と劣後受益権を受領
⇒優先受益権は売却、劣後受益権のみ保有
⇒劣後受益権の収益配当金について、償却原価法(※参照)により元本相当額は収益に計上しなかった
※「受取利息」に相当する「A:買入金銭債権利息額」と「元本の回収」に相当する「B:買入金銭債権償還額」とに区分し、Aを収益計上、Bは収益計上しない会計処理
※金融商品会計に関する実務指針105項適用

・税務当局の主張=配当金全額を収益計上すべき

■裁判結果
・東京地裁=税務当局が勝訴
・高裁=納税者が逆転勝訴
105項の会計処理にて計上したことが、取引の経済的実態からみて合理的である場合には、105項を類推適用した場合と同様の会計処理をすることは法人税法上も正当なものとして是認すべき


3.敷金つき賃貸アパートの贈与

⇒敷金分の精算があるかどうかで計算が異なる
■事例
 父親所有のアパートを息子に贈与
  アパート:取引価格 1,000万円
        相続税評価額 500万円
        敷金 200万円

■贈与税の計算
①敷金分の精算を行う場合(200万円の現金を渡す場合)
 …相続税評価額で計算する

・贈与税額
 500万円+(現金贈与200万円-敷金200万円)-基礎控除110万=390万円
 390万円×税率20%-控除額25万円=53万円

②敷金分の精算を行わない場合
 …土地や建物の場合、負担付き贈与に該当し取引価格で計算する

・贈与税額
 1,000万円-敷金200万円-基礎控除110万円=690万円
 690万円×税率40%-控除額125万円=151万円
※父親も敷金200万円分の譲渡所得を贈与時に認識する

⇒課税価格(390万円、690万円)が大きく異なってくる
⇒課税価格が多額になると、税率も高くなるため注意


4.改正消費税法の経過措置政令を読み解く

H27.10.1(施行日)から消費税10%へ改正された場合の経過措置
⇒基本的に、消費税8%へ改正されたときと同様
⇒指定日は、H27.4.1

【留意事項】
①リサイクル料金(新たに規定)
・施行日前に代金領収、施行日後に廃家電を引渡し ⇒ 8%

②灯油の供給(新たに規定)
H27.10.31までに料金確定 ⇒ 8%
※電気料金等と同様

③有料老人ホームへの終身入居契約
H25.10.1H27.3.31までに契約、入居期間中の介護サービス費用を全額一時金払い、事業者から一時金の額の変更を求めることができる定めがない、実施日前に入居
 ⇒ 8%

④予約販売(定期購読 ※雑誌は除く)の書籍
8%改正時の指定日(H25.10.1)前に予約、8%改正時の施行日(H26.4.1)前に代金領収
 ⇒ 5%

10%改正時の指定日前に予約、10%改正時の施行日前に代金領収
 ⇒ 8%


5.在外子会社の会計処理の見直しは2項目

実務対応報告第18号「連結財務諸表における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」の見直しに着手 

【見直し内容】
今回見直しが行われるのは、以下2項目
①国会計基準のASU2014-02(非公開会社におけるのれんの会計処理)を適用する場合への対応の明示。
 米国会計基準では、原則としてのれんは償却しないが、新設されたASU2014-02号によると、非公開会社についてはのれんを償却することもできる。
 そこで、実務対応報告第18号では、ASU2014-02号を適用する初年度の期首に存在するのれんについて、連結上の残存償却年数を継続するか、又はASU2014-02号に基づいて在外子会社において採用している償却年数を連結上でも用いるかは、企業の個々の状況に応じて判断する旨を示す方向。

②「少数株主損益の会計処理」を修正項目から削除
 平成25913日公表の改正企業結合会計基準等において、IFRS及び米国会計基準と同様の取扱いが定められ、修正項目として列挙する必要がなくなったため、削除する予定

【適用及び経過措置】
 平成2741日以後開始する連結会計年度に係る連結財務諸表から適用される予定
(ただし、早期適用可)
また、経過的な取扱いは定めない方向


6.納税猶予判定で当局の損益計算を認めず

■事例
納税者が事業につき著しい損失を受けたことに伴い、納税猶予を受けるための4号事実要件に該当するか否か

()納税猶予を受けるための4号事実とは、著しい損失を受けた場合に猶予対象期間の損益計算額が、対象期間の利益金額の2分の1を超えて損失が生じた場合。

■主張
原処分庁は対象期間の損益計算の算定にあたり、現実的に支出を伴う仕入や外注費等のみで算定した。
⇒算定の結果、利益金額の2分の1を超えないため、4号事実に該当せず、納税猶予は認めない主張

■論点
支出を伴わない期首期末の棚卸高や減価償却費は、損益計算に含めずに算定してよいか 

■結論
審判所の判断は、納税猶予の算定にあたっても、
一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に照らして計算する指摘
⇒棚卸高は売上原価、減価償却費は費用に含めて損益計算した結果、利益金額の2分の1を超えるため、4号事実に該当する。
 
 その他の納税猶予要件(納付困難等)もすべて満たしていたため、原処分庁の猶予不許可処分を取り消した


7.IPOの状況(20141016日時点)

①初値騰落率
「初値>公開価格」の企業数:28/38
最高:342.1% ㈱イグニス(スマホ向けネイティブアプリ開発)
最低:-20.4% ㈱リボミック(創薬系)
平均:76.5%

PER(対公開価格)
最高:2976.47 ㈱リアルワールド(クラウドサービス運営) 
最低:-113.64 ㈱リボミック

PBR(対公開価格)
最高:68.74  ㈱リボミック
最低:0.27 ポバール興業㈱(製造業)

④本社所在地の分布
東京都:31/44社 70.5% 
(平成25年通期 31/54社 57.4%

今期は一層東京都への一極集中が進んでいる。


8.法人税判例 移転価格税制

■概要
自動車メーカーH社はブラジルの子会社Aとの間で行った国外関連取引につき、移転価格税制に基づき一定額を加算調整して申告したが、当局により加算不足を指摘され更正処分を受けた。
なお、A社は関税等が優遇されるマナウス自由貿易地域内に所在する。

■争点
⇒「独立企業間価格」算定の際のサンプル会社抽出について
(独立企業間価格が低すぎるのではないか?)

H社⇒マナウス自由貿易地域内の会社を基に算定
当局⇒ブラジル国内の自動車企業8社で算定

■判決(東京地裁)
自由貿易地域内で税恩典利益を受けている場合には、比較対象はその地域内にある会社でなければ比較可能性を有しないとして当局の主張を退けた。


9.法人税:接待飲食費の範囲

■接待飲食費に含むもの
•得意先等を接待した[飲食費]
•テーブルチャージ
•飲食のための会場代
•得意先等への差し入れ[弁当代]
•飲食した飲食店等で提供の[お土産代]

■接待飲食費に含まれないもの
•送迎費
•パーティに伴う宿泊費

■出向者の取り扱い(社内飲食費の判断)
•自社からグループ会社に出向している者を接待する為の飲食費は、その出向者が出向先の立場で参加している場合には社内飲食費に該当せず、接待飲食費として取り扱うことができる。


10.連結納税適用時の税効果

・地方法人税の創設⇒DTAの回収可能性に注意
法人住民税(地方税)⇒個社ごとに会社区分を分類
地方法人税(国税) ⇒親子一体で会社区分を分類

個社と連結とで会社区分が異なる場合、DTAの金額が変更になる
⇒法人住民税の一部(法人税割の4.4%相当額)が地方法人税に組み替えられる
 従来、法人住民税(個社ごとに会社区分を分類)であったものが、地方法人税(親子一体で会社区分を分類)になるので、DTAが変わる可能性あり
⇒ただし、影響は軽微。
 ※よって注記も不要


11.連結財務諸表に関する会計①~作成過程等に着目しグループ経営に活かす施策

(復習)連結財務諸表の作成手順
・投資と資本の相殺消去
・債権と債務の相殺消去
・連結会社相互間の取引高の消去
・未実現損益の消去

(経営管理上のポイント)
・留意事項
 -未実現損益の消去もれ
 -のれんの減損もれ(単体では子会社株式の評価)
・施策 → 内部統制の充実
 -子から親への報告体制の充実、吸い上げ機能の強化
 -子の経営企画機能の充実


12.DDの最終契約書について

契約締結から取引実行までに発生する事象に対応する為、規定を定める必要がある。

・買主 
⇒価値評価に誤りや不正確な点があった場合、代金を減額調整できるようにしたい等

・売主 
⇒代金の分割払いや、事後的な減額調整は避けたい等


13.未だ経営破たんしていないが、リスクの高い会社のデューデリジェンスのポイント

①過去のキャッシュ・フローを作成し、資金面から経営実態を把握する。
⇒例えば棚卸資産がどれくらい積みあがって、営業キャッシュ・フローに影響を及ぼしているか

②稼働率を高く維持してきたことにより、工場の生産コスト(人件費・外注費含む)も含めて、実質的に固定費になっている
⇒受注には季節変動があり、ピークに合わせて人員を確保しているため、固定費が増大

③長年に渡り特定顧客からの受注に依存し、新規営業が弱い
⇒特定業界の特定商品の生産ノウハウのみ、マーケティング力の欠陥

④商品開発、生産技術開発力も弱い。
⇒創業者が十分な経営資源(不動産含む)を残した結果、後継者がリスクにチャレンジする機会がなく、イノベーション力が落ちる。


14.債務超過会社の合併を会社分割により解消する場合の株主の税務

1. 事例解説
 X社と甲氏でそれぞれ70%30%の株式を保有する債務超過の会社であるY社からY1社を会社分割(新設)し、Y1社をX社が100%支配、Y社を甲氏が100%保有する。

2. スキーム
 ①Y社を按分型会社分割(※1)し、Y1社を新設
   X社 Y1株式70%取得 ⇒ Y株式70%Y1株式70%保有
   甲氏 Y1株式30%取得 ⇒ Y株式30%Y1株式30%保有
 ②X社がY株式70%を甲氏に譲渡、甲氏がX社にY1株式30%を譲渡

(※1)分割前の株式数の割合に応じて、分割後の株式が交付される会社分割

3. Y1株式の取得原価の算出
 分割前Y株式の取得原価×移転割合(※2

(※2)移転割合=分割前の移転資産・負債の帳簿価額÷分割前の純資産の帳簿価額
(※) 分子>分母となる場合の移転割合は1とする。

4. Y1社の株主(X社)の課税関係
①分割後のY社もY1社も債務超過となるように資産・負債を配分
⇒ 移転割合の分子がマイナス
⇒ 分子のマイナスはゼロとみなす
⇒ Y1株式の取得原価はゼロ 
⇒ Y株式の取得原価は変動なし
⇒ Y株式の取得原価が譲渡損となる。

Y1社は資産超過となるように資産・負債を配分
⇒ 移転割合の分子(プラス)>分母(マイナス)のため、移転割合は1
⇒ Y1株式の取得原価は分割前のY社株式の取得原価
⇒ Y社株式の取得原価はゼロ
⇒ 譲渡しても、損益は生じない。

5. 結論
移転資産・負債の内容によって、株主に大きな影響を与えるため、留意が必要


15.使える補助金・助成金vol.3 補助金の探し方

①「補助金総覧」を読む
※毎年8月に発行
※補助金の名称、金額等が収録されている
※募集時期、詳しい内容は記載されておらず、別途調べる必要あり

②中小企業基盤整備機構のサイトをチェック
※情報が遅い場合あり 募集期間切れのケースも


③各官庁、地方公共団体のサイトを頻繁にチェック








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