1.税務署内での面接は「実地調査」に該当せず
・実地の調査の場合は、事前通知が必要
⇒納税義務者の支配・管理する事業所や事務所等に臨場して質問検査等を行うものを実地の調査という
⇒実地の調査の場合、事前通知がないと税務署職員は質問検査等を行うことができない
・納税義務者を税務署に呼び出した場合、事前通知が必要か
⇒不要
⇒税務署内での面接においては、調査であることを示した文書を事前に送付し、面接の開始時に調査であることを明確に説明すればよい
2.中小企業者等の固定資産税の設備投資減税について
■制度概要
経営力向上設備(仮称) のうち一定の機械装置について
⇒取得から3年間、固定資産税を2分の1に軽減する制度
⇒固定資産税は課税標準額×税率1.4%、これが半分になる
■適用時期
「中小企業等経営強化法(仮称)」の施行日から平成31年3月31日までの間に取得したもの
⇒法律自体は平成28年7月ごろの施行を目指している
■適用対象法人等
・資本金1億円以下の法人
・資本有しない場合、または個人の場合は従業員1,000人以下の法人・個人
ただし、以下に該当すると対象外
・資本金1億円超の会社1社に1/2以上保有されている法人
・資本金1億円超の会社2社以上で2/3以上保有されている法人
■経営力向上設備
・法律に規定される「経営力向上計画」を策定し、事業所管大臣の認定を受けた設備
⇒ある程度の事務負担が想定される
■設備の内の"一定の"の要件
・生産性向上設備のA類型(先端設備)の要件とほぼ同じ
1. 販売開始から10年以内
2. 旧モデル比で1%以上生産性向上
⇒工業会による確認が必要
3. 1台(基)160万円以上
・新品のみが対象で中古は対象外
3.28年度改正で株式交換・移転税制が緩和
■株式交換・移転税制における「特定役員継続要件」について
(現行法)
・共同事業を営むための株式移転や株式交換においては、株式交換完全子法人の特定役員のいずれかが当該株式交換に伴って退任
⇒非適格
(28年度税制改正)
・特定役員の全てが退任しない限り非適格とならない
⇒適格
■適格株式交換・移転により親法人が取得する株主50人以上の子法人株式の取得価額について
(現行法)
・株式交換等の直前の簿価純資産価額
(28年度税制改正)
・「子法人の直前の申告における簿価純資産価額」をベースに、資本金等の額、利益積立金額の出入りだけ調整
4.国別報告書等未提出は30万円以下の罰金
■平成28年度税制改正
…移転価格税制に係る文書化制度が改正(厳格化)される
文書化の実効性を担保するため、
国別報告書やマスターファイルの提出をしなかった場合の罰則が導入。
⇒未提出の場合は「30万円以下の罰金」となる。
延滞税のように期間に応じて重くなったりするようなことはない。
5.特定役員とは?
■特定役員とは
社長・副社長・専務取締役・常務取締役の他、「これらに準ずる者」で「法人の経営に従事している者」
■「これらに準ずる者」とは
常務取締役以上の者と同等に「経営の中枢に参画している者」
■使用人兼務役員・社外取締役は?
「経営の中枢に参画している者」とは言えず、特定役員に該当しない
■常務執行役員などの肩書(取締役ではない)で、経営の中枢に参画している場合は?
特定役員に該当し得る。
6.住宅用地の評価ミスめぐり過納付相当額の賠償を命じる
■概要
(1)Aが「住宅用地の特例適用」の土地を所有
(2)×1年~×5年まで、特例適用された通知額を基に納税
(3)×6年~×10年までは、特例適用されていない通知額を基に納税
(4)A死亡により土地を相続したBに対し、×11年についても特例適用されていない税額で通知
(5)Bは損害賠償請求をした
※「住宅用地の特例適用」とは、住宅家屋の敷地は、固定資産税の課税標準が通常の6分の1に軽減される特例。
■判決
・土地に何かしらの客観的状況の変化なし
・特例適用しない納税額を通知したことに合理的な理由がない
⇒都税事務所側に職務上の過失があったとし、国家賠償法上違法であると判断した。
ただし、上記(2)と(3)の納税額の差が異常に増額となったことにつき、死亡したAは課税明細書で適正でないことを判断できたと想定できるので、全額損害賠償とならず、損害額の1割を過失相殺した。
7.つまみ申告に対する重加算税取消し裁決
・「つまみ申告」(意図的に所得金額の一部のみを過少申告する行為)
・過去の最高裁判決から、以下を満たせば所得税の重加算税を賦課できることに
-当初から所得を過少申告することを意図
-その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした
-実際にその意図に基づく過少申告をした
【審判所事例】(重加算税が課されるかどうか)
・電気工事業者Aが、売上の集計金額を手書きしたメモを破棄
・売上金額を過小に申告
⇒Aは取引先から売上が記載された支払内容確認書を毎月受け取っており、 メモを破棄したのは単に保存する必要がなかったから
⇒メモの破棄は「過小申告の意図をうかがい得る特段の行動」には該当せず
⇒重加算税は課されない
8.消費税:国外の建設工事の内外判定等
■Q
・A社は国内ゼネコンの下請け会社(国内企業)である。
・国内ゼネコンから中国での工場建設を受注したケースで、
(1)建設材料については現地の関連会社へ販売する
(2)その後現地で建設作業を行う
この場合の消費税の内外判定等はどうなるか?
■A
(1)について
⇒国外への輸出に該当するため輸出免税取引となる
(本邦からの輸出として行われる資産の譲渡等)
(2)について
⇒役務提供は役務の提供地で内外判定を行う。建設作業は中国で行うため国外取引となる。
なお、発注者が国内の法人であっても内外判定には影響しない。
9.マイナンバー:個人番号記載ない書類への税務署窓口対応
■記載の無い書類の有効性
⇒マイナンバーの記載がない書類が税務署に提出された場合でも、有効な書類として収受される。
■記載が無い場合の窓口職員の対応
⇒従来は記載を求めることとしていたが、空欄でも記載は求めない方向で統一された。
※理由
現行法では記載が必要な書類でも、改正によりH29年1月1日以後は記載不要になる書類が多い。
改正適用時の混乱を避けるため、敢えて一律に記載は求めないこととした。
10.上場契約違約金
・東京証券取引所では、上場会社に対するペナルティ措置として「上場契約違約金」の支払を求めることがある
・違約金徴求の要件
1.適時開示違反
2.企業行動規範の「遵守すべき事項」に違反
3.有価証券上場規程その他の規則に違反したと東証が認める場合
⇒違約金は960万円から9,120万円。
⇒従来は一率1,000万円だった。
⇒時価総額に連動するように変更。
⇒年間上場料の20倍となった。
時価総額5,000億円超の東証1部上場企業の場合、年間上場料が456万円なので、違約金は20倍の9,120万円となる。
11.DTAの回収可能性に関する適用指針の適用初年度の留意点
1.適用年度
・平成28年4月1日以降開始する事業年度、連結会計年度
※早期適用も可能
2.会計処理等
(1)会計方針の変更として取り扱うケース
・分類2の企業で、スケジューリング不能なDTAを回収可能とする場合
・分類3の企業で、5年を超えるスケジューリングされたDTAが回収可能とする場合
・分類4の企業で、将来5年を超える期間で安定的な課税所得が生じるとする場合
※会計方針の変更に該当する場合、過去に遡って修正する必要がある。
※会計方針の変更とする理由は、新たな情報を得たことによる見積もりの変更ではないため。
(2)会計方針の変更に該当する場合の、適用初年度の会計処理
・期首のDTAを再計算し、前期末計上との差額を調整する。
⇒ 法人税等調整額となるDTAは利益剰余金を加減
⇒ 評価差額等に計上されるDTAは、評価・換算差額等を加減
(3)会計方針の変更等に該当する場合の、適用初年度の注記
・利益剰余金、または評価・換算差額等に対する影響額を注記
12.企業分類、タックス・プランニングに関する留意点
※この記事では、以下の通り定義します。
一時差異 =将来減算一時差異
調整前課税所得=将来減算一時差異と将来加算一時差異を調整する前の課税所得
■基準
監査委員会報告66号廃止 ⇒ 企業会計基準適用指針26号
■企業の分類ごとの取扱い ⇒ 条件が具体的に。
分類1 ⇒ スケジューリング不能な一時差異も含めすべて回収可能性あり
(いずれも満たすこと)
・過去(3年)+当期:一時差異を十分に上回る課税所得が発生見込
・近い将来に経営環境に著しい経営環境の変化が見込まれない。
分類2 ⇒ スケジューリング可能な一時差異はすべて回収可能性あり
(いずれも満たすこと)
・過去(3年)+当期:臨時的な原因により生じたものを除く課税所得 < 期末の一時差異
・近い将来に経営環境に著しい経営環境の変化が見込まれない。
・過去(3年)+当期:いずれの期も重要な税務上の欠損金が生じていない
分類3 ⇒ 回収可能性概ね5年見積り
(いずれも満たすこと)
・過去(3年)+当期:臨時的な原因により生じたものを除く課税所得 … 大きく増減
・過去(3年)+当期:いずれの期も重要な税務上の欠損金が生じていない
(該当しないこと)
・過去(3年)+当期:重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実ありor当期末に見込あり
分類4 ⇒ 回収可能性1年見積り
(いずれかに該当すること+翌期において調整前課税所得が生じること)
・過去(3年)又は当期:重要な税務上の欠損金が生じている
・過去(3年)+当期:重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実ありor当期末に見込あり
(分類が引き上げられる場合)
・分類2へ
当期災害による損失で重要な税務上の繰越欠損金が発生する見込
将来の調整前課税所得を見積もった場合に、将来5年超にわたり安定的に調整前課税所得が生じること
(合理的な根拠をもって説明することが必要)
・分類3へ
過去、業績の悪化に伴い重要な繰越欠損金が発生
当期業績の回復が見込まれ、その状況が将来も継続することが見込まれる場合
概ね3年から5年程度調整前課税所得が生じること
(合理的な根拠をもって説明することが必要)
分類5 ⇒ 回収可能性なし
(いずれもみたす場合)
・過去(3年)+当期:すべての期で重要な税務上の欠損金が発生
・翌期:重要な税務上の欠損金が発生
13.(回収可能性適用指針)将来減算一時差異の取扱い
1固定資産の減損損失に係るもの
・償却資産
⇒スケジューリング可能な一時差異として取り扱う
・非償却資産
⇒売却等に係る意思決定又は実施計画等がない場合、スケジューリング不可能な一時差異として取り扱う
2役員退職慰労引当金に係るもの
・スケジューリングが行われている場合
⇒スケジューリングの結果に基づきDTAの回収可能性を判断
・スケジューリングが行われていない場合
⇒スケジューリング不能な将来減算一時差異として取り扱う
14.CGコードとグループ経営における取組
■経営理念から業務執行まで、”一貫性”のある経営が出来ているか
・「経営戦略-あるべき姿-戦略-行動計画-日々の仕事」といった”一貫性”
・「社長-取締役-部長-課長-社員-顧客」といった組織の”一貫性”
→失敗事例の多くは”一貫性”のなさに起因
■経営環境変化に対応できる”柔軟性”のある体制・仕組を整備しているか
・従来のやりかたに固執しない姿勢が重要
・新しいあるべき姿が設定されれば、そのあるべき姿に応じた戦略-行動計画-日々の仕事が見直されるべき
15.日銀がマイナス金利を導入
・2016年2月16日以降、民間銀行が新規に日銀に預金を預ける場合、0.1%の金利を「支払う」ことになる。
・上記決定を受け、新発10年物国債利回りは一時0.09%に急低下(債券価格は上昇)し、初めて0.1%の節目を下回った。
・民間銀行は調達コストに当たる預金金利を引き下げへ。
⇒ソニー銀行は普通預金金利を0.02%から0.001%へ。
・住宅ローンも一段の引き下げへ。
16.ブックビルディング方式
・株式の公開価格の決定方法には、ブックビルディング方式(※1)と入札方式(※2)がある。
(※1)主幹事証券会社が需要を積み上げたうえで、総需要、株式市況等を総合的に勘案した公開価格の算定方式
(※2)一般投資家による入札結果に基づき公開価格が決定
(1)導入経緯
⇒入札方式では、価格が高くなりやすく上場後株価が下落する等の弊害がいわれてきたため。
(2)概要
・以下のプロセスを経て行われる。
・仮条件の決定
⇒主幹事証券会社が類似会社比準方式や純資産価格方式等で算出した価格と、発行会社の事業状況等を勘案して、発行会社と協議の上、決定
↓
・機関投資家への提示
⇒主幹事証券会社の要請のもと引受証券会社各社が仮条件を機関投資家に提示
↓
・ブックビルディングの実施
⇒主幹事証券会社が各引受証券各社の集計した需要をまとめる
↓
・公開価格の決定
⇒主幹事証券会社が発行会社と協議の上、総需要等を総合的に勘案し、公開価格を決定
(3)特徴
・上場後の流通市場まで勘案した需要の積み上げによるため、投資家の信頼を高めることができる。
・機関投資家が仮条件による需要の積上げに参加するため、市場の適正化・活性化が期待できる。
・引受証券会社が自ら主体的に公開価格の決定に関与するため、上場後における株式の流通に対し活性化が期待できる。
17.今週の新規上場会社
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