2019年7月23日火曜日

7/18 勉強会:新連結納税制度・グループ調整計算の行方 他

1.和解金に係る源泉税負担を巡り会社勝訴

・会社は元役員に対し、未払役員報酬請求訴訟の和解金1億5千万円を支払った。
・税務署は、和解金を役員給与(賞与)と認定し、源泉税約6千万円の納税処分を行った。
・会社は、源泉税を納付したうえで、源泉税の支払を元役員に対して求める訴訟を提起した。
・会社と元役員は和解交渉では源泉税について想定しておらず、負担について協議をしていなかった。

⇒高裁は、裁判上の和解の中で会社が元役員に源泉税相当額の支払を請求しない旨の合意が成立したとは認められないことから、会社は元役員に対して源泉税相当額の求償をできると判断した。



2.新連結納税制度・グループ調整計算の行方

■フェイズ
・検討段階
・9月中に論点整理が報告されるのでは。

■グループ調整計算
・現行制度:受取配当の益金不算入制度等は連結納税グループで判断
・改正案:各社で判断し、グループ調整計算は行わないのが「原則」、グループ調整計算は「例外」という取扱いにしたい。
・研究開発税制及び外国税額控除が最も影響を受ける見通し。

■改正法公布から適用までの猶予期間
・1~2年の猶予を設ける
・現行で連結納税制度を採用している会社も、この猶予期間で新制度を適用しない、という選択をすることが可能





3.今週の専門用語

■遺留分侵害請求権
 遺言や贈与によって相続人の遺留分が侵害された相続人が、侵害された遺留分を金銭的に取り戻すための請求。
 遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に補修される遺留取得割のこと。一定範囲の相続人には「遺留分」を認め、たとえ遺言などがあっても侵害できない。





4.遺留分侵害額、金銭以外は譲渡所得課税

・遺留分制度の見直しが行われており、遺留分侵害額請求権から生じる権利を金銭債権化。

・遺留分権利者から金銭請求を受けた受遺者は、金銭をすぐに用意できなければ金銭債務の全部又は一部に支払期限の延長を求められるが、それでも金銭で払うことが出来なければ所有資産を遺留分権利者に渡すことになる。
⇒代物弁済となり、受遺者に渡所得課税が課せられる。従来の課税関係と異なるから注意が必要。





5.OEM(製造委託契約)による飲食料品の軽減税率適用の可否

■OEMによる食料品の適用税率
・製造販売 ⇒ 飲食料品の譲渡に該当し、軽減税率
・賃加工   ⇒ 役務の提供に該当し、標準税率

※OEM(original equipment manufactuer)

■基本的な考え方
・完成品の所有権が「製造者」「製造元」のどちらにあるか
「製造者」 ⇒ 軽減税率
「製造元」 ⇒ 標準税率

※製造者=食品製造業者、製造元=食品卸売業者

・食材の調達方法別
①食材を製造者が調達 ⇒ 軽減税率(所有権は製造者)
②製造元から無償支給 ⇒ 標準税率(所有権は製造元)
③製造元から有償支給 ⇒ どちらもあり得る(実務上は「賃加工」として処理することが多い)

・最終的にはOEMの内容により個別判断




6.消費税相談:防音工事を施した住宅の貸付

■概要
・当社は不動産業を営む法人
・賃貸物件の近くに音楽大学があり防音工事を施している
・全体的に通常の賃貸物件とは趣が異なる(床も補強している)
・契約書上、住宅の貸付けとして賃借している

■質問
このような物件を賃貸する場合でも<住宅の貸付け>として非課税処理で問題ないか

■回答
住宅の貸付け(非課税)で問題ない

■解説
住宅とは「人の居住の用に供する家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう」と
されており、構造に関する制限は規定されていない。当該物件は特殊な防音工事が
施されているものの、生活の本拠であり契約において住宅の貸付けと明記されて
いることから<住宅の貸付け>として認められる。



7.所得税:2020年度以後の所得税

■基礎控除
控除額が38万円⇒48万円へ
ただし高所得者については、段階的に控除額が引き下げられる。
合計所得金額が2,400万円以下 ⇒ 48万円
合計所得金額が2,500万円超   ⇒ 0円(基礎控除なし)

■給与所得控除額
・現行:1,000万円超 ⇒220万円(上限)
・改正:  850万円超 ⇒195万円(上限)
850万円以下については段階的に控除額が設定。
⇒改正前より控除額が10万円引き下げ

■給与収入850万円超の人
850万円超の人の負担増をやわらげるため、「所得金額調整控除」が新設される
ただし以下要件に該当する場合のみ適用される。
・特別障害者に該当する人
・年齢23歳未満の扶養親族がいる人
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人
※所得金額調整控除は15万円を限度
※適用者は、年末調整時に「所得金額調整控除申告書」を給与支払者へ提出しなければならない

■給与収入850万円以下の人
実質的には影響なし
⇒基礎控除が10万円増したものの給与所得控除額が10万円減少されたため。





8.アジアの国別ガバナンス達成度ランキング、日本は2016年4位から、2018年7位に下落

・海外投資家から最も上がった声は、
 「もっとも情報が記載された有価証券報告書を総会前に提出してほしい」
 「日本語だけでなく英文でも同時に開示してほしい」
・一方で、欧州では有報のような非財務情報を含むフレームがなく、ある会社はCSRレポート、ある会社は統合レポートなどバラバラであり、全ての企業が一定量の開示をしている日本を評価する声も。




CFOインタビュー ~事業を理解し、数字を語る~ スクウェア・エニックスHD CFO 渡邉一治氏

■社内でのCFOの役割
・管理会計と財務会計を担当領域とする。
 ⇒管理会計は「人を使って人を動かす」イメージ。
  2013年3月期の大きな損失をきっかけに、ビジネス・ディビジョン制(BD制)に移行。
  開発部門を11のBDに分け、各々が開発だけでなく、広告・販売、最終損益まで責任を持つ形式に移行。
  これを社内で共有するようにしたところ、業績はV字回復。

 ⇒財務会計は決算とIRが基本業務。
  BSをシンプルかつ健全な状態に保つことが重要な役割。
  ゲームの収益性は厳しいので、利益が見込めないものはすぐに評価損計上。

■理想とするCFO像
・事業がわかることが大切、かつそれを数字で語れる必要がある。

■業務効率化
・RPAの導入により、手作業を効率化
 ⇒Apple、Google等のプラットフォーマーから売上データを入手し、集計していたが
  集計作業の3,4割の効率化を実現。



10.監理銘柄・整理銘柄

・監理銘柄
上場銘柄が上場廃止基準に該当するおそれがある場合、
その銘柄を一定期間、監理銘柄に指定して売買が行われる。

⇒上場廃止になると、証券取引所での売買が行われなくなるため、
そうなる可能性が高い銘柄を投資家に周知させるのが主な目的

・整理銘柄
上場廃止基準に該当し上場廃止が決定した場合、
整理銘柄として銘柄の売買が行われる。

⇒上場廃止になると流通性が著しく低下するため、投資家に注意を促すために設けられた制度
⇒上場廃止が決まった場合に、直ちに取引停止にすると投資家の売買の機会が著しく狭められてしまうため、
原則として1カ月間整理銘柄に指定された後に上場廃止となる。




11.資産の減損

・減損の兆候検討
日本基準:具体的な数値基準あり(市場価額が簿価から50%程度以上下落等)
IFRS:具体的な数値基準なし

・減損プロセス
日本基準:2段階アプローチ(兆候→認識→測定)
IFRS:1段階アプローチ(兆候→測定)
→IFRSのほうが減損の兆候があれば即減損。日本基準は割引前キャッシュ等と簿価を比較して、減損判定
→IFRSのほうが厳しく、日本基準のほうが緩い(但しIFRSでは減損の戻入れ認められる)

・減損の戻入れ
日本基準:禁止
IFRS:のれんは禁止。その他資産は毎期戻入れの検討が必要
→IFRSは減損測定時の判定が緩いため、戻入が認められている
→日本基準=減損計上の入り口を狭くし、戻入を認めない
→IFRS=減損計上の入り口を広くし、戻入れを認める




12.消費税 軽減税率・経過措置~まとめ~
■消費税率と実施時期
 消費税率 2019年10月1日より8% ⇒ 10%(消費税率7.8%、地方消費税2.2%)
 なお旧税率の8%については、消費税率6.3%→6.24%、地方消費税1.7%→1.76%にそれぞれ変更となる。

■軽減税率が適用されるもの
 酒類・外食を除く飲食料品の譲渡、週2回以上発行される新聞(飲食料品でない生活用品は対象外)

■経過措置
 10月1日以降に資産の譲渡等や役務提供が行われるものについて8%の旧税率が適用される措置
 9月30日までに対価受領や申込みが必要とされるが、下記のものには留意する事。

 3月31日までに契約締結が必要⇒請負工事等、資産の貸付、指定役務の提供、予約販売























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