2019年7月30日火曜日

7/26 勉強会:親子上場の問題点 他

1.固定資産評価の取消訴訟で追加主張は可

■寺院である納税者が所有する建物(鉄骨・鉄筋コンクリート造)の固定資産税評価額が問題となっていた税務訴訟
・東京都は、建物全体を一単位として鉄筋コンクリート造の補正率を適用し、登録価格を6億8,800万円と決定。
・納税者は、鉄骨造である部分には鉄骨造の補正率を適用すべきとし、登録価格は5億8,700万円と主張。
・納税者は一審で敗訴。控訴審の中で納税者は、鉄筋及びコンクリート使用料の誤りを追加主張したうえで、登録価格は5億4,727万円であると主張。
・東京高裁は、控訴審における追加主張は裁決前置の要件を充足せず、不適法であるとして追加主張を却下。

⇒最高裁は、追加主張であっても、審査決定の取消訴訟においてその違法性を基礎づける事由として主張することが許されるべきと判断。
⇒最高裁は、東京高裁判決を棄却したうえで、本件取消訴訟を原審である東京高裁に差し戻した。




2.ヤフーに続く132条の2否認で原告敗訴

■法人税法132条の2
・組織再編成に係る行為計算否認規定

■概要
・会社名や概要は不明
・東京地裁「事業の移転及び継続という実質を備えず」と判断。原告は控訴

■争点
(1) 繰越欠損金の引き継ぎ要件を満たす点
・引継ぎ制限が適用外になるケースでも行為計算否認は適用できるのか
⇒引継ぎ制限「典型的な租税回避行為としてあらかじめ想定されるものを規定しているにすぎない」
⇒形式要件をみたしていても実質的な判断となる

(2) 「法人税の負担を不当に減少させる結果となる」か否か
・スキーム:旧子会社の吸収合併に合わせて新子会社を設立、合併と同日に旧子会社の従業員、棚卸資産、商号、役員等をすべて新子会社に引き継がせている
⇒事業の移転及び継続という実質を備えているとはいえない。ひどく不自然なスキーム
⇒繰越欠損金の引継ぎによる税負担の減少以外の合理的な目的があるとは認めがたい




3.働き方改革に資する設備も中小企業経営強化税制の対象

中小企業経営強化税制の適用要件である一定の金額要件及び販売時期要件を満たしていることを前提として、働き方改革で資する減価償却資産を対象とする。
⇒即時償却又は税額控除が認められる

■働き方改革の推進に資する減価償却資産の例
・建物附属設備
⇒生産等活動の用に直接供される工場、店舗、作業場等の中に設置させる施設(食堂、休憩室、更衣室、ロッカールーム、シャワールーム、仮眠室、トイレ等)に係る建物附属設備(電気設備、給排水設備、冷暖房設備、可動式間仕切り等)

・器具及び備品
⇒工場、店舗、作業場等で行う生産等活動のために取得されるもので、その生産等活動の用に直接供される器具備品(テレワーク用電子計算機等)、ソフトウェア(テレビ会議システム、勤怠管理システム等)



4.審判所が土地の取得費で市街地価格指数を認めず

■事例
相続により取得して土地を譲渡したことによる譲渡所得金額の計算上控除する取得費について、概算取得費か市街地価格指数等により算出した価額によるべきか争われた裁決。
⇒国税不服審判所は市街地価格指数は認められず、概算取得費とするのが相当であると判断した。

■判断内容
・措置法には土地取得費は、土地の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額(概算取得費)とする旨の規定があり、概算取得費<実額取得費の場合かつ実額取得費が証明できると時は実額取得費とする旨が規定されている。
⇒市街地価格指数もみとめられるのではないか。
⇒しかし、請求人は売買契約書等が見つからず、実額取得費を直接証明できるものを提出しなかった。過去に農地→宅地に利用形態の変化があったため、合理的に認められないとの判断となった。




5.剰余金配当の課税関係で東京高裁が注目判決

■概要
資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とした配当をしたA社に対して、
課税当局は、その配当全額が資本と利益が混合したものとし、
全体を資本の払戻しとして課税。

■結論
東京高裁が以下の判決
資本剰余金を原資とする配当⇒資本の払戻し
利益剰余金を原資とする配当⇒剰余金の配当となり益金不算入の対象となる



6.裁決例:同族会社の行為計算の否認

■概要
A社グループ(日本を含むグローバル企業)に属するX社は
海外グループ法人B社から866億円の借り入れを行い、これにかかる
支払利息を損金算入した。
これについて税務当局は<同族会社の行為計算の否認>が適用できる
事項に該当するとして否認・更正処分を行った。

■争点
<同族会社の行為計算の否認>規定は「これを容認した場合には
法人税の負担を不当に減少させる結果となる」ような不自然・不合理な
行為=経済的合理性を欠く行為を否認するものである。
今回はX社の行為が「経済的合理性を欠いているか否か」が争われた。

■借入の理由
・多額の負債を抱えるB社の財政を健全化したい
・国内企業再編のためX社に資金を集中させる必要がある
・ユーロ・円通貨スワップ取引を終了させ手数料負担を減らしたい
・米国税制との関連で資本関係を整理する必要がある、など

■東京地裁判決
・一連の取引に「経済的合理性がない」とまでは言えないため<同族会社の行為計算の否認>
規定の適用はできないとして国の主張を退けた。

■補足
東京地裁は、「同族会社がその特性を活かした経済活動を行うことはごく自然な事柄である」とし
同族会社でなければなし得ないような行為・計算があったとしても直ちに税負担の公平が害される
ものではない、とした。
⇒納税者にとって非常に有利な判断で、本件が確定した場合には<同族会社の行為計算の否認>規定は
事実上適用の余地がなくなる。





7.消費税:10/1の0時以後も売上管理等により旧税率適用も

10/1以後の取引は新税率10%が適用されるが、
深夜営業を行っている飲食店等を考慮し、一部例外を認めている。

■原則
10/1の0時以後に行う譲渡(販売)や仕入(支払)は、
軽減税率対象資産を除き10%が適用される
⇒0時を過ぎての会計やタクシーの支払い、電車賃等

■例外
飲食店などで、自社の継続的に行う売上管理等(ルール)を踏襲している場合、旧税率を適用しても問題なし
⇒朝5時の閉店までは前日の営業日の売上としているお店など
ただし従前より継続適用している場合に限られる。




8.三菱ケミカルHD、監査法人から「KAMに相当する事項」を受領。

・連結子会社のM&Aに伴う無形資産およびのれんの計上について、その測定が複雑かつ「経営者の判断を伴う」ものであることから、監査法人が「監査上の主要な検討事項」に相当するものと判断。
・実施した監査手続について記載した。
 ⇒ 契約書閲覧、経営者との議論、取締役会報告資料の閲覧
 ⇒ 経営者が利用した外部の評価専門家への質問
 ⇒ ネットワークファームの評価専門家による検証
 ⇒ 売上収益予測の分析(過去実績及び類似企業との比較)





収益認識基準早期適用会社の開示

・収益認識基準の早期適用は28社
⇒IFRS16社、米国基準2社、日本基準10社
⇒日本基準の会社の売上高の影響は、増加:4社、減少3社、軽微2社、遡及修正1社

・開示書類で「会計方針の注記」で具体的な影響の記載がある。
例①)オープンハウス
 →不動産仲介手数料を「契約成立時点」から「物件引渡時点」へ
例②)日本オラクル
 →ライセンス販売を「契約に定める許諾期間に渡って認識」から「顧客に供された時点で認識」へ

・適用初年度の経過措置
 ①原則
 →会計方針の変更として取り扱い、過去の期間にすべて遡及適用する。
 ②容認
 →遡及適用した場合の累積的影響額を、期首の利益剰余金に加減し、期首から新たな会計方針を適用。




10.取得となる会社分割

・分離元企業は「投資の清算」or「投資の継続」によって会計処理が異なる
⇒「投資の清算」=移転損益認識
⇒「投資の継続」=移転損益認識しない
・分離先企業=パーチェス法を適用、税効果を認識
・分離元企業の税効果会計=「投資の清算」or「投資の継続」、税務上「適格」or「非適格」によって会計処理が異なる


11.収益基準下での工事契約について~工事完成基準・原価回収基準~

■収益基準公表による影響
・旧工事基準が廃止(収益基準に、「工事完成基準」「工事進行基準」という用語は無い)
・旧:成果の確実性が見込まれるか⇒新:履行義務の充足が一定期間において見込まれるか

■適用する基準の決定フロー
①工事契約が一定期間に渡り充足される履行義務に該当するか(NOなら工事完成基準)
②履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もれるか(NOなら原価回収基準)
③①②ともにYESなら工事進行基準
※履行義務の充足=支配の獲得
※進捗度の見積もり方法
・アウトプット法:生産単位数といった達成成果を指標
・インプット法:コストや労働時間といった投入量を指標
⇒理論的にあるべきはアウトプット法
⇒計測が難しいので、実務上はインプット法(原価比例法等)が主

■工事完成基準
・5要件に照らして収益の認識時期を判断
(1)対価を収受する権利を有する
(2)法的所有権を有する
(3)物理的占有がある
(4)所有に伴う重大なリスクの引き受けと経済価値の享受がある
(5)検収が終了している
・不動産⇒顧客から代金の回収と鍵を渡した時点で全て充足
・受注製作ソフト⇒契約内容や検収書の受領が重要(無形かつ登記制度がなく(2)(3)が△)

■原価回収基準
・原価と同一の金額を収益計上する方法
・損益は0だが、履行義務の充足の進捗という事実を反映する
・いまだ契約に至っていないが、発生費用は実費でも回収できると考えられるケース
⇒緊急時・災害時の工事といった特殊なケースが該当




12.最近ありがちな連結納税の実務上の留意点

■連結子法人の範囲
株式会社以外の会社が設立された場合の連結法人の範囲
・合名会社、合資会社、合同会社は、普通法人のため、連結子法人の対象となる。
・一般社団法人は、連結子法人に該当しない。

■自己創設営業権
平成29年度税制改正によって、現金買収でも特定連結子法人に該当するケースが生じ、時価評価の対象資産からは、自己創設営業権が除外されている。


13.中小企業の消費税の軽減税率の特例

1.売上税額の計算の特例

(1)「小売等軽減仕入割合」の特例
■対象企業
① 軽減税率対象品目を取り扱う卸売業・小売業(他社から購入した商品を加工せずに販売する企業)
② 特例摘要期間中に簡易課税制度の特例を受けない企業
③ 課税仕入(税込)に対して、税率ごとに区分経理ができる企業
■内容
課税売上(税込)に対して、小売等軽減仕入割合(課税仕入に占める軽減税率対象分の課税仕入の割合)をかけた額を軽減対象品目の課税売上(税込)とみなして、売上税額を計算できる。

(2)「軽減売上割合」の特例
■対象企業
(1)以外の軽減税率対象品目を取り扱う企業(業種を問わない)
■内容
課税売上(税込)に、軽減税率割合(通常の10営業日分の課税売上に占める軽減税率対象分の課税売上の割合)をかけた額を軽減税率対象品目の課税売上(税込)とみなして、売上税額を計算できる。

(3)上記(1)、(2)の割合計算が難しい場合の特例
■対象企業
適用対象期間中の課税売上(税込)のうち、軽減税率対象分の課税売上が概ね50%以上の企業
■内容
A、Bの割合の計算がいずれも難しい場合、これらの割合を50%として計算できる。

2.仕入税額の計算の特例

(1)「小売等軽減売上割合」の特例
■対象企業
① 軽減税率対象品目を取り扱う卸売業・小売業
② 特例摘要期間中に簡易課税制度の特例を受けない企業
③ 課税売上(税込)に対して、税率ごとに区分経理ができる企業
■内容
課税仕入(税込)に、小売等軽減売上割合(課税売上に占める軽減税率対象分の課税売上の割合)を乗じた金額を軽減対象品目の課税仕入(税込)として、仕入税額を計算できる。

(2)「簡易課税制度」の届出の特例
■対象企業
軽減税率対象品目の扱いがある(1)以外の中小企業
「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出すれば、届出を行った課税期間から簡易課税制度を適用することができる(適用期間は2019年10月1日~2020年9月30日まで)。

■適用期限
売上税額計算の特例は、2019年10月1日から4年間
仕入税額計算の特例は、2019年10月1日から1年間の日の属する課税期間の末日まで




14.親子上場の問題点

・親子上場は欧米でほとんどみられない日本独特の資本政策
・親子上場の問題点は大きく3つ
・問題が顕在化した直近事例はヤフー(親)とアスクル(子)
1.親会社が自らの利益を優先して子会社の一般株主の利益を損なうリスク
親会社は子会社上場後も資本や人事を通じて子会社の経営に影響力を残す。
子会社の株主は不合理だと思う資本政策に対しても抵抗しにくい。

2.資金の二重取り
親会社は子会社も含めた企業価値を裏づけに上場時に市場から資金を集め、さらに子会社上場で再び資金を得るため。
東京証券取引所は新規上場ガイドブックで、「(親子上場は)新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えられ、上場審査では慎重に対応する」と説明している。

3.子会社の稼いだ利益の一部が少数株主持分利益として外部に流出する。
イオンでは連結純利益が子会社のイオンモールを下回る。



15.借入コスト

・借入コストの取り扱い
借入コスト=資金の借入に関連して発生する利息およびその他のコスト
→借入金のアレンジメントフィー等も対象に含まれる。
適格資産の取得、建設に直接起因する借入コストは取得原価を構成し、それ以外は発生時に費用処理。

・適格資産
使用または販売可能になるまでに、相当の期間を要する資産
→製造工場、投資不動産等が該当
→短期期間に大量生産する棚卸資産は対象外

・日本基準との違い
日本基準では一定の要件を満たした場合、借入コストの資産計上は認められている(容認規程)が、
IFRSの場合、該当時は資産計上がマストとなる

・中止時の取り扱い
工場建設中に、建設中止期間が生じた場合、当該期間に対応する借入コストは資産計上しない



16.軽減税率制度における中小事業者の特例

■概要
軽減制度が実施される平成31年10月1日から一定期間、売上又は仕入を軽減税率と標準税率とに区分することが困難な中小事業者に対して、売上税額又は仕入税額の計算の特例が設けられている。

※中小事業者:基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者
※困難な事情:税率ごとの管理を行えなかった場合等をいい、困難の程度は問われない

■売上税額の計算の特例のポイント
・平成31年10月1日から平成35年9月30日までの期間が対象
・売上の一定割合を軽減税率の対象売上げとして売上税額を計算することができる

※一定割合
①小売等軽減仕入割合:卸売業・小売業の仕入高のうち、軽減税率の対象となる仕入高の占める割合
②軽減売上割合:通常の連続する10営業日の軽減税率対象品目の売上割合 
③50/100

■仕入税額の計算の特例のポイント
・平成31年10月1日から平成32年9月30日を含む課税期間の末日までの期間が対象
・仕入の一定割合を軽減税率の対象仕入れとして仕入税額を計算することができる
・簡易課税制度の届出の特例を適用することができる

※一定割合
①小売等軽減売上割合:卸売業・小売業の売上高のうち、軽減税率の対象となる売上高の占める割合
②軽減売上割合:通常の連続する10営業日の軽減税率対象品目の売上割合 
③50/100

※一定割合にて計算しない場合、簡易課税制度の届出の特例が適用可能














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