2019年7月23日火曜日

7/5 勉強会:消費税 事用と併用の高額特定資産 他

1.詳細・デジタル課税の作業計画

■デジタル課税
・物理的な拠点ではなく、企業の国ごとの売り上げや利用者の数などに応じて税収を各国に配分する方法。
・税金がほとんどかからないタックスヘイヴンの国に拠点だけを置いて、課税逃れをすることも防ぎたい。

■デジタル課税の作業計画
・OECDはデジタル課税の作業計画(デジタル課税に関する包摂的枠組の作業計画)を公表した。
 解決策の大枠について2020年末までに最終報告書を取りまとめる予定。
・関係各国はデジタル課税ルールの国際合意を急いでおり、日本においても近い将来の国内法制化は避けられない。
・令和2年度税制改正でデジタル課税の国内法制化が行われる可能性は低い。



2.土地の相続税時価で鑑定評価額を認めず

■納税者敗訴
・「評価通達の定める評価方法によるべきではない特別の事情」
=不動産鑑定士による鑑定評価額<評価通達に基づく評価額という事象のみでは×

■背景/納税者の主張⇒鑑定評価を採用すべき
・路線価の評価時点(1/1):相続開始日とタイムラグが発生する
・地価の変動の激しい地区にある土地の評価では路線価方式は合理的でない
・鑑定評価額をとったら路線価方式による評価額よりも約46%低い価額だった

■背景/東京地裁判断⇒棄却
・路線価:1年間の時価変動に対応するなど評価上の安全性を考慮して公示価格の80%程度の水準を目途としている
⇒地価が1年間で20%超下落するようなことがない限り地価変動を理由に時価を超えることはない
・1/1から相続開始日までに20%超の時価変動があったとはうかがわれない。





3.審査請求の件数が6年ぶりに3千件超

平成30年度の再調査の請求・審査請求・訴訟の概要
■審査請求
・件数:3,104件(前年度2,953件) 5.1%増加
申告所得税等及び法人税等の税目並びに徴収関係に係る件数が増加。
・処理件数:2,923件(前年度2,475件) 18.1%増加
・納税者の主張受け入れ件数:216件⇒一部容認139件、全部容認77件(7.4%)

■直接審査請
件数:1,958件(前年度2,020件)

■再調査の請求
・件数:2,043件(前年度1,814件)
所得税と源泉所得税等において大型の事案があった
直接審査請求よりも再調査の再調査の請求を選択する人が多かった。
・処理件数:2,150件(前年度1,726件)⇒一部容認237件、全部容認27件

■訴訟
・件数:181件(前年度対比▲9.0%)⇒うち新規件数:111件(前年度108件)
国が敗訴した件数:所得税5件、法人税1件⇒一部敗訴3件、全部敗訴3件





4.今週の専門用語

■公示価格
国土交通省により3月下旬に公示される毎年1月1日時点での標準地の時価である。
⇒一般の土地取引の指標となる。標準地につき2人以上の不動産鑑定士が鑑定を行い、国交省の土地鑑定委員会が最終的な価格を決定する。

■譲渡制限付株式
・一定期間の譲渡制限がある株式
・法人に無償取得事由として業績条件等が達成されないことが定められている株式

特定譲渡制限付株式
・役務提供の対価として役員に対する債権の給付と引き換えに交付される株式
・役務提供を受ける法人又は関係法人の株式
⇒事前確定届出給与の要件に該当する場合、原則損金算入できる。



5.ムゲンの裁判が結審、10月11日にも判決

・マンション販売事業者の仕入税額控除問題で、ムゲンエステート社の裁判が6月25日に結審、10月11日にも判決言い渡しの見込み

・裁判長はムゲンが求める文書提出命令申立を却下、ムゲンの主張への国側の反論は「必要なし」との心証を示すなどムゲンには厳しい展開

・一方、エー・ディー・ワークス社の裁判は継続、ムゲン判決が与える影響に注目




6.一定の譲渡制限付株式、有価証券届出書の提出が不要に

■概要
譲渡制限付株式を交付する企業が増加していることを踏まえ、
一定の条件をクリアすることで、譲渡制限付株式の募集又は売り出しについて、
有価証券届出書の提出を不要として、臨時報告書の提出事由とするもの。

■一定の条件とは
①株式の交付対象は役員等に限られていること
②譲渡制限期間が設けられていること(期間は事業年度経過後3か月超である必要あり)




7.裁決例 「居住者」に該当するかどうか

■概要
・個人Aは海外法人の代表も務めており、年間の大半を海外で過ごしていた
・そのため、所得税の申告上「非居住者」として確定申告をしていた
・これに対し国は「居住者」にあたるとして無申告加算税を課した
・個人Aはこれを不服して争った

■認定事実
・日本とシンガポール(+その他の国)の滞在日数に大差はない
・海外法人の代表であり現地に赴いて自ら行わないといけない業務が多い
・妻子は国内に在住であるが教育上の配慮によるものと言える
・シンガポールに預貯金1,700万円があり当面の生活に十分な資産を有している
・住民登録は国内であるが、転出の届出をしない例も多い

■東京地裁
これらを総合判断した結果、生活の本拠が国内にあるとは言えないため個人Aは
居住者に該当しない(非居住者)
⇒国はこれを不服として東京高裁に上告中

■その他
従来、日本とアメリカなど2か国滞在を前提とした判例はあるが、今回のように
複数国滞在を対象とした判例は初であるため、今後の高裁判断が注目される





8.消費税:家事用と併用の高額特定資産

■高額特定資産とは
棚卸資産又は調整対象固定資産で、
一つの取引の課税仕入れに係る支払対価の額が税抜1,000万円以上の資産

■高額特定資産に関する論点
高額特定資産を購入した年の翌年から2年間は、免税事業者や簡易課税を受けることができない
⇒強制的に「原則課税」が適用される

■家事用と併用している高額特定資産はどうか
課税仕入れに係る支払対価の額とは、「事業用」部分の支払額で判定をする。
(例)
・1,500万円(税抜)の高額特定資産を取得
・事業用と家事用の割合は50%ずつ
事業用750万円≦1,500万円 ∴高額特定資産に該当しない

※なお調整対象固定資産の判定も事業用・家事用の割合によって判断すること





株式報酬の会計処理

・株式報酬の導入企業が1,500社を突破。上場企業の42%を占める見通しに。
・主流は譲渡制限付株式による報酬。
・報酬債権の現物出資によって譲渡制限付株式を交付した場合、将来の勤務に係る報酬として、前払費用を計上すると共に、資本金及び資本準備金として総額計上する。
・通常、労務出資は認められない(会社法199条1項3号)。
・役員へのインセンティブを付与する株式報酬の意義を踏まえ、法制審議会総会で、上記を認める旨が公表された。




10.開示すべき重要な不備 2018/4期~2019/2期に19社

・19社の市場ごとの内訳
⇒東証一部:5社、東証2部:3社、JASDAQ:7社、マザーズ:4社

・内容の内訳
①会計処理の誤り等:9件、
例)繰延税金資産の計上誤り(アエリア)、開発に係るライセンス費用の期間帰属の誤り(そーせいグループ)

②不適切な会計処理等:5件、
例)営業担当者による原価の付替(ホシザキ)

③人材不足:4件など。
例)管理部員の退職等(新都ホールディングス)

その他、前年度に「開示すべき重要な不備」があったが、今年度も改善できていなかった会社が3社
⇒東京衝機、くろがね工作所、小僧寿し



11.ライセンスの供与の会計処理 第1章

※2021年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用予定
■ライセンスの供与の適用対象
・ライセンスの供与とは?
⇒自己の有する権利の使用を他者に許可すること(所有権は移転しない)
・特徴は?
⇒(1)権利に関する支配あるいは占有が移転しない
⇒(2)契約内容が取引により多種多様であり複雑性が高い(詳細を定めた契約書がないと実態の把握は困難)
・多種多様の例
⇒許可の対象地域、利用期間、定額or従量制
・会計基準は?
⇒供与側(ライセンシー)の処理を定めている
・適用対象となる取引は?
⇒法的な保護を受ける知的財産の供与
 例:PCのOS、生産技術やノウハウの提供、動画の閲覧許可、音楽のカラオケでの利用、店舗運営ノウハウの提供、薬品の製法の提供、キャラクター利用の商品製造販売許可



12.取引価格の算定と配分におけるポイント
■取引価格の算定
契約価格を基礎とし、変動対価に注意して取引価格を算出する。
※変動対価は期待値または最頻値のいずれかで見積もる
※売上・使用量に基づくロイヤリティがある場合、顧客に売上又は使用が発生するまで、算定を留保

■取引価格の配分
履行義務の基礎となる財サービスの独立販売価格の比率に基づき配分
※変動対価が特定の履行義務に個別に関連する場合は、当該履行義務にだけ配分

※独立販売価格は、契約価格や取引価格とは限らず、見積もる場合、その方法は限定されない



13.仮想通貨に関する2019年度法人税法改正

■仮想通貨に関する2019年度法人税法改正の概要
 以下の項目について、取扱いが明確化された。
・期末評価
・譲渡損益の認識のタイミング
・譲渡原価の算出方法(譲渡原価の算出方法の選定・変更・評定評価方法を含む)
・信用取引における未決済の仮想通貨のみなし決済

■法人が事業年度末に有する仮想通貨時価の評価
 本改正で短期売買商品等と定義され、従来の短期売買商品とほぼ同様の取り扱いとなり、
活発な市場が存在するか否かによって、評価額の算出方法が異なることが規定された。

(1)活発な市場が存在する仮想通貨の時価評価額
・下記要件の全てに該当する仮想通貨は、時価法により評価(強制されている点に注意)。
 ①継続的に売買価格等の公表がされ、かつ、その公表される売買価格等がその仮想通貨の売買価格等又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること
 ②継続的に売買価格等の公表がされるために、十分な数量及び頻度で取引が行われていること
 ③次の要件のいずれかに該当すること
  ・売買価格等の公表がその内国法人以外の者によりされていること
  ・②の取引が主としてその内国法人により自己の計算において行われた取引でないこと

(2)活発な市場が存在しない場合
・原価法により評価した金額とし、評価損益はその事業年度の益金の額又は損金の額に算入しない。
⇒評価額は、移動平均法又は総平均法により算定した取得単価に期末に保有する数量を乗じた金額となる。

(3)評価損益
その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。

(4)譲渡損益の認識時点
一定の場合を除き、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。

(5)一単位あたりの帳簿価額の算出方法
・移動平均法又は総平均法により算出
・法定算出方法は、移動平均法
⇒簡便的な総平均法を適用したい場合は、その仮想通貨を取得した事業年度に係る確定申告書の提出期限までに届出が必要な点に注意

(6)未決済の仮想通貨信用取引の処理
 期末に決済されていないものがある場合、事業年度末に決済したものとみなし、みなし決済損益額を計上し、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。

(7)棚卸資産からの除外
仮想通貨について、棚卸資産の範囲から除外されることが明確化された。

■適用開始時期、経過措置
・2019年4月1日以後に終了する事業年度から適用開始
・2019年4月1日前に開始し、同日以後に終了する事業年度については、会計上、仮想通貨について時価評価が行われていない場合には、改正後の期末評価を行わないことができる経過措置が設けられている。






14.関西のIPO件数

・2019年の関西企業のIPO件数は10社程度の見通し(前年並み)
・既に小売店や飲食店向けにレジアプリを手掛けるスマレジなど4社(プロ向け市場のTOKYO PRO Marketを含む)が上場
・リーマン・ショック前後に急減した関西企業のIPOは、18年に10社と07年以来11年ぶりの2ケタを回復
・今後のIPO予備軍としての有望銘柄はヘルスケア関連
・その一社が大阪大学発のバイオベンチャー、ステムリム(大阪府茨木市)。
・関西の証券会社のIPO担当者によると、アベノミクスでの市場環境の回復を背景に今年から来年にかけて関西の新規上場は多くなるとのこと






15.日本基準とIFRSの相違点

■棚卸資産
・仕入割引
日本基準:営業外収益で処理
IFRS:原価のマイナス
→日本基準では仕入割引は支払期間を短縮したことによる利息部分のマイナスと捉えて営業外収益で処理。IFRSは購入対価のマイナスと捉える

・評価方法
日本基準:個別法、先入先出法、平均原価法、売価還元法、例外として最終仕入原価法
IFRS:個別法、先入先出法、加重平均法
→日本基準は税務基準で認められている最終仕入原価法がIFRSでは認められない点、留意が必要。小売店、飲食店への影響が大きいと想定される
→売価還元法は原価と近似する場合のみ簡便法として認められる。

・評価減
日本基準:評価減は洗替法または切放法の選択適用。臨時事象による場合は、洗替法でも戻入不可
IFRS:評価減の状況が存在しない場合や正味実現可能価額が明確に増加した場合は評価減の戻入れを行う
→IFRSは正味実現可能価額が回復した場合は、評価減の戻入れが可能

16.IFRSと日本基準の重要な相違点-開示

■財務諸表の種類
・日本基準
連結貸借対照表
連結損益及び包括利益計算書または連結損益計算書と連結包括利益計算を別個に作成
連結株主資本等変動計算書
連結キャッシュフロー計算書
連結附属明細表

・IFRS
財政状態計算書
純損益及びその他の包括利益計算書または純損益計算書と包括利益計算書を別個に作成
持分変動計算書
キャッシュフロー計算書
会計方針および注記
→日本基準とIFRSでも求められる財務諸表に大きな差はない。

■特別(異常)損益の表示
・日本基準
内容を示すもの名称を付して表示可能
・IFRS
特別(異常)項目として開示できない
→IFRSでは段階損益の概念がなく、経常損益の区分がない
→日本基準では特別損益として処理していたものが営業損益に反映される

■その他包括利益項目のリサイクリング(組替調整)の有無
・日本基準
すべて組替調整対象(その他有価証券評価差額金等)
・IFRS
一部組替調整が行われないその他の包括利益項目がある
→固定資産の再評価モデルに係る再評価剰余金(イメージとしては土地再評価差額)は対象外
→リサイクリングとはその他包括利益として認識したものを改めて損益計算書をとおして純資産に認識すること





16.消費税 経過措置~その2~
■指定日(H25年10.1~H31年4.1)を考慮する経過措置
・指定日までに契約が必要なもの
 ①請負工事 ⇒ 指定日前までに契約を行う事で、完成し譲渡が行われるのが10.1以後でも8%
 ②資産の貸付 ⇒ 指定日前までに契約、貸付が9.30までに行われ増税後も引続き行われる貸付は8%
 ③予約販売 ⇒ 指定日前までに契約(定期継続供給契約)を行い、9.30まで料金の受領が終わり、その定期継続供給が10.1以降であっても8%が適用
 ④冠婚葬祭の互助会費(※) ⇒ 指定日前に契約を行う事で役務提供が10.1以後でも8%

 ※指定役務の提供:役務の提供時期を予め定めることができないもの+代金の一部または全部が分割にて支払われる契約。



















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿